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1月22日に掲載した水戸土浦支部の判決は違法性を否定したが、最高裁平成18年10月26日判決の場合は違法性を肯定した。徳島県の旧木屋平村の発注する公共工事の指名競争入札に昭和60年ころから平成10年度まで継続的に参加していた建設業者Xが同11年度から同16年度までの間、村長から違法に指名を回避されたと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、合併により木屋平村の地位を承継した美馬市に対し逸失利益などの損害賠償を求めた事案。地方公共団体の長は、指名競争入札において入札に参加できるすることができる者の資格を定め、公表しなければならないが、その資格を有する者のうちから入札に参加させようとする者を指名するに当たり誰を指名するかのの基準については、その基準を定めたときには公表しなければならないと規定されているにとどまる。(公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律 同法施行令)また、所定の事由に該当すると認められる者をその事実があった後2年間入札に参加させないことができると定めている(地方自治法施行令において準用)ほかは、指名停止、指名回避の基準について法令の規定はない。したがって、1指名競争入札に参加できる者の資格をどのように定めるか2 指名の選定基準や指名停止・指名回避の基準を定めるかどうか3 指名にあたって具体的にどの業者に指名するかについては各地方公共団体の長の裁量にゆだねられている。しかし、地方公共団体の締結する契約について、公正性、透明性、経済性などが確保されなければならないことからすると、地方公共団体の長が恣意的な指名又は指名停止・指名回避をすることは許されず、このような場合は裁量権の逸脱・濫用として国家賠償法上違法となることがあるものと解される。本件において、平成11年までの指名回避は理由があるが氏名回避の期間が最長1年と定められていたことから平成12年以降Xを指名しなかった措置が問題となった。被告は、村では従来から村内業者では対応できない工事についてのみ村外業者を指名し、それ以外は村内業者のみを指名していたところ、Xは村外業者であることが判明したので指名しなかったと主張し1審は村の要綱では村内業者と村外業者とを定義しているが入札参加資格では両者をまったく区別していないしXが村の区域内に主たる営業所を有していないとはいえないとして平成12年以降の措置を違法とした。2審の高松高裁は村内業者に限定した運用に合理性がありXは村内業者でないので違法ではないと判断した。最高裁は、村内業者にのみを指名するという運用は要綱などに明定されていないし、村内業者の客観的判断基準も明らかにされていないこと、指名についての上記運用および上記業者が村外業者に当たるという判断が合理的であるとし、そのことのみを理由として村の上記措置が違法であるとはいえないとした原審の判断には違法がある とした 判例タイムズ1225号 210頁
2007.01.31
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不動産を担保に金銭を貸し付ける場合、抵当権の設定や譲渡担保とすることが考えられるが、不動産を売買した形をとり、弁済期限までに買い戻すことができるとする買戻し特約付売買の形を取ることも考えられる。買戻特約付売買契約の性質が民法の買戻しの規定が適用される真正な買戻し特約付売買契約であれば、買戻し期間の徒過により売主は不動産を取り戻すことができなくなる。これに対し譲渡担保契約であれば、帰属清算、処分清算型を問わず、弁済期の徒過後、目的物が第3者に譲渡されるまでの間は、目的物の適正評価額が債務額を超える場合は清算金を支払うまでの間は、債務の全額を弁済して受け戻すことができる。(債務額のほうが多いときはその旨の通知をするまで)本件は、「不動産売買を装う高利融資、最高裁、違法と初認定」日経新聞2006年2月8日などとして報道された事件である。買戻し特約付売買は、債権担保の目的を有する時は譲渡担保、有しないときは民法の規定する本来の買戻しと認定されることになるが、主観的な債権担保の目的の認定について、最高裁平成18年2月7日判決は「目的不動産の占有の移転を伴わない買戻し特約付売買契約は譲渡担保である」とした。 判例タイムズ1219号34頁
