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社会保障と税の一体改革法案とは言うものの、社会保障改革の大半を先送りないし骨抜きにした、実質的な「消費税率引き上げ法案」の採決が迫ってきた。
ここまでの流れは、全く予想通りであり、政局勘の悪い谷垣自民党総裁は解散を賛成の条件としてゴリ押しせずに、いかにも彼らしく、勝負所を逃した。また、「小沢一郎氏を中心とする」と報じられることの多い与党内の消費税率引き上げ反対派も、反対の声を有効に発することができない中で「予定通りに」負けようとしているように見える。
加えて、社会保障に多少はこだわりがあったはずの民主党内の中間派も、年金の検討プロセスが今後にあることで、最低限顔が立ったと考えることにしたものか、反対には回らないで賛成するようだ。
この間、官僚たちは立場の強い自民党に働きかけて、景気配慮条項の緩和や、歳入庁設立の大幅先送りなど、自分たちに不都合に作用しかねない内容を法案から取り除くように振り付ける、きめの細かさを見せた。
現行の年金制度を維持してどう運営できるつもりなのか、欧州問題の解決が見えない中で不況下の増税でも強行する仕組みがいいと思っているのか、年金保険料の徴収などにある非効率を温存することが嬉しいのか、何が楽しいのかサッパリわからないが、民主党の案を後退させることに力を入れる形で、いままで自民党は官僚集団の利益のためにいいように利用されていた。それでは民主党の政治のこれからはどうすれば展望が見えるかと云えば官僚集団を使い倒すことだろう。
「党議拘束」はビジネスで云えば会社の「就業規則」の違反で解雇もあるのだから、政治の上で、今後の焦点は、「造反議員」が何人出て、これがどう「処分」されるかということになりそうだ。51名以上でると過半数で影響するが、選挙に不利な離党は求心力や期待感の薄れたいままでとは違う妻に三行半を突き付けられた小沢氏に何人ついて行くのか不透明である。
法案の通過、すなわち政策があらかた決まったところで、「政権の求心力」だの「造反議員の扱い」だのをことさら大問題であるかのように報じるのはいかがなものかとも思うが、「誰と、誰がくっついた」「誰は、誰に反発している」「誰々が(蔭で)どう言った」といった芸能ニュースと変わらない内容の記事が、政治報道とされる我が国のジャーナリズムの関心に、少々付き合ってみよう。
会社で言えば就業規則違反であり、党議拘束違反はどのように国民には見えるのか?驚くべき全国紙の「賛成キャンペーン」
かつては「小沢一郎氏に近いとされる」という枕詞がついた輿石東幹事長は、今や執行部内の一組織人となったのか、社会保障と税の一体改革法案に関する国会採決には党議拘束が「当然かかる」と述べている。
一方、小沢一郎氏は、「(消費税率引き上げに)今は賛成できない」「賛成できないとは、反対ということだ」と述べているので、反対票を投じるのだろう。後の処分を恐がって、欠席に留めるというのでは顔が立つまい。それに、そもそも有権者の代表として臨んでいるはずの国会議員が、重要法案の採決に「欠席」するというのでは、職場放棄だ。
6月19日(火)の『読売新聞』は、「小沢グループ造反50人規模」と朝刊の一面トップで衆院採決について予想している。
それにしても、大手全国紙の消費税率引き上げ賛成キャンペーンの力の入り具合には驚く。『朝日新聞』は6月19日の朝刊に、「小沢元代表 矛盾だらけの増税反対」とのタイトルの社説を載せた。
「第一に、社会保障と税の一体改革は党内の論戦を何度もくぐって決着した、れっきとした党の決定である」として、「議論を尽くした結論に小沢氏が他の議員を率いて反対するなら党を出るのが筋だ」と述べている。
本当に議論は尽くされたのか、そして、意見の対立があるなら党を出なければならないのはなぜか。また、意見が異なる場合に党を出なければならないとして、多数を占めていても有権者との約束とことごとく異なる方の立場(野田首相の立場)の人々が党を出る方が自然ではないのか。と朝日新聞社は、小沢氏を悪者のように印象づけようとしているように見えるが、ただマニフェスト、国民の生活第一の論には説得力がなく小沢新党の解散総選挙による先の展望、選挙結果は期待できない。
野田総理を支持している『読売新聞』(6月19日朝刊)は一面のコラム「編集手帳」で、流れる川に浮かぶ舟のへりに付けた目印が、川への落とし物を後から探す際の役に立つ目印として機能しないことを語る中国古典の逸話を引いて、「マニフェスト云々は、ようやく実現に向けて動き出そうとする社会保障と税の一体改革に反対する理由になるまい」と述べている。
「震災や欧州危機を知らなかった当時の青写真(マニフェスト)がそのまま通用するはずもなかろう」と言うのが国民の常識だが、震災や欧州危機は、むしろ「今増税しない方がいい理由」というマスメディアなのだから、こちらも論理矛盾で何を言っているのかわからない。
芸能記事的な政治記事が載っている4面を読むと、民主党の主流派の側には、仮に大量に造反が出た場合、「現実問題として全員を除籍できるか」との懸念もあると、さも悩みがあるかのように紹介する。
民主党の造反議員に対しては、「厳重注意」に加えて、党の役職に就いている者に対しては「役職からの降格」くらいが、適当な「サジ加減」なのではないか。という者もいるが、党議拘束がかかっていてのそれでは国民は納得できないだろう。
野田首相にとって、消費税率引き上げ法案さえ通れば、反対派を切ることが目的にはならないだろう。「処分は、輿石幹事長に一任」で異議はないのではないか。小沢系だったはずの輿石氏が、法案採決前に党議拘束に至る流れに協力するなら、それで十分だろう。
もちろん、野田氏も輿石氏も、やれば負けるとわかっている総選挙などやりたくあるまい。今、党を割るのはもったいない。一回生が多い小沢系の議員も、「もうしばらくは国会議員でいたいだろうから、まだ選挙はやりたくあるまい」という見方が当たっている。
ついでに言えば、自民党議員の多くは説得力とリーダーシップに乏しい谷垣体制の下で次の総選挙を戦いたくはあるまい。
「小沢系」の議員46名(今のところ)を巡って政局に関心が集まることは、霞ヶ関の官僚集団にとっても好都合だ。小沢系が注目を集めなくなって、民主党と自民党が手分けして、官僚と慣れ合っているかのごとき様子ばかりがよく見えるよりはいいとしている。
このまま造反で突き進み離党して仮に民主党を既に離党している「新党きづな」や「北の大地・新民主党」と合流しても国民には小沢氏たちが目論んでいるほど期待されず、むしろまた壊し屋が政局にしたということで、歓迎されないだろう。
かくして、事前打ち合わせのあるプロレスにも、ヒール(悪役)と多少の流血が必要であるように、「小沢系」の存在は大いに役立っているではないだろうか。二度にわたった野田・小沢・輿石の三者会談で、「法案の行方とその後のストーリーについて、お互いに確認していないとは想像しがたい」いう。「いい大人が二度も集まって、建前の自説を主張し合って時間を潰していた、などということがあるはずがない。プロレスラーがお互いの命と生活を守りながら戦って見せるように、周到に打ち合わせしたにちがいない」という考え方もある。
「政治家たちの茶番劇には予定調和の脚本付きで上演される「商売」であり、彼らは仲間なのだ」というように考えると小沢新党に冷めてくるのが有権者の大半と云うことが小沢氏たちは理解していない。
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(文責:尋牛亭日常)
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