昭和四十八年に、明治から昭和初期までの児童文学復刻版ができたとき、
まっ先に購入した。小川未明、宮沢賢治、野口雨情等児童文学者そして芥川
龍之介、武者小路実篤その他著名な作家の三十五人の児童文学書。そのカバー
が変色しているのに気付いた。
小さいものは手のひらサイズから、A3サイズほどの大きなものまで、本
の大きさは一冊として同じものがない。すべて初版本通りだ。本棚にどのよ
うに並べてもバラバラで見栄えがしない。
『猿飛佐助』に至っては、小さい本で小さい字、しかも漢字に全部ルビがふ
く、紙面に空きがない。行替
えも一字下げもない。一面びっしり文字で埋まって
いる。そして句点がないときている。それでも文字が大きく見える、偽物の
ハズキルーペをつけて読んだ。読みづらく苦労したが実に面白かった。
これらの児童文学書のうち、四十数年たった今までに半分も読んでいな
い。
Å3版大の芥川龍之介の『三つの寶』などは亡くなる三年も前から企画
し、没後
に発刊された画家の絵入りの贅沢なものだ。今頃気づくなんて、な
んともったいない
ことしたものだ。
この本の序に変えてと題し佐藤春夫が亡き芥川にあてて書いている手紙文
に胸を打たれた。
君はこの書物が出来上がるのを楽しみにしていたと言うではないか、何故この
本のできるのを待っていなかったのだ。
君自身のペンで序文を書かなかったのだ・・・・
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