2006.11.20
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東京高裁平成18年10月16日決定1 刑訴法316条の15により開示が予定されている証拠は基本的には検察官が現に保管し ている証拠を意味し、警察から送致を受けていない証拠は含まれない2 警察官が聞き取った第3者の供述を内容とする捜査報告書は、刑訴法316条の15第1項 6号の類型証拠に該当しない3 警察官が聞き取った証人予定者の供述を内容とする捜査報告書は、刑訴法316条の15 第1項5号イの類型証拠に該当しない刑訴法改正の立案者担当者は、本条の規定により開示され得る証拠は、いわゆる検察官手持ち証拠であるとし、この点は、裁判所が開示請求について決定するために必要な場合に、検察官に対し、証拠の標目を記載した一覧表の提示を命じることができることを規定した刑訴法316条の27第2項が、一覧表に記載を命ずることができる証拠の範囲を検察官の保管する証拠としているところにも現れているとしている。一方、これに反対する見解は、「検察官が保管する証拠」は、裁定請求の時点で検察官が保管している証拠だけでなく、検察官が保管すべき証拠、すなわち警察官が検察官に送付すべきものの何らかの理由によりいまだ警察官が保管している証拠も含まれると解している。捜査報告書については、実質的には当該参考人の供述を録取した書面であるところ、その者の確認を経ていないもので、その署名・押印を欠くから当該参考人の「供述録取書」には該当せず6号の類型証拠には当たらないとするのが刑訴法改正の立案担当者の見解である。 判例タイムズ1229号 204頁 頭注
2007.03.22
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土地収用法に基づく収用裁決の取消しを求める訴訟において、同裁決の違法事由として、同裁決に先立つ事業認定の違法性を主張することは許されないとされた事例(東京高裁 平成24年1月24日判決)「事案の概要」本件は、静岡空港整備事業の起業地内に権利を有する控訴人らが、処分行政庁たる県収用委員会が控訴人らに対してした土地収用法48条に基づく権利取得裁決及び同法49条に基づく明渡裁決の取消しを求めた事案である。控訴人らは、本件事業認定の違法性が本件収用裁決に承継されるとして、本件収用裁決が違法であると主張した。「判旨」事業認定と収用裁決とは、それぞれ独立した行政処分であり、事業認定が法20条各号のすべてに該当するときになされるものである一方、収用裁決において、収用委員会は、申請に係る事業が告示された事業と異なるとき及び申請にかかる事業が事業認定申請書に添付された事業計画書に記載された計画と著しく異なるときを除き、収用又は使用の裁決をしなければならないものであり(法47条、47条の2第1項)、事業認定の適法性について審理することが予定されているものではなく、各処分それぞれについて取消訴訟を提起することができるものである。本件事業認定手続において、起業地又は起業予定地内に権利を有する者に対し、法令に従った公告、縦覧、公聴会等の手続が実施され、現に控訴人らは、公聴会において意見を述べており、本件事業認定手続に際して、事業認定が行われることを争おうとする者に申請の内容、起業地又は起業予定地等を知る機会が保障されていたと認められる上、事業認定がなされた後も起業者の名称、事業の種類、起業地等が官報で公告され、起業地を表示する図面の縦覧がされたこと、これらの措置を踏まえて、本件事業認定については、本件空港建設予定地の土地の一部を共有する者等が原告となり、その取消訴訟を提起しており、同訴訟において、本件事業認定の違法性の有無に関する審理がされ、静岡地方裁判所において請求棄却の判決がされ、その控訴審である東京高等裁判所において控訴棄却の判決がされていること、控訴人らのうち26名が同訴訟の控訴人ともなっていることが認められる。したがって、本件事業認定については、控訴人らにおいて、その取消訴訟を提起する機会が保障されており、しかも、現に同事業認定の取消訴訟が提起され、同訴訟において本件事業認定の違法性について既に審理されているのであるから、事業認定とは独立した行政処分である収用裁決の取消しを求める本件訴訴訟において、本件収用裁決の違法事由として、本件事業認定の違法性を主張することは許されないというべきである。判例時報2214号3頁
