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2023.08.25
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テーマ: 読書(8190)

書名



じゃむパンの日 [ 赤染晶子 ]

感想


2023年187冊目
★★★

NHKラジオ・高橋源一郎の飛ぶ教室「生まれ育った京都への思い」(2023年1月20日放送)で紹介されていた本。
2023.03.08「 2023年2月に読んだ本まとめ/これから読みたい本 」で「読みたいな」と思っていた本、ようやく読みました。
その時も書いているけど、私、「赤染衛門(平安時代中期の女流歌人)とは関係ないよね…?」と。
関係ないです。

著者は、

赤染晶子(アカゾメアキコ)
1974年京都府舞鶴市生まれ。京都外国語大学卒業後、北海道大学大学院博士課程中退。2004年「初子さん」で第99回文學界新人賞を受賞。2010年「乙女の密告」で第143回芥川賞を受賞。2017年九月永眠


『乙女の密告』は、芥川賞を受賞したときにタイトルを耳にしていたけれど未読。

乙女の密告というから、陰湿な女子同士のいじめ(ちくり)の話かと思ったら、アンネの日記の原文を読もうとする女子大生の話らしい。
どういうこと。これもまた読んでみたい。

この本には、エッセイが55篇収められている。
もうお亡くなりになっているんだな、と思いながら読むと、かなしかった。
特にエッセイは、「このひとはもう、いないんだ」と残された文字を読む不思議を思う。
あなたの言葉は此処にある。今、生きている。けれど、新たな言葉を紡ぐあなたはいない。

エッセイからイメージしたのは、日本海の海辺。
岩がゴツゴツしていて、海は黒くて、波がざざんと打ち寄せる。
「海辺」といっても、南の島の海とはぜんぜん違う。
どこかさびしくて、かなしい。
でもしんとして、背筋が伸びる。

ざざん。ざざん。
そんな自分に酔っていることに気づいて、その滑稽さを笑ってしまう。

風流だなと思ったのが、おじいさんが七夕の笹に短冊ではなく「結び文」をしていた場面。
織姫と彦星は、逢引の約束を結び文にするのだという七夕飾り。
嘘八百のおじいさん(ほかに七夕飾りに「てるてる坊主」)だけれど、発想が面白い。


O・K・Y(大石内蔵之助良雄)
っていうミドルネーム(?)入りー!!

そんな、くすっと笑える家族の話や、職場の話(絶対に見つけられないパスポートセンター笑)などがあり、ひとつひとつは短いのでサラサラ読めました。
エッセイの、表面の「面白さ」で流して、間に底の深いところを覗き込ませる感じがうまかった。

誰がアンネを密告したか。この謎は未だに解明されていない。わたし達はいつもこの答えを知りたがっている。2003年にもひとりの女性が密告者として疑われた。わたし達はいつも誰かを名指ししたがる。それは時にひとりの人間であり、一つの民族であり、一つの国民である。
戦後40年たった時に、ドイツのヴァイツゼッカー大統領は演説をした。「5月8日(ドイツの終戦の日)は心に刻むための日です。心に刻むというのは、ある出来事が自らの内面の一部となるように誠実かつ純粋にこれを思い浮かべることです」。


このエッセイを読んでいると、著者が深くアンネ・フランクに心を寄せていたこと、彼女が大好きだったことが分かる。
どうしてそんなにもこの人は、アンネ・フランクに惹かれたんだろう。
そうして何を書こうとしたんだろう。
やっぱり、『乙女の密告』読んで見なくちゃ。

言葉は残る。新しく出会う。今。
あなたがいなくなったあとの世界でも。


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最終更新日  2023.08.25 00:00:14
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