クラシック音楽リスナーの局(tsubone)

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December 22, 2005
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バッハ作曲の「イタリア協奏曲」はこのブログですでに取り上げましたが,知り合いのTさんから,Tさんはグレン・グールドのこの演奏がお気に入りというお話を伺いました.私はすでにバッハの「ゴールドベルク変奏曲」で録音年代の違うグールドの演奏を何枚か持っていましたので,なるほどグールドのイタリア協奏曲はどんな演奏なのか,と興味を持ちました.Tさんいわく,グールドの演奏は「3倍くらい速いですよ...」と.へぇ~,3倍!

それで早速グールドのCD(SICC326)を入手して聴いてみました.グールドは1955年5月からCBSレコードの専属になっています.「イタリア協奏曲」は1959年のステレオ録音です.このCDは最近出たもので,当時のアナログマスターテープから最新の方法でデジタル録音にオーサリングしているらしく,46年も前の録音とは思えないくらい生々しいいい音です.

さて,聴いてみて...まず,どの楽章も一音一音の音の粒がはっきりしています.それでいて,それぞれの声部の横のつながりも明確で旋律線が分断されることもありません.演奏の速さという意味では,1楽章,2楽章は,まあそれほど速いというわけではありませんでしたが,圧巻は3楽章のプレストでした.これまでよく聴いてきたリヒテルの演奏で3楽章の演奏時間が4分20秒ですが,グールドのは3分2秒です.3倍は大げさですが,この楽章は確かに速いですねぇ.それですごいと思うのは,これだけの速さで弾いても,タッチは正確だし,声部のつながりも明確でそれぞれがちゃんと聴こえてくる,という事実です.いや~恐れ入りました.何回か聴きかえしてみて,ピアニストのTさんがこの演奏に一目置いているという理由がなんとなくわかる気がしました.

ところでこの演奏を聴きながら,CD棚からグールド物を全部引っ張り出してきたら,直輸入版で「グールドの遺産2」というタイトルのCD(CXCO-1029)が出てきました.このなかにも「イタリア協奏曲」が入っていました.これは1952年の録音.CBSの専属になる前ですね.モノラル録音ですが,カナダのCBC放送でラジオ生放送をしたときのものをアセテート盤というものに放送と同時に記録したものをCD化したものだそうです.正直音質はあまりよくありません.ですが,グールドの熱さは伝わってきますし,上で書いた特徴はすでに聴こえてくる気がします.終楽章の速さは同じですが,しかし印象としては,59年のもののほうが,やはりこなれた感じがしました.

世界の人々がグールドの演奏を知るにいたって熱狂したのはCBSがグールドを発掘してレコードを世に出し,世界的な演奏活動を始めてからです.しかし,カナダの人々(彼はトロント生まれのカナダ人)は,そのように有名になる前から,放送を通じてグールドの存在を知っていた,ということがちょっと面白いと思いました.

それと有名な話ですが,グールドは1964年以降,ライブでの演奏活動はやめ,もっぱらスタジオにこもってレコード録音しかしなくなりました.このイタリア協奏曲は,まだスタジオにこもる前の,ライブをやっていた頃の演奏なわけですね...

以前にこの曲のことを書いたときに,いくつかの演奏者のCDを持っているとご紹介しました.第3楽章にしぼって改めて聴きなおして見ました.アンドラーシュ・シッフやファジル・サイの演奏は,こうして聴いてみるとモダンな感じで旋律をかなり歌ってしまっています.平板ではなくちゃんと音楽が聴こえていながら一直線なグールドの演奏を聴いた後では,こういうモダンな演奏はなんとなく気持ち悪い感じもしてきました.それにくらべるとリヒテルの演奏はそういう歌い方はなく,バッハがもともとチェンバロで演奏することを念頭に書いた曲であることが伝わる演奏ではあります.コープマンとヴァルハのはチェンバロによる演奏の録音ですが,3楽章はむしろしっかりしたテンポでどちらも4分20秒前後でした.

このグールドの「イタリア協奏曲」に,しばらくはまってしまうかも...

PianoForte
〔写真〕再びローマ楽器博物館にて.「ピアノフォルテ」の写真.歴史的には現代ピアノとチェンバロの中間に位置する楽器...のはず.~ん?ハンマー・クラビアとの関係は???





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Last updated  December 23, 2005 03:55:05 AM
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