2014.06.30
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原告ら3名が飼っていた愛犬(ミニチュア・ダックス種牡10歳を被告所有の犬(日本犬の雑種)に噛み殺されたとして民法718条、709条に基づき求めた損害賠償日課の散歩に連れ出された原告所有犬と、鎖につなごうとした被告の手をかいくぐって外に出た被告所有の犬とが遭遇し、被告所有犬が原告所有犬に襲いかかり、噛み殺した。その際に止めに入った原告が転倒し加療2週間の傷害を負った。家族も含めて原告として慰謝料等を請求毎日飼育し溺愛しており本件を目前にしながら愛犬を救えず、自らも負傷した原告につき慰謝料80万円を請求 30万円認容他の家族2名 それぞれ慰謝料25万円請求 各自10万円認容愛犬の価額の賠償 流通価格の5万円本判決は愛犬の死亡による直接損害に比較して飼い主の慰謝料の認容額が極めて高額であることに注目されるが新聞紙上でも「愛犬殺害に多額の慰謝料」の見出しで報道された。これは従来はペットを物としてみていたが、近時、人間のペットに寄せる愛情が深くなり、少子高齢化時代でのペットが家族の一員としての地位を占めるに至った結果に沿うものとして本判決を評価する向きもある。名古屋地裁平成18年3月15日 判決 確定 以上 判例時報1935号109頁 頭注より
2006.09.13
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弁護士法による照会、民事訴訟法による調査嘱託に対する回答を拒否した銀行の不法行為責任が否定された例大阪高裁平成19年1月30日判決本件は弁護士法23条の2所定の照会、民訴法186条所定の調査嘱託を受けた者がこの回答を拒否した場合、照会の申出者、調査嘱託の申立人に対して不法行為責任を負うかが問題となったものである。本判決は弁護士法23条の2所定の照会には、照会に応じなかった場合の制裁を定めた規定がないものの、照会により報告を求められた事項につき照会をした弁護士会に対して法律上報告する公的な義務を負い、調査嘱託には、これに応じなかった場合の制裁を直接に定めた規定がないものの、裁判所に対し、これに応じる公的な義務を負うとしたうえ、23条照会及び調査嘱託を受けた銀行の回答義務が何らかの制約を受けるかについては、個人情報保護法、プライバシーの観点からの何等の制約を受けないものであり、個人の情報であっても、それらの者の同意の有無に関らず、照会をした弁護士会及び嘱託をした裁判所に対し、求められた情報につき当然に回答義務を負うものであると判示している。そして回答を求められた銀行は、この公的義務に違反しているが、その義務は弁護士会や裁判所に対する義務の違反であって、照会を求めた原告らの個々の権利を侵害したものではないとして不法行為責任を否定したものである。上告されている。 判例時報1962号78頁
2007.06.19
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判決や公正証書・調停調書などは債務名義と呼ばれ、これがあると債務者の財産に対し強制執行ができる。債務名義とはいわば人の財産に手をかけることができるお墨付きである。債務名義が成立した後において、当事者の話し合いで強制執行はしないという約束をすることも契約自由の原則により可能である。例えば、毎月2万円払ったら執行しないとか。請求権自体はいじらないで、執行についてのみ契約するもので執行契約という。請求権自体を変更させると(一括払いを分割払いにして期限の利益を与えることになる)それが不履行の場合、再度判決をとらなければならないこととなるからである。本件は債権者が公正証書により、裁判所に対し債権差し押さえ命令の申し立てをなし、それが発令されたが、債務者において執行をしないという約束があったとして争う場合の手続の方法についての問題である。強制執行手続においては、執行異議という簡便な手続が定められており、この方法による場合は、新たに裁判を起こす必要はなく債権差し押さえ命令を出した裁判所に異議を出せば判断してもらえることになる。東京地方裁判所及びその抗告審の東京高裁は、上記主張は実体上の事由であって執行抗告の対象とならないとして棄却した。