音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年08月28日
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 先回のホイットニー・ヒューストンのデビュー作 『そよ風の贈りもの』 (1985年リリース)からは複数のシングル・ヒットが生まれた。とりわけ、「すべてをあなたに(Saving All My Love For You)」とこの「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール(Greatest Love Of All)」は、洋楽バラード好きの人は“聴かずには絶対死ねない”と声を大にして言いたいほどの名唱である。

 そのうちの「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」をここで取り上げる次第なのだが、実は2種類のヴァージョン違いが存在する。オリジナル・バージョンとシングル・バージョンと呼んで区別しておけばいいように思う。オリジナルの方は、当初の米盤(当時はLPレコード)に収録されていたらしく、それはそのまま日本盤のLPならびにCDにも引き継がれた(したがって日本盤はずっとオリジナルを収録し続けた)。他方、米盤はこの曲がシングルとしてヒットした時点で、アルバム収録分もシングル・バージョンに差し替えられた。その後も米盤は長らくシングル・バージョンを収録していおり、2010年に出た記念エディションになってついにオリジナル・バージョン収録という形に戻されたらしい。

 一聴して大きな違いは、オリジナルはピアノのイントロ(それも小さな音でバックから聞こえてくる)で始まるのに対し、シングルはキーボードのしっかりとしたイントロに差し替えられている点である。けれどもさらによく聴くと、演奏だけでなくヴォーカルのテイクも違っている。大雑把にいえば、オリジナルの方が丁寧にまっすぐ歌っているのに対し、シングルの方が起伏をつけて“濃い”節回しを試みているようで、なおかつ歌い方もこなれているという印象を持つ。

 正直なところ、どちらが好きかと言われると結構悩む。両方聴きたいという理由で、結局のところ邦盤と米盤の両方を手元には持っているのだが、甲乙つけられないでいる。発売時から聴きなれていたのはオリジナルの方だが、実はその当時にはラジオなど違う媒体でも繰り返しシングル盤を聴いている。なので、多分に経験的だが、アルバム内で通して聴くならオリジナル、1曲だけ正座して聴くならシングル・バージョンといったところだろうか。

 ちなみに、この「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」という曲は、ホイットニーのオリジナルではない。彼女よりも先に録音したのはジョージ・ベンソンで、彼のバージョンを聴いてもこの曲がそもそも名曲だというのがわかる。ホイットニーを発掘してデビューさせたクライヴ・デイヴィスは、この曲を録音するのに当初は反対し、ホイットニーが必死に説得した上で録音にこぎつけたとのこと。結果は、聴いての通り見事な仕上がりで、歴史に残る名唱が録音されて本当によかった。この詞を書いたのは、シンガーソングライターのリンダ・クリード(結婚後はリンダ・エプスタイン)で、彼女は若くして乳がんを発症し、そんな自身の境遇から若い母親の心情を詞にしたのがこの曲だそうである。結局、闘病の末、1986年4月にリンダは亡くなり、今度はこれと入れ替わるようにして数週後にホイットニーの「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」がチャートの1位に上りつめた。こんな裏話を思い起こしながらこの曲を聴くと、強い“自己愛”を顕示するかのように見える歌詞も、一見したのとは違う風に響いてくるのではないだろうか。



[収録アルバム]

Whitney Houston /  Whitney Houston






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Last updated  2011年02月28日 07時07分52秒 コメントを書く
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