音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2011年02月26日
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 ジェファーソン・エアプレイン(Jefferson Airplane)は、1966年にサン・フランシスコ発のバンドとしてレコード・デビュー。翌67年にはモデル出身のグレース・スリックが加入した本作『シュールリアリスティック・ピロー(Surrealistic Pillow)』をリリースし、一気にブレークした。

 彼らの作品の中でもとりわけこのアルバムは、1960年代後半の特異な文化の中で生まれたものである。対抗文化(カウンター・カルチャー)、サイケデリック、フラワー・ムーヴメント、ヒッピー、ヴェトナム戦争…といった用語でひとくくりにされる当時の若者文化の体現者であったというのは、間違いない。しかし、40年以上たった現在から見て、これは過去の文化の断片、つまりはあくまで一時の流行ものに過ぎず、もやは現代的意義はないものと化してしまったのだろうか。

 個人的には、半分はそうとも言えなくはないが、残り半分はそうでないように思う。“サマー・オブ・ラヴ”をリアルタイムで経験していない筆者にとっては、『シュールリアリスティック・ピロー』は最初から“あと聴き”の音楽だった。その意味では、今初めてこの音楽を聴く人と大差ないとも言える。そういう聴き手の立場からすると、“ドラッグ”(=フラワー、サイケ)的な部分に関しては、その時代の、早い話が流行の遺物的な響きが伴うのも避けられない。けれども、その一方で、それを超えた普遍的な音楽性や、今の音楽を理解する上での重要な意味といった、いわばプラスの側面もこのアルバムには潜んでいるように感じる。

 そういうプラス面の一つは、米国ポップ/ロック界に女性ヴォーカルの存在を確立したという大きな功績である。それは単なる女性シンガーということではなく、バンドの中で男女それぞれのヴォーカルが一つの音楽を形成するという意味において、である。今の時代の耳で聴いても、元々このバンドのヴォーカルの中核を担っていたマーティ・バリン(同じく創設メンバーのポール・カントナ―)、本作から新加入のグレース・スリックの組み合わせは惚れ惚れする。一つのバンドの中に複数の男性ヴォーカルが共存するというのは、ビートルズの例を挙げるまでもなく、ロック界にはごまんとある。元々女性ヴォーカルがいたとはいえ、そういう風な形でヴォーカルが成立していたところへ、グレース・スリックのような力強い女性ヴォーカルを持ってきてこれほど見事にはまった例というのは、なかなかレアであり、大成功だったと思う。

 また、これと同時に、ザ・バーズ、ママス&パパス、あるいはボブ・ディランといったフォーク・ロック系のアーティストが積み上げてきたものを、アメリカン・ポップス/ロック界の中で存在し続けられる位置に押し上げているという側面も見逃せない。軽薄なポップではなく、だからといってコアなロックでもなく、しかしありがちなフォーク・ロックというわけでもない。この絶妙なバランス具合は、どの曲にも当てはまるわけではないにせよ、正直聴いていて気持ちいいものだ。

 ちなみにこのアルバムからは2.「あなただけを(サムバディ・トゥ・ラヴ)」(全米5位)と10.「ホワイト・ラビット」(同8位)の2曲がヒットし、アルバム自体も全米3位となった。時はビートルズの『サージェント・ペパーズ』がチャート上位を占めていたような時代の話である。ちなみに個人的なフェイバリットは、上述の2.「あなただけを」と6.「恋して行こう(3/5オブ・ア・マイル・イン・10セカンズ)」。

 その後、ジェファーソン・エアプレインは1973年まで活動を続けるが、その後はメンバーが離れたりひっついたりしながら、ジェファーソン・スターシップ(1974~84年)、スターシップ(1985~90年)、再結成ジェファーソン・エアプレイン(1989年)、新生ジェファーソン・エアプレイン(1992年~)、スターシップ・フィーチャリング・ミッキー・トーマス(1992年~、後にスターシップ・スターリング・ミッキー・トーマスに改名)など複数のバンドが時に同時並行で存在してきた。一時期は名称使用の裁判もあったりして、もはやどれが正統なのかよくわからなくなってしまっている。いや、どれが本流かという議論自体、もはや意味を成さないのだろう。あまりにややこしいので、いずれ機会があれば別の記事としてこの経緯を整理してみたいとも思っている。




[収録曲]


2. Somebody to Love
3. My Best Friend
4. Today
5. Comin' Back to Me
6. 3/5 of a Mile in 10 Seconds
7. D.C.B.A. -25
8. How Do You Feel
9. Embryonic Journey
10. White Rabbit
11. Plastic Fantastic Lover

1967年リリース。






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Last updated  2016年02月01日 11時28分56秒 コメント(1) | コメントを書く
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