この問題は民事執行法が制定される前から争いがあり、執行方法の異議によるべきであるという説と請求異議の訴えによるとする見解とが主張されており大審院は執行方法のに関する異議によるべきであるとしていた。最高裁平成18年9月11日判決は大審院の判例を変更して請求異議の訴えを提起すべきとした。その理由は1 不執行の合意等のされた債権を請求債権として実施された強制執行が民事執行法規に照 らして直ちに違法になるということはできないこと、したがって、執行手続が違法であ ることを事由とする執行抗告の手続によることはできないこと2不執行の合意等は、債権の効力の一部である強制執行力を排除又は制限するものであって 請求債権の効力を停止又は限定するような請求異議の事由と実質を同じくするものとい うことができることなどを根拠として請求異議の手続によるべきものとした。 判例タイムズ1225号 205頁 頭注
2007.02.02
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本件は、避暑地として有名な「清里」があり多くの別荘がある山梨県の旧高根町(現北杜市)において、別荘の水道料金を別荘以外の水道料金に比して高額に定めた条例の効力が争われた事案旧高根町は昭和63年に高根町簡易水道事業給水条例を制定した当初から、同町の住民基本台帳に記録されていない別荘に係る給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金よりも高額に設定していたが平成10年4月1日本件条例の一部を改正する条例を施行して水道料金の増額改定を行い、その結果、水道メーターの口径が13ミリの場合を例にすると、別荘給水契約者については、1か月の基本料金が3000円から5000円に増額されたのに対し、別荘以外の給水契約者については基本料金が1300円から1400円の増額されたにとどまるなど、両者の基本料金に大きな核差を生じることとなった。別荘給水契約者である原告らは本件改正条例による改正後の本件条例の水道料金の定めは別荘給水契約者を不当に差別するものであると主張し、行政事件訴訟法3条4項の無効等確認の訴えとして上記水道料金の定めが無効であることの確認を求めるとともに、本件改正条例による改定後の基本料金と改正前の基本料金の差額分の水道料金の債務不存在確認等を求めて本訴を提起した。最高裁平成18年7月14日判決は1 上記水道料金の定めが無効であることの確認を求める原告らの訴えに対しては、改定条例は 水道料金を一般的に改定するものであって特定の者に対してのみ適用されるものではなく、 改正条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と同視することができないの で抗告訴訟の対象とならない2 普通地方公共団体の住民でないが、その区域内に事務所、家屋敷地等を有し、当該地方公共団 体に対し地方税を納付する義務を負う者など住民に準ずる地位にある者による公の施設の利 用について当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結びつきの程度な どに照らし合理的な理由なく差別的取り扱いをすることは地方自治法244条3項に違反する。3 本件改正条例による水道料金の改定において、別荘給水契約者の基本料金は、当該給水に要 する個別原価に基づいて定められたものではなく、給水契約者の水道使用量に大きな格差が あるにもかかわらず別荘以外の給水契約者(ホテルなどの大規模施設に係る給水契約者を含 む)1件あたりの年間水道料金の平均額と別荘給水契約者の1件当たりの年間水道料金の負担 額がほぼ同一水準になるようにするとの考え方に基づいて定められたものであることなど判 示の事情の下では、本件改正条例のうち別荘給水契約者の基本料金を改定した部分は地方自 治法244条3項に違反するものとして無効である。 判例タイムズ1222号80頁 頭注
2006.12.18
