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2021.03.07
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カテゴリ: 心暖物語
​​​根っから明るいキャラっていると思う。
憎めない、愛されキャラだ。
​ ビールのCM ​には良い。
思わずムフッっとしてしまう。


居酒屋で店員がお皿を割ったりなど粗相をすると、
「お騒がせしました」
と、妙なリズムを付けて合掌する店がある。
声の大きさに、お騒がせの2乗だ。

​居酒屋だからまだ許せるが、静かに酒を飲みたいバーでやられると……。

**根っから明るいキャラ**

「ガチャーン」
カウンターの中から、ガラスの割れる甲高い音が響いた。
ピクンと心臓が飛び上がったのは私だけだろうか。
手に持っていたジョニ黒のグラスから至福の液体が溢れ出てしまった。

ジョニ黒に申し訳なく、手に着いた液体を舐めようか迷ったが、
自制心が働き、おしぼりでふき取ることにした。
悩ましい私の姿を見て、バーテンダーが謝ってくれている。
しかし、音を出した主は別にいる。

「お騒がせしました~あ♪」
カンターの中から若い女の声が聞こえる。
身を屈めてガラスの処理をしているようだ。
その音がまた大きい。

「ガチャ、ゴチャ、ベキ、バキ」
ガラスを集めて、わざわざ踏みつぶしているのだろうか。
「前に居酒屋でバイトしていたそうなんですが、
 うちに入って、まだ1週間なんですよ」

バーテンダーが女に代わって言い訳をした。
渋谷に気の利いたスナックを見つけ、ここしばらく通っている。
静かで、落ち着いた内装と照明。価格もリーゾナブル。
酒を嘗めるにはグッドである。

女を見かけたのは今日が初めてでだった。
「幸子といいます。『さっちゃんはね ~♪ 』の歌の幸子です」
カウンター内からひょっこり顔をあげた女は、
満面笑みをたたえている。

人から好かれる顔である。
粗相をしたことを恐縮していない。
根が明るいのだろう。
それが救いだ。

「ああ、よろしく」
私は軽くあいさつをし、手元の酒を嘗めた。
幸子はつまみを作り、それをテーブルに運ぶのが仕事だ。
このスナックはそんなに広くはない。

テーブルも小さく、テーブルとテーブルの間も狭い。
その間を歩くとすると、よほど注意が必要である。
「お待ちどうさまでした」
幸子の声が後ろのテーブルでした。

つまみを運んでいったのだろう。
「ゴツン、ガツン」
幸子 がテーブルの間を通る音である。
幸子の足やお尻が、椅子やテーブルに賑やかな音を奏でさせる。

「キャッ、セーフ」
今度はカンター内で黄色の声が飛んだ。
思わず顔を上げ見ると、
幸子はシャボンのついた手で皿を持ち上げていた。

鰻でもつかんでいるかのように、
手からすべり落ちる皿をキャッチしたのだろう。
バーテンダーがそれを横目でみて、ため息をついていた。
「やれやれ、最近の……」 と言ったところだろう。

私はバーテンダーの顔を肴にまたペロリ。
2杯目のジョニ黒を飲んでいる。
人の困った顔を肴に飲む酒も
なかなか旨いものである。

幸子がまた、ナッツを載せた皿を運んでいく。
なんだか楽しみになってきた。
後ろを振り返る必要はない。
「ゴツン、ガツン、ギギー、カチャン、ドタン、キャ」

彼女は期待を裏切らない。
根っから明るいキャラだ。
音のレパートリーも増えてきた。
静寂を破るキングコングのお通りだ。

「お騒がせしました~♪」、「 ほんと、お騒がせだよ」



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最終更新日  2021.03.07 11:49:09
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