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2023.09.20
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書名



最期まで在宅おひとりさまで機嫌よく (単行本) [ 上野 千鶴子 ]

目次


第1章 人生100年時代、先輩方の覚悟
90歳、ひとり暮らしの危機を乗り切った 転んで寝たきりになっても、「これで終わり」とは思わなかったー澤地久枝×上野千鶴子
「安楽死させて」の思いに迫る 好奇心が枯れるまでよく生きて、上手にサヨナラしたいー橋田壽賀子×上野千鶴子
夫と離れても、悲しみすぎない 普段から距離をおいて「ひとり時間をどう過ごすかが大事」-下重暁子×上野千鶴子
下っていく現実を受け止めて 親ですもの、子どもに迷惑かけたっていいじゃない?-桐島洋子×上野千鶴子

第2章 節目を超えて、さらに輝く
主婦こそ“定年”前から備えたい 「女子会」「子離れ」「きょうよう」が40代以降のキーワードー村崎芙蓉子×上野千鶴子

55歳、人生の折り返し地点を過ぎて 最後まで、ご機嫌な独居老人でいようー稲垣えみ子×上野千鶴子

第3章 老後は怖い?怖くない?
ずっと「親の子でいたい」?家族に看取られなくても、不幸じゃないー香山リカ×上野千鶴子
看取り士って何ですか?「最期を見届けてほしい」の声に寄り添うサービスー柴田久美子×上野千鶴子
老後の備えはお金で決まる 決して手放してはいけない「家」と「友」と「1000万円」-荻原博子×上野千鶴子

終章 最期まで自宅での暮らしを全うする「在宅ひとり死」徹底研究

感想


上野千鶴子さんと、色んな方の「老い」をテーマにした対談集。

澤地久枝さんという方が、介護保険の存在も利用方法も知らずにいたというのは驚き。
ご自身で家政婦を雇ってしばらく過ごしていたというのだから…。
でも、それを上野さんに指摘されても、別にという感じ。
上野さんは介護制度を高く評価していて、家で女が担ってきた「介護」を制度化させて誰でも利用できるようにしたことが素晴らしいとおっしゃる。

この「助けを求めない感覚」について、上野さんが「矜持を持っている社会的に強い立場の方と、反対に情報が届かない立場の弱い方」に共通した感覚なのだと言っていて、確かにと思うと同時になぜなんだろうと感じた。
強者と弱者でありながら。

橋田壽賀子さんとの対談では、御本人が安楽死を望まれていることについて、それは「生産性(仕事)がなくなったら生きている理由がない」という意味なのではないかと上野さんは言う。
私も尊厳死や安楽死は制度化されてほしいと思っているけれど、それは自分の命の終わりを自分で決めるということで、その終わりがいつか?というと、病気を得たり、年をとって衰えた時、なんじゃないかと思う。
そしてそれは、「病気を得て、年をとって、衰えて」生きている人を否定することでもあるんだよな…。

一方で「生産性がなければ生きている価値がない」と世界を捉えていることなのではないか。
それは優生思想とどう違うのか。

桐島洋子さんとの対談で意外だったのが、上野さんも桐島さんも「最後には子どもにほどほどの迷惑をかけてもいい」と思っているということ。
もっとこう、独立独歩、最後まで自分で!というスタンスかと思っていた。
人生は持ち回りだから、というこの言葉、養老孟司さんも言っていたな。
生まれたばかりの赤子は世話を焼いてもらうことしか出来ない。
死んだ後の世話は自分では出来ない。
人間は生まれてから死ぬまで面倒をかけることで生きているのだし、それを順繰りに受け持つのだと。
これはたぶん、先に挙げた安楽死の話とも繋がる。

若竹千佐子さんとの対談で、日本の男女の関係は「父と娘」や「兄と妹」「母と息子」のような夫婦モデルをとることについて、上野さんが

愛って不安定なものですから、親族関係をモデルにしてカップルの関係を安定させるのでしょう。そうしてお互い何かを奪い、奪われているんですよ。


と述べられていて、なるほどと思った。
「妹背(妹兄)」という言葉があるけれど、神話だって兄妹や姉弟が夫婦になる。
それは他人と他人という定形の収まりどころのない「ふたり」が、安定した型にはまるための一つの戦略であるともいえるのか。
若竹さんとの対話の中で、「青春・朱夏・白秋・玄冬」を人生の季節として呼ぶことを言っていたけれど、青春以外は聞かない。
…私は今、何時代なの?朱夏?

稲垣えみ子さんとの対談では、稲垣さんのお母さんがご病気されて、それが稲垣さんの「上手に下る」を目指すことに繋がったのだとあって、そうだったんだと思った。

やりたいことを諦めず、イキイキと外に開いているのが幸せな老後のイメージでしたけど、そうではなく、やりたいこと、欲を徐々に少なくして、下り坂であってもなんとか前向きに下りていきたいなって。


寿命がどんどん伸びて、80歳以上が人口の1/4だという。
100歳以上の人が 9万人超。
長寿は人類の長年の望みだった。
けれどどうなんだろうな。
それは幸せなことであるのだろうか。あるいはあり続けるのだろうか。
自分が生きていくことの延長には必ず死がある。
人は皆死ぬ。
致死率100%だ。
病気、老衰、障害、あるいはほかのものだって。
けれど世界にはまるでそれがないように、見える。
生産性。

機嫌よく死んでいく。
ちゃんとそれが出来るかなあ。
今だって難しい。
機嫌よく生きることさえ。


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最終更新日  2023.09.20 18:06:46
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