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民訴法248条により相当な損害額が認定されなければならないとされた事例砕石権侵害の不法行為を理由とする損害賠償請求事件において、損害の発生を前提としながら、民法248条の適用について考慮することなく、損害額を算定することができないとして請求を棄却した原審の判断に違法 があるとされた事例(最高裁平成20年6月10日三小法廷判決)「事案の概要」本件は、砕石業を営むXが、Yの砕石行為によってXの砕石権が侵害されたので、Yらに対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。Xは、平成7年7月20日当時、本件土地1及び土地2について砕石権を有していたところ、同日から同月27日までの間に本件各土地の岩石を砕石したYを債務者として、本件土地における砕石の禁止等を求める仮処分を申し立てた。X・Y間においては、和解が成立し、本件土地2についてはXに砕石権があり、本件土地1についてはYに砕石権があることを確認する旨の合意と、右合意は本件和解時までに発生した砕石権の侵害等に基づく損害についての賠償請求を妨げるものではないことの確認がなされた。ところが、Yは、和解後に、Xに砕石権があると確認された本件土地2において砕石を行った。「判旨」原審は、Yは、本件和解後、本件土地1を含む係争地の南側部分につき砕石権を取得して実際に砕石を行っていることから、Yが本件土地1において平成7年7月20日の発破により砕石した量と、本件和解後に砕石権に基づき砕石した量を抽象的には観念できるとしても、これを区別しうる明確な基準を見出すことはできないと判示して、XのYに対する本件土地1の砕石権侵害に基づく損害賠償請求を棄却した。しかしながら、原審の上記判断は以下の理由により是認できない。前記事実関係によれば、Xは、本件和解前には本件土地1についても砕石権を有していたところ、Yは、平成7年7月20日から同月27日ころまでの間に、本件土地1の岩石を砕石したというのであるから、上記砕石行為によりXに損害が発生したことは明らかである。そして、Yが上記砕石行為により本件土地1において砕石した量と、本件和解後にYが砕石権に基づき同土地において砕石した量とを明確に区別することができず、損害額の立証が極めて困難であったとしても、民訴法248条により、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて、相当な損害額が認定されなければならない。本件は、先例が多いとはいえない民訴法248条により相当な損害額を認定しなければならない場合につき、最高裁が一つの事例を加えたものとして実務上の意義を有すると評されている。 判例時報2042号5頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2009.08.26
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本件は再生計画不認可の決定が確定した後に、同一の再生債務者に対して、新たな再生計画案についての再生計画開始申立がされた事案である。債務者は裁判所に再生手続開始の申立をした(第1次再生手続)裁判所は、この申立に対して再生計画認可の決定をしたところ、債権者が即時抗告した。抗告審は、債権者平等の原則に違反するとして認可決定を取り消し再生計画不認可とする旨の決定をし、官報広告した。債務者が抗告の許可を申し立てたが最高裁は抗告を棄却した。債務者は官報広告の翌日、再生裁判所に修正した再生計画案について再生手続開始決定の申し立てをした。(本件再生手続)再生裁判所は最高裁の上記許可抗告棄却決定の前に再生手続開始決定をし、その後再生計画認可決定をした。(原々決定)債権者がこれを不服として即時抗告した。原決定は次のとおり理由を述べて本件再生手続き適法に開始されたものであり上記認可決定には民事再生法174条2項1号(平成16年改正前)の事由があると認めることはできないとして抗告を棄却した。1 第1次再生手続における抗告審の再生計画不認可決定は官報広告により確定しており本件再生 手続の開始申し立てにより手続きが競合したとはいえないから民事再生法39条に違反しない2 民事再生法は再生計画不認可が確定した場合、裁判所の職権による破産宣告が出来ると規定 するが(同法16条1項)再度の再生手続開始の申し立てを禁止しておらず再生債務者が再生 債権者と意見を調整し新たな再生計画のもとで再生手続きを進めることが法の趣旨反すると いうことはできない債権者が一事不再理の法理及び民事再生法172条の4による厳格な制限を根拠に事情変更のない再度の民事再生開始の申し立ては違法であるとして許可抗告を申し立てた。最高裁は原審の判断は正当として是認できるとして抗告を棄却した。 判例時報1938号 22頁
2006.10.20
