ほんとの日々

ほんとの日々

2006年11月02日
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カテゴリ: 朗読




「薤露行」 より 「鏡」


シャロットの地に一人の女が住んでいる。

彼女はただ一人「高き台(うてな)」の中に閉じこもって暮らしている。

彼女は、決してこの塔から外に出ず、決してじかに外の世界を見ることもない。

彼女が外の世界を見るのは、彼女の部屋にかけられた鏡を通してだけである。

シャロットの女は幾年月の久しき間その鏡を朝夕ながめては暮らしている。

彼女が外の世界を見るのは、この鏡に映った影からのみである。


時にはむらむらと起こる

窓際に駆けよりて思うさま鏡の外なる世を見んと思い立つ事もある



しかし


シャロットの女の窓より眼を放つときはシャロットの女に呪いのかかる時である


外を見れば彼女に「末期」が訪れるのだ。




シャロットの女は鏡の傍らに座って、夜ごと日ごとにはたを織っている。


彼女の投げる梭(ひ)の音は、

静かなるシャロットの地に「あの世の音」のように洩れ聞こえてくる。



永遠に続くかと思われる彼女のこの生活は、突如として破られる。

トーナメントに行く途中の騎士ランスロットがこの地に現れたのだ。


騎士の目とシャロットの女の目が鏡の中で出会う。


一瞬で心を奪われた彼女は自分に末期が訪れるのを知りながら

禁じられている行為を犯してしまう。


この時シャロットの女は「サー・ランスロット」と叫んで、

忽ち窓の傍に駆け寄って蒼き顔を半ば世の中に突き出す



しかし、ランスロットはシャロットの女の存在など知る由もない。



男と馬とは、高き台の下を、遠きに去る地震の如くに駆け抜ける



ぴちりと音がして晧晧たる鏡は忽ち真二つに割れた。







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最終更新日  2006年11月02日 23時17分50秒
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