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2024年10月22日
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カテゴリ: 読んだ本



実際には更級日記の記述は少女時代以降も続く。32歳で内親王の下に出仕し、33歳で橘俊通と結婚する。当時としても相当遅い結婚である。その間、高齢の父の常陸介任官、単身赴任、帰任後の引退、母の出家などもあり、作者は将来にかなり不安を感じていたのではないのだろうか。源氏物語の浮舟の境遇に憧れていたようなのだが、素晴らしい貴公子に人知れぬところに囲われていたいという夢をいつまでもみているわけにもいかない。
宮仕えは辛いことや意に添わぬこともかなりあったようで、作者はやや内向的で仕事を器用にこなすというタイプではなかったのかもしれない。けれども、源資通との春秋の優劣論など和歌を通じての交流もあり、作者の学識や和歌の才能は宮仕えでも評価されていたのではないのだろうか。資通との交流は、物語めいていて、恋愛とは別物であっても、強烈な印象を残した。夫は下野守、信濃守に任官しているが、これにはいずれも同行していない。夫についての記述は少ないが、作者はひたすら子供たちを一人前にするのに必死になっており、夫が信濃から帰任して、すぐに亡くなったときも非常に悲しんでいる。悪い妻というわけではなかったのだろう。
宮仕えは断続的に続けており、宮仕えの中で知り合った気の合う友人との交流を支えに子供が独立した後の日々を暮らす。
更級日記の書名は晩年になって訪れてきた甥にあてた下記の歌による。
月もいででやみにくれたる姨捨になにとて今宵訪ねきつらむ
今、読んでも、やはり作者は等身大の女性という印象である。
ただ実際にはこの作者は単に物語好きの文学少女、文学おばさんであるだけでなく、よわの寝覚めなどの数編の物語を書いており、いくつかは断片的に今日も伝わっている。そうだとしたら逆に不思議である。更級日記は晩年までの記述があるにも関わらず、物語を書いたことの記述は一切ない。そのあたり、あの紫式部日記には書きかけの源氏物語についての記述があるのに。





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最終更新日  2024年10月22日 21時37分49秒
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