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ホテル利用者がホテルに預けた物品の滅失、毀損につき、高価品の明告がない物品につてはホテル利用者に対する損害賠償額を15万円に制限しているホテル約款が、ホテル側に故意又は重過失がある場合であっても適用されるか 最高裁平成15年2月28日判決 判例タイムズ1127号112頁高価品の明告がなくともホテル側に預かり品の紛失、盗難について故意又は重大な過失があるときは、ホテルの損害賠償責任を軽減する約款は適用されないとされた事例 「宿泊客がホテルの従業員に預けた手荷物の盗難につき、客が手荷物に高価品が在中していることをホテル側に予め明告していなくとも、ホテル側に故意又は重大な過失があるときは、ホテルの約款に客から明告のなかった物品の紛失については損害賠償の限度額を15万円に制限する旨の特則があっても、この特則は適用されず、ホテルの損害賠償額の範囲がこの特則により制限されることはない。」 判例・学説の動向商法578条は運送に関し、同法595条は場屋主人への寄託に関し、いずれも利用客から高価品の明告がない場合には、物品が滅失毀損しても運送人又は場屋主人の損害賠償責任が生じない旨規定している。また、これらの業界では、この規定に類する各種の約款が各業者によって定められている。これらの規定、約款の趣旨は、本判決が前記に述べるとおりであり、このような理解には学説上も異論を見ない本判決は、商法595条について直接判示したものではないが、その理論・思考過程に照らすならば、同条や商法578条についても同様に解することになると考えられる。このような解釈は運送人や場屋主人にはやや厳しいようにも感じられないわけではない。しかし翻って考えてみると、高価品の明告がなくとも、これらの業者は顧客(他人)の物品を預かるのであるから、預かった以上は善良な管理者の注意を払って適切な方法で保管すべきところ、前記諸規定の立法趣旨の事情から前記の責任が減免されるときがあっても、業者側に重過失がある場合まで責任が軽減されるというのは、適切な方法で預かっていてもらえるであろうとの顧客の信頼を大きく裏切るものであって、顧客にとって甚だ酷であり、近時の消費者保護重視の思想に背馳することにもなる。そのような観点から見れば本判決の立場は今後とも堅持されことが予想される。野村直之弁護士の解説 判例タイムズ1154号142頁
2006.08.26
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弁済供託における供託物の取戻請求権の消滅時効の起算点弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は、過失なくして債権者を確知することができないことを原因とする弁済供託の場合を含め、供託者が免責の効果を受ける必要が消滅したときから進行する。過失なくして債権者を確知することができないことを原因として賃料債権についてなされた弁済供託につき、同債務の各弁済期日の翌日から民法169条所定の5年の時効期間が経過したときから更に10年が経過する前になされた供託金取戻請求に対し、同取戻請求権の消滅時効が完成したとしてこれを却下した処分は違法である。最高裁平成13年11月27日判決民法166条1項は消滅時効の起算点を「権利を行使することを得るとき」と規定するが、債務者が弁済の目的物を供託して債務を免れる弁済供託をした場合に、債務者からの供託金取戻請求権の消滅時効の起算点を、いつの時点と捉えるべきかが問題となる。従来民法496条は何時でも供託物の取戻を請求できると規定していることから、供託時を「権利を行使することを得るとき」と捉え供託のときから消滅時効は進行すると解するのが先例であり判例であった。しかし東京地裁昭和39年5月28日判決以降、単に形式的に権利の行使が可能であるだけでなく、行使が権利の性質上期待される場合をいうとし、供託時ではなく、供託を維持する必要がなくなったときからであるとする裁判例が増加した。これを受け、最高裁昭和45年7月15日判決は、受領拒絶を原因とする弁済供託において「供託の基礎となった債務について紛争解決などによってその不存在が確定するなど、供託者が免責を受ける必要が消滅した時と解するのが相当である」と判断した。