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2020年06月25日
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おはようございます、ひなこです。




8月10日

ママは昨日の夜、又泣いてた。
電話でずーっと喋ってた。
時々泣きながら、「お願い、お願い、お願いよ」ってずっと言い続けてた。
そして、謝り続けて、泣いてた。
ママは前は泣いたりしてなかった。でも今は、いつも泣いてるのを耳にしてる。
今朝、ママの顔を見たら、目が腫れてた。
ママに家にいてもらいたくないから、僕はずっと、いつジョンに会いに行くのって聞いてた。
ママは、ちょっと家の掃除しないと、家の中が滅茶苦茶だって言った。
ママは僕に威張り散らし始めて、そして、まだ猫に餌をあげないのかって、聞いてきた。
僕はもうあげたって言った。だってママが出かけたらすぐナオミとゲームをして遊びたかったから。

又、長電話。それから、厚化粧やらなんやらで着飾って下りてきて、出かけてくるって言った。

家が滅茶苦茶だっていうのは、ママが言った通り。
クモの巣やらなんらやが、家中にある、今。

8月11日
僕がやりたいのかどうかはわからない。

キノコ採りみたいなもんだ。
キノコを採って食べるのは危険だ。だって、毒キノコがあるし、そうしたら毒にやられちゃう。

8月13日
今日の午後、ちょっとしたことが起こって、それ以降、僕はずっと変な気持ちがする。
説明するのは、ちょっと難しい、本当。
僕は台所にいて、ナオミとゲームをして遊んでいた。お皿から2、3センチの所で縄を引っ張って止めてたら、ドアに誰か来た。
すっごくびっくりして、どうしていいのか分からなかった。
固まっちゃってた。
ナオミは、縄につながれたまま前に行こうともがいてた。
ドアベルが又鳴って、だから僕はドアを開けに行った。
例の背の高いアメリカ人の兄ちゃんが二人いた。
ずっと微笑みながら、話す係の方が、お母さんは在宅かなって聞いた。
僕がいないと言うと、そいつはもう一人の連れの方を向いて、そいつが何かサインを出したはずだ。だって、僕の方を向いて、イエス様がどうしたとかそんな話をいきなり始めやがった。家々をまわって皆にイエス様が僕らを救済してくれるっていう吉報を伝えているんだって。
そういうことは、ママに会って言ってくれって言って僕はドアを閉めた。
台所に戻ると、ナオミのやつが気がおかしくなったみたいになって餌を食べてた。
僕はすごく腹が立って、ナオミの所へ行って、紐を引っ張って持ち上げた。高く持ち上げたから、ナオミは首つりみたいになった。
ここからが、本当に恐ろしいことになった。
だって、僕は本当にナオミを高く吊るしてたんだもの。僕の顔くらいの高さ。ナオミの体は、紐の先でくるっと回った感じになって、僕と向い合せになった。
太陽の光が丁度ナオミの顔に降り注いでいて、ナオミの眼はもう眼みたいに見えなくて、2つの平らなガラス板かなんかみたいだった。
それはすごく恐ろしくて、僕はすぐナオミを下に下ろした。
その時はすごく寒気がした。だから庭に行った。
今日は風がかなり強くて、雑誌が芝生の上に散らばっていた。

続く。





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最終更新日  2020年06月25日 08時55分54秒
[サー・カズオ・イシグロ作品の翻訳] カテゴリの最新記事


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