音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2015年04月19日
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テーマ: Jazz(1978)
カテゴリ: ジャズ




 レニー・トリスターノ(Lennie Tristano)は、1919年シカゴ出身のジャズ・ピアノ奏者、作曲家。イタリア系の家庭に生まれ、幼少期に失明するも、ピアノと音楽理論を身につけ、ビバップを超越する音楽様式を確立しようとした。リー・コニッツをはじめとする“トリスターノ派”のアーティストを生み出し、ジャズ教育者としても知られる。

 そんなトリスターノの代表作の一つがこの『鬼才トリスターノ(Lennie Tristano)』というアルバム。“鬼才”という日本語を聞いたとたん、身構えてしまう人もいるかもしれないが、元のタイトルは単なるセルフタイトルなので、それほど怯える(?)必要はない。とはいえ、前半(A面)での演奏内容はかなり実験的なものになっているのも事実と言えるように思う。要は、前半と後半の落差(?)が本番の特色ともいえるかもしれない。

 形の上では、トリオ演奏とカルテット演奏の2つのセッションを組み合わせたもの。前者(1.~4.)は日付不明だが1954または55年ニューヨークでの録音。後者は1955年6月11日、同じくニューヨークのとあるレストランでのライヴ録音となっていて、彼の“弟子”のリー・コニッツがアルト・サックスで加わっている。

上述の実験性や革新性という点では、2.「レクイエム」(リズム・セクション抜きだが単なるピアノ独奏ではない)や3.「ターキッシュ・マンボ」のオーバーダブ(多重録音)、あるいは、1.「ライン・アップ」や4.「東32丁目」のテープ速度の変調が挙げられる。これら前半の気迫や緊張感を聴く限りにおいては、確かにトリスターノは“鬼才”、もしくは“孤高のピアニスト”というレッテルで語られる人物なのかもしれない。

 ところが、後半(LPではB面)のライヴ録音は、“鬼才”の表題から想像するよりは柔らかで、いくぶん“ほんわか”した感じもある。リー・コニッツのサックスがその柔らかさに寄与しているのは明らかで、いわば、仲間が集ったスタンダード曲集のような雰囲気に仕上がっている。つまり、ハードな雰囲気とソフトな雰囲気の組み合わせ。LP時代風に言えば、“A面を聴くか、B面を聴くか”の論争になりそうといったところ。全体のトーンが“鬼才”なのではなく、これらA面とB面の両方をできるところに、トリスターノの“鬼才ぶり”がある、なんて言い方もできるんじゃないだろうか。


[収録曲]

1. Line Up
2. Requiem

4. East Thirty-Second
5. These Foolish Things
6. You Go to My Head
7. If I Had You
8. I Don't Stand a Ghost of a Chance With You
9. All the Things You Are


[パーソネル、録音]

1.~4.:
Lennie Tristano (p), Peter Ind (b), Jeff Morton (ds)
1954~55年、ニューヨークのホームスタジオでの録音。

5.~9.:

1955年6月11日、ニューヨーク、コンフュシャス・レストランでのライヴ録音。






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Last updated  2015年04月19日 20時52分17秒 コメントを書く


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