TV放送・ソフト販売一切禁止の条件で撮影された映画を 上映途中からの入場禁止の映画館でみました。
岩手県にある児童養護施設みちのくみどり学園に入所する虐待を受けたこどもたちと地域の人々の交流を『いのちの作法』の小池征人監督が綴った記録映画。
毎年増加する児童虐待の社会的背景とともに、この施設ならではの取り組み、そして葦の若芽(葦牙)のごとく力強く生きているこどもたちの「受難と再生」に焦点を当てている。
(宣伝チラシより)
始まってすぐに「現在、3日に1人の子どもが虐待によって命を落としています」というテロップが流れます。つい最近も新聞紙上で虐待死の記事を読んだなと思いつつも、えっ、そんなに多いんだとも思いました。
虐待を受けた子どもはコミュニケーション能力が育っていないので 言葉で説明ができなくてつい 手っ取り早く簡単で(自分が受けてきた)暴力に訴えてしまいがちと実例が。施設職員が間に入って 双方の言い分を聞きながら辛抱強く 言葉で説明させるようにもっていくのですが・・・忍耐強くなきゃできない仕事だと頭が下がります。
上手く説明できないいらだちも手伝ってテーブルをけっとばす子に 静かに諭しながら「本当に言いたいことは何なのか」を探っていく職員。そしていさかいの相手にもわかるように暴力した子の本音を当事者同士が共有できるように仕向ける。
「60年以上生きてきた私より ほんの5歳や10歳でずっと深く傷ついている子どものその奥底は 施設での仕事を何十年重ねてもはかりしれないものがある」という施設長さんの言葉に涙があふれてきました。
それでもこの仕事を続けられるのは この子たちには命があるからだと。
結核児童の施設から始まったこの学園では 生きたくても命を落とす子どもたちをみてきたからこそ 命を信じて子どもたちの再生の手伝いをできると。そういう経緯がなければ、できなかっただろうという言葉が重かったです。
少人数での合宿のための食糧買い出しのスーパーにて。家族で過ごす経験のない子どもたちにとっては スーパーはあこがれの場所だという説明。「何個だけよ」「今日はダメ!!」ひっくり返ってジタバタするという誰でも経験のあると思われることも この子たちにはなかったのかと・・・
幼い頃から施設に預けられた兄弟(16歳・13~4歳?)が 家に戻る練習をかねた里帰り風景。
戻った家には 異父妹たちが3人(だったかな?)一番下の子はどうみても1~2歳。
これには正直唖然としてしまいました。
その後映画の中で 再婚した義父や実母の虐待で兄弟が施設に預けられることになったとの経緯が長男の口から語られます。
新しい家族を築くよりさきに 生活をたてなおしたら真っ先に施設に預けた子どもたちを引き取る用意をするべきなのでは・・・という違和感。実子を再婚相手が望んだにしても、虐待で子どもを施設に預けておきながら さらにまた子どもを何人も生むという精神構造にはついていけませんでした。
語られませんでしたが この兄弟の心の中に「自分たちは捨てられた」という思いはないのだろうかと・・・
次男の作文に「家族が好き」とあったのには 嬉しい気もしました。(その後に 暴力をふるう時の兄は嫌いと続きましたが)
兄は兄で「暴力の連鎖は 自分で断ち切りたい」と決意表明。
高校を卒業したら自立して この兄弟たちは「家」に戻ることなく生きていくことになるのではないかとも思いましたが。
ケロ2が好きなので 大家族特番TVもよく見ます。大家族は子どもを育て上げてるので立派ですが・・・
ただ、高校も卒業できるかどうか 大学進学は望むべきもない(よほど本人が自活できればは別として)環境に生まれ出た子どもにとっては それが幸せなことなのかどうかとふと思うことも。大学をでること=幸せの構図ではないことくらい百も承知。
その家族の 子育ての価値観だから他人がどうこういうべきものでもありませんが。
中学生の弁論大会 施設での雪合戦の様子などを映して 最後にまた「3日に1人の子どもが虐待死しています」というテロップ。最初のとは また異なる重みを突き付けられた気がしました。
ケロ1を育てている時 社宅の4階だったので前のお宅の人と顔を合わせなかったら 買い物にも出ていかなければ 1日中子どもと2人きりという環境でした。
1歳前に 食事中に椅子から立ち上がってくるケロ1にイライラしたこと 3歳児検診前におむつを取らなければと焦ったこと 今から思うと虐待スレスレのことをしたこともあったと思い当ります。
3か月検診だったかで 普段うつぶせにすることなどあまりなかったので 頭をあげていられずすぐに布団につっぷしてしまうのを「他の子はほら 頭をあげていられるでしょ?もっとうつぶせにさせてください」と保健婦さんに言われ それだけのことで自分の育て方を否定されたようにショックだったことなどもついでに思い出しました(苦笑)
事前学習をしたにもかかわらず ケロ2の時も同じようにいわれたっけ・・・
「幼稚園までおむつしてるわけじゃなし」と3歳児検診で まだ取れてなくてもしょうがないやとケロ2の時は開き直ってたし(ケロ1は 取れてましたね)
特殊な上映形態だけに 観る人が限られてしまう映画であることもどうなのか?
特集 こどものまなざし の中の1本。1~14日の上映期間の最終日で観ました。GWの時に ちょっと無理して他の映画もみればよかったとちょっぴり後悔でした。