学説の多くは、上記昭和45年判決の結論に賛成するものの、同判例は、供託者と被供託者の間に紛争のある場合の供託についての判断であるとして、その射程を狭く捉え、債権者不確知の場合や、債権の帰属をめぐって債権者間に争いのある場合にはついては、供託時を消滅時効の起算点と解するのが一般的であった。供託実務もそのように扱われていた。本判決は「権利を行使することを得るとき」と言えるためには、法律上の障害がないというだけでなく、権利の性質上その行使が現実に期待されることを要することを前提としていると解されるが、権利の上に眠る者を保護しないという消滅時効制度の趣旨及び規定の文理上からも当然と解される。 判例タイムズ1125号 28頁 頭注「権利を行使することを得るとき」と言えるためには、法律上の障害がないというだけでなく、権利の性質上その行使が現実に期待されることを要することを前提としていると解されるが、権利の上に眠る者を保護しないという消滅時効制度の趣旨及び規定の文理上からも当然と解される。という点は、過払い金の返還請求権の消滅時効の起算点についても使えそうである。
2007.05.30
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期限の利益の再度付与過払い金の返還請求をしたときに債務者が過去の取引履歴において1日でも遅れて支払ったことがある場合に、そのときから遅延損害金を請求するという業者がいる。遅延損害金になるとすると高い金利での計算が可能になるからである。しかし、1日遅れた3日遅れたといっても期限の利益を失ったから全額払えと言われるわけではなく、翌月からまた同じような弁済をして、そのまま推移しているのである。貸金業者がこのような主張をすることは権利濫用、信義則違反になるかの問題大阪高裁平成18年7月29日判決 判例時報1953号144頁貸金業者であるXがYに対し分割支払、元利金の支払を1回でも怠ったときは期限の利益を喪失し残金を一時に支払う約定で貸し付けたが、Yが昭和58年4月分割払いの支払をしなかったため貸付元金30万円と利息制限法所定の範囲内の利率による遅延損害金の支払を求めたのに対し、Yは、平成4年2月以降Xに対し毎月分割金を支払いXがこれを受領しながら平成16年になって初めて紀元の利益喪失を主張して貸金元金と遅延損害金の一括支払を求めたことは権利濫用、信義則違反に当たると主張した。本判決は、問題の特約は通常債務者に対し支払期日に約定の元本及び及び利息を支払わない限り期限の利益を喪失し残金と遅延損害金を直ちに一括して支払うことになるとの誤解を与える、平成4年2月からXの求めに応じてYは分割弁済しているのであるから、期限の利益を再度付与されていると誤解しているか否かなどについて審理判断することなくYの抗弁を入れなかった原審の判断には審理不尽があるとして原判決を破棄して原審に差し戻した。
2007.09.04
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目的物の性能に関する錯誤レーザー光線を利用した脱毛機の売買契約につき、要素の錯誤により売買契約を無効とした事例X 美容室などを営業Y 美容機器の製造販売を業とする会社XとY レーザー光線を利用した脱毛機及びその関連資材を購入する旨の売買契約締結XはYの従業員の説明により、本件脱毛機による施術を行えば、被施術者の毛質、肌質等によって全く一律ではないものの、通常は5回程度の施術によって脇等のむだ毛が産毛程度になるという脱毛効果を得ることができ、また、本件脱毛機による施術には比較的容易で、製造会社が主催する講習を受講すれば、未経験者が施術を行っても上記効果を得ることができると信じて売買契約を締結した。しかし本件脱毛機は被施術者の毛質、肌質等によって、その施術回数、施術方法及び施術効果が区々であり、顧客や部位によっては、10回ないしそれ以上の施術を行うことにより一定の脱毛効果を得ることはあるが、通常、産毛程度までの脱毛効果を得ることはできない と認め本件脱毛機には、Xが売買契約締結に際して前提とした性能を具備しておらず、売買契約には要素の錯誤があり無効であるとした 名古屋地裁平成18年6月30日判決 判例タイムズ1237号262頁 頭注
2007.06.27
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株券が発行されていない株式(振替株式を除く)に対する強制執行の手続において配当表記載の債権者の配当額に相当する金銭が供託され、その供託金の支払委託がされるまでに債務者が破産手続開始の決定を受けた場合における破産法42条2項本文の適用の有無(最高裁判所第二小法廷 平成30年4月18日決定) 「事案の概要」債権者であるXは、平成27年12月、債務承認及び弁済契約公正証書の執行力のある正本に基づき、債務者であるAに対する貸金返還債務履行請求権等を請求債権とする株式差押命令の申立をし、株券未発行株式であるA保有の株式に対する差押命令を得た。なお、Xの他に3名の債権者もそれぞれ本件株式に対する差押命令を得ており、債権者B1に関しては、B1から請求債権を譲り受けたB2が債権者の地位を承継した。本件株式について売却命令による売却がなされ、平成28年11月、本件株式の売却代金について開かれた配当期日において、配当表に記載されたX及びB2の配当額につき、債権者Cから異議の申し出があり、所定の期間内にX及びB2に対する配当異議の訴えが提起された。そのため、執行裁判所は、配当異議の申出のない部分につき配当を実施した上、X及びB2の配当額に相当する部分については、執行裁判所の裁判所書記官が上記配当額に相当する金銭の供託をした。ところが、Aは、上記供託の事由が消滅する前の平成29年1月、破産手続開始の決定を受け、その破産管財人が執行裁判所に本件差押命令の取消しを求める上申書を提出した。原々審は、職権により本件差押命令を取り消す旨の決定をしたところ、Xが執行抗告をした。原審は、執行抗告を棄却した。これに対し、Xが許可抗告をした。 「判旨」株券が発行されていない株式(振替株式を除く)に対する強制執行の手続において、当該株式につき売却命令による売却がされた後、配当表記載の債権者の配当額について配当異議の訴えが提起されたために上記配当額に相当する金銭の供託がされた場合において、その供託の事由が消滅して供託金の支払委託がされるまでに債務者が破産手続開始の決定を受けたときは、当該強制執行の手続につき、破産法42条2項本文の適用がある。判例タイムズ1452号30頁
2018.12.28
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商法680条1項1号は、被保険者(保険の対象となる人)が自殺によって死亡したときは、保険者(保険会社のこと)は保険金額を支払う責任を負わないと定めている。しかし、生命保険の約款では、一般的に責任開始の日から1年以内に被保険者が自殺した場合には保険金を支払わない旨を定めていた。この約款の解釈として、従前は免責期間である1年経過後の自殺については、反対解釈により、被保険者が自殺した動機や目的を問わず、一律に免責されないとするのが通説であり、保険会社も免責期間経過後の自殺については、自殺の動機目的を問題とすることなく保険金を支払っていたとされる。近時、免責期間後の自殺についても、一定の要件のもとで保険会社の免責を認める下級審判決が現れるようになり、被保険者が保険金受取人に保険金を取得させることが唯一又は主要な目的として自殺した場合には、保険者は免責されるという有力説が主張されてきた。上記記載の下級審判決として 1 被保険者が他の者を道連れにして死亡させ、かつ不慮の事故を偽装したと認定された 岡山地裁判決兵営11年1月27日2 保険契約者兼受取人である会社の実質的支配者が被保険者に対し、執拗に自殺を強要 していたと認定された山口地裁判決平成11年2月9日 など、被保険者が保険金受取人に保険金を取得させることを主要目的にしていることに加えて、一定の加重要件がある場合には、免責期間経過後の自殺についても保険者は免責されるとした。原審は上記有力説を採用し、何ら加重要件がない場合であっても、保険金取得目的があれば、免責を認めたものであるが最高裁平成16年3月25日判決 判例タイムズ1149号294頁は責任開始の日1年経過後の被保険者の自殺による死亡については、当該自殺に関し犯罪行為等が介在し、当該自殺による死亡保険金を支払を認めることが公序良俗に違反するおそれがあるなどの特段の事情が認められない場合には、当該自殺の動機、目的が保険金の取得にあることが認められるときであっても、免責の対象としない趣旨と解すべきである。」として原判決を破棄した。判例タイムズ1184号142頁 丸地明子 判事の解説
2006.08.18
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