水牛は重荷負うても
そのことは言わぬ
ただ黙々と歩む
その蹄は大地に食い入り
一歩一歩歩む
暑い日ざしの中を
白砂の眩しい珊瑚の石垣の道
沖縄の屋根低い家
水牛はただ黙々と歩む
そのずっしりとした体に
重荷を受け止め黙々と歩む
人は騒ぎすぎる
人は解決を急ぎすぎる
人は不満が多すぎる
人はすぐに争いすぎる
人は性急に判断しすぎる
人は待つことを好まぬ
人は早い成功を求めすぎる
人は結果を求めすぎる
人は小さいことにこだわる
人は・・・・・・・・・・・・・
人は・・・・・・・・・・・・・
水牛の重い体躯は無言のうちにたしなめる
一歩一歩水牛は己の道を歩む
そこに惑いはない
地球という悠久の時のなかに
水牛はあせることなく一歩一歩歩む
その力はその角にみなぎり
その瞳は優しく童がその背にのる
水牛は悠々たる大いなるガンジスの流れに
その重い体躯を洗い川にとけこむ
水牛は地球の歳月の長きがごとく
ただ黙々と一歩一歩歩みつづける
高村光太郎
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小生の与論高校時代、2~3年生時の担任の先生だった、
恩師の川涯利雄氏が主宰する、華短歌会の季刊誌「華」、
第74号(早春号)が昨日午後に手元に届いた。
今年の干支が「丑」であることに因んで、
高村光太郎の、「牛」と「水牛の歩み」の二つの詩を転載し、
「この詩の心を反芻しながら生きていきたいと願っています」、と
我が恩師は、編集後記に書いておられる。
小生は、この「水牛の歩み」を紙に書いて目の前に貼ってある。
小生もまた、この詩の心を反芻しながら生きたいと切に思うのだ。
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