音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年08月01日
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カテゴリ: ジャズ




 キャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)の名を聞いて思い浮かべるイメージの一つに、『マーシー・マーシー・マーシー!』などに代表される"ファンキー・ジャズ"のイメージがある。他方、名盤『サムシン・エルス』の(名義上の)リーダーという別のイメージも存在し、万人当てはまるとまでは言わないまでも、多くの人に共通するような第一イメージが中途半端なのは、ある意味で気の毒な話だ。さらに、キャノンボールが気の毒なのは、ライヴ盤の多さ。ライヴ盤がスタジオ盤に比べて低く見られてしまう風潮もあいまって、「彼の代表作は?」と訊かれても、「これだ!」と言うイメージが定着していない。そんな曖昧な状況のうちに、キャノンボール自身の存在も決して高く評価されなければ、「キャノンボールのよさはこれだ」というポイントも共通理解が得られなくなってしまった、というのが現状であろう。

 本盤『シングズ・アー・ゲティング・ベター(Things Are Getting Better)』は、1958年の録音だから、『サムシン・エルス』と同年の作品。より正確に言えば、『サムシン・エルス』が1958年3月に吹き込まれ、その年の10月に『シングズ・アー・ゲティング・ベター』が録音されている。さらに広い文脈から見ると、キャノンボールが伝説的に、ジャズ界に颯爽と姿を現したのは1955年で、その後、亡くなる1975年までの数十枚リーダー作の中では、わりと初期の演奏。冒頭で述べた"ファンキー"なイメージはもう少し後に定着する。

 本作の特徴の一つは、キャノンボール・アダレイwithミルト・ジャクソンの作品である点、すなわち、ミルト・ジャクソンというヴァイブ奏者をフィーチャーしている点である。ミルト・ジャクソンは、MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)では、どちらかというと控えめな演奏をするが、単独ではよりブルージーな演奏をする傾向にある。その他のメンバーはウィントン・ケリー(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、アート・ブレイキー(ドラム)である。ケリーやブレイキーの演奏は比較的控えめで、無理にキャノンボールを煽ったりはしていない。その分、キャノンボールはストレートに気持ちよくプレイしている。同じことはミルト・ジャクソンにも言え、ミルトは出るところと引っ込むところをはっきり意識しながら、出るところではお得意のブルージーかつリズムセクションの上を浮遊するかのようなプレイを見せる。

 ミルト・ジャクソンが前面に出ている部分を注意して聴くと、キャノンボールの絡みは中途半端である。きっと軽いストレスを抱えたような状態なのだろう。ところが、と言うか、それゆえに、キャノンボールのソロに来たとたん、一気にそれが吹き飛ぶ。屈託のないストレートなフレーズと音色が耳に飛び込んでくる。2.の表題曲ののびのびとしたプレイ、6.(オリジナルでは5.)の 「サイドウォークス・オブ・ニューヨーク」 のキャノンボールが出てくる瞬間などは聴いていて爽やかだ。

 ファンキーさを求めて聴くならば、本盤のよさはあまり際立たない。そうではなく、本盤における、屈託なく、ストレートに、気持ちよく流れるキャノンボールのアルトを聴くと、こちらも爽快な気分になれる。


[収録曲]
1. Blues Oriental

3. Serves Me Right
4. 同(別テイク)
5. Groovin' High
6. The Sidewalks of New York
7. 同(別テイク)
8. Sounds For Sid
9. Just One Of These Things

Julian "Cannonball" Adderley (as), Milt Jackson (vib), Wynton Kelly (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)

1958年10月28日録音。





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Last updated  2015年11月15日 07時01分37秒 コメントを書く


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