日本の宇宙開発研究機構(JAXA)を含め、海外からの研究者を発射の現場に立ち会わせ、
証人にしようというのがいかにも北朝鮮式だ。もちろんJAXAは断ったが。
今回の発射計画は先代の金正日時代からのもので、わずか29歳の後継者・金正恩の実績作りというわけではない。先代の遺訓をほごにし、
それで国内に異常が生じないなら、
新指導者の統率力を見せ付けるチャンスだとも考えられるが、
そんな大胆な発想や先代からの取り巻きを説得するような実力はなさそうだ。
ミサイル発射は北朝鮮にとっていくつかのメリットがある。
第1に、「衛星」を載せる長距離弾道ミサイルの射程は遠くグアムにも届くもので、米国を刺激するには十分なこと。
弾頭に核を載せれば、そのまま核ミサイルとなるからだ。
第2に、ミサイル発射が成功すれば、イランなどの顧客に性能を誇示でき、
貴重な外貨獲得の道が開ける。第3に、金日成生誕100周年である太陽節を祝い、国威発揚の場となる。
ただし、北朝鮮人民にとっては何のプラスもなく、
