音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2012年07月30日
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テーマ: Jazz(1978)
カテゴリ: ジャズ




 ジャズにおけるブルースとは何なのか。元来のブルース(本来的なジャンルとしてのブルーズ)とジャズにおけるブルースは明らかに違う。もちろん12小節から成る、独自のコード進行を持つ云々といった音楽的な形式は基本的に一致するのだろう。けれども、仮にそうした形式を踏襲していながらもブルースとは言い難いものもあれば、形式から外れていてもこれぞブルースと言われる楽曲あるいは編曲もあるように感じる。究極的にいえば、モダン・ジャズにおけるブルースの捉え方なんてものは、奏者や聴き手それぞれでまちまちかもしれない。ともあれ、少なくとも、ジャズという閉じられた世界において “これぞブルース”と言われる盤はいくつもある。オリヴァー・ネルソンの『ブルースの真実』などはその代表格と言ってよいだろう。そして、今回取り上げるレイ・ブライアント(Ray Bryant)の『オール・ブルース(All Blues)』もそんな中の一枚ということになる。

 レイ・ブライアントは1931年フィラデルフィア生まれのジャズ・ピアノ奏者、作曲家である。ベース奏者のトミー・ブライアント、ドラム奏者のレン・ブライアントとは実の兄弟である。1950年代後半から近年に至るまで数多くのリーダー作を残しているほか、過去にはマイルス・デイヴィスやソニー・ロリンズをはじめ様々な有名アーティストとの共演も経験している。

 上で述べたように、ブルースは、20世紀に入ってからのジャズの発展とともに、ジャズ界においては、良くも悪くも根本的に別の音楽と化してしまった。コアなブルース・ファンにしてみれば、ジャズのブルースなんぞもはやブルースではないとすら突き放されるだろう。ただ、ジャズでのブルースという用語にもけっこう曖昧さがある。ジャズの世界でブルースという場合、形式としてのブルース(ブルース形式)のことを指すこともあれば、ブルージーな演奏(雰囲気としてのブルース)をいう場合の双方がしばしば含まれる。ちなみにこの手のややこしさはロック界にも蔓延っていて、何が“ブルース”で、何が“ブルージー”なのかの境目が実にいい加減である。ともあれ、上で述べたうちの後者、つまりは“雰囲気としてのブルース”が結構なくせ者で、もしもこれらを“ブルース”に含めると定義するのならば、早い話、聴き手の感覚で何でも含まれることになる。

 実際、本盤のレイ・ブライアントの演奏も、曲によってはブルースの形式をはみ出してしまっている。なので、本盤を“これぞブルースだ”と言うのは正確ではないかもしれない。いや、そもそも形式がブルースであればブルースだということになるかどうかも微妙だろう。ジャズの場合、形式とは別に、明るさと陰のバランス(別に曲調のメジャーかマイナーかというわけではない)によって、ブルージーに仕上がる(と呼ばれる)か否かという部分もある。

 独断と偏見で言うと、1.「スティック・ウィズ・イット」、3.「Cジャム・ブルース」、7.「ビリーズ・バウンス」がベスト3曲。いずれもいかにもなレイ・ブライアントの手癖…、いやはや得意フレーズが軽快かつブルージーな雰囲気の中、オンパレードで展開される。

 それと同時に、この手のフォーマットと演奏の展開に、変な意味での“即興(インプロヴィゼーション)”を求めてはいけないのかもしれない、と思ったりもする。同じジャズ・ピアニストとしては、レッド・ガーランドなんかも典型的にそうなんだろうと思うのだけれど、筋書きはある程度決まっていて、全てが即興演奏なわけではない。というか、そもそもジャズというのは(フリー・ジャズなんかはともかく)、片っぱしから即興なのではなく、本来的に“即興度や即興部分の占める割合が高い”音楽に過ぎない。その意味で、レイ・ブライアントの本領もこの辺りにあるのではないだろうか、と思う。

 つまりは、即興的なフレーズの集積がある種、独自の技となって年月とともに集積され、その集積が披露されると見事な演奏となって決まるタイプ。なので、結果的には聴きこめば聴きこむほど“即興的でない”気分にさせられることもある。けれども、上で述べたようにジャズ音楽の特質を考えれば、ソニー・ロリンズのようなその場の雰囲気で何が飛び出すか、というのも魅力だし、即興的演奏の集積の上にあるいくぶん出来上がった風のこうしたブライアントの演奏も、ジャズの魅力を存分に伝えるものなんだろうという気がする。



[収録曲]


2. All Blues
3. C Jam Blues
4. Please Send Me Someone To Love
5. Jumpin’ With Symphony Sid
6. Blues Changes
7. Billie’s Bounce


[パーソネル]

Ray Bryant (p)
Sam Jones (b)
Grady Tate (ds)

1978年4月10日録音。





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Last updated  2012年07月30日 05時19分31秒 コメント(2) | コメントを書く


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