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2022.06.16
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テーマ: 読書(8289)

本のタイトル・作者



親ガチャという病 (宝島社新書) [ 池田 清彦 ]

本の目次・あらすじ


第1章 親ガチャという病
生きづらさのなかで固定化されゆく“自己像”
土井隆義(社会学者)

第2章 無敵の人という病
「真犯人」は拡大自殺報道を垂れ流すマスコミ
和田秀樹(精神科医、評論家)

第3章 キャンセルカルチャーという病

森達也(映画監督、作家)

第4章 ツイフェミという病
フェミニズムを攻撃や誹謗中傷の「隠れ蓑」にしてほしくない
室井佑月(作家)

第5章 正義バカという病
スケープゴート叩きの裏に潜む「不都合な真実」
池田清彦(生物学者)

第6章 ルッキズムという病
「相手ファースト」で委縮し“素顔”を覆い隠す若者たち
香山リカ(精神科医)

第7章 反出生主義という病

中島義道(哲学者)

引用



(中島義道)


感想


2022年149冊目
★★★

上り坂ではない時代。高原に生きる若者たち。
努力すれば報われる、這い上がってのし上がるなんて夢のまた夢。
だとすれば、今の自分の不幸は「親」という要因において決定される。
宿命論の運命論。


今はもう、生育環境が将来を決める重要な要素になっている。
それを肯定している自分に気付く。
階級の再生産。
でもそれを否と言いたい自分がいて、この本を読んでみた。
ネットで何も失う者がなく、無差別殺人や拡大自殺を起こす人のことを「無敵の人」と呼ぶということは初めて知った。
過去に起こした問題を糾弾しその人を引きずり下ろすことは「キャンセルカルチャー」というらしい。

この本によると、「親ガチャ」というのは、もとは虐待を受けていた子供が自分の生きづらさを語る際に使った言葉だという。(本当かな?)
過去を他者に開示する際に、気を使わせないように、「相手を不快にさせないように」、自嘲的で無力感溢れるこの言葉が生まれた。
土井さんはそれを相互理解の努力の放棄、と言う。

これ、香山さんの章でSNSでの今時の子の投稿について述べたところと繋がる。
相手のノイズになりたくない、相手を楽しませたい。
「見せたくない」ではなく「見たくないだろう」。
軸足が自分ではなく、他人にある。自分が透明な存在のように振る舞う。
この指摘は新しい。
SNSは「良い自分だけを見せる」「自分をよく見せる」ために使われているのだと思っていた。
そういう考え方もあるのか。

でも透明というのとは、やっぱり私は違う気がする。
それは「コンテンツとしての自分」(消費される自分)ということなのかな。
綺麗で、素敵で、良いもの。
あるいは、可笑しくて、ネタになるもの。
私を見て。この私を。
それは、本当の自分の前に板を置いて、映像を映し出しているような。
その内側の存在は、はたして透明になってしまうんだろうか。
むしろ色濃く、これまで以上に「そうじゃない私」が意識されそうな気がする。

これまでだって、人は建前と本音を使い分けてきた。
場に応じて演じる役割を、被る仮面を変えてきた。
それと「SNSに現れる私」という存在は、どう違うんだろう?
メタバースが広がっていくと、またここは変わって来るんだろうな。
そこにはおそらく、「あちら側へ行きたい」も含まれるんだろう。
その時、内側の私は本当に透明になる。
肉体は邪魔なものになるかもしれない。
意識だけが人を作るんだろうか?
その人の思考パターンを永遠に生成し続けるAIがいたら、その人は生きていると言える?

私は、「親ガチャ」という言葉で、漫画『おまけの小林クン』を思い出した。
主人公は幼い頃に交通事故で両親と姉を亡くし、大けがを負い自分だけが生き残る。
親戚中をたらい回しにされながら虐待を受け、「遺産のおまけ」と扱われる。
自分はおまけだ、という主人公に、友人は言う。
「おまけには当たりも外れもあるだろう。お前は当たりだ」

外れくじを引いた、ガチャに失敗した。
でも私は、思うんだけど。
今ここでこうして生きていることを、当たりにしていくしかないんだ。
過去は変えられない。生育環境は選べない。
弱者として永遠に自分を憐れみ生きていくことが望みならそこにいればいい。
でも、これから先を見るしかない。ここから先を行くのは自分しかいない。
変えられるのは未来だけ。それを選べるのは自分だけだ。

お前は当たりだ。




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最終更新日  2022.12.04 00:03:49
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