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このインディオは危険だと…――かつて初めて、トゥパク・アマルに会った時、アレッチェは明確に直観した。
しかし、今、目前にいるそれと同じインディオの目の色には、あの時以上の不気味な凄みが宿っていた。
アレッチェの目は、それが何かを必死で探るように、釘付けられる。
敢えて言葉にすれば、それは、狂気…――ではないのか?!
アレッチェは、そのような己の想念を振り払うようにして、再びトゥパク・アマルを見た。
一方、トゥパク・アマルはアレッチェの探るような眼差しを避けるように、「王陛下の御言葉は、承りました。それでは。」と、踵を返した。
「待て!」
すかさず、アレッチェが呼び止める。
トゥパク・アマルは、振り向かずに、ただ足を止めた。
「マキャベリズムの創始者の言葉を知っているかね?」
どこから湧いてきたのか分からぬアレッチェの不意な発言だったが、もはやトゥパク・アマルは一切の感情を殺したように、重い沈黙を守っている。
「彼は、被征服地の支配を安全にするためには、その国を支配していた王族の血統を抹殺することが必要だと述べている。
四等身に至るまで絶滅すべき、とね。」
相変わらずトゥパク・アマルは微動だにせず、聞いているのかいないのか、ただ、そこに後ろ姿のまま立っていた。
西日はすっかり傾き、部屋は既に薄闇に包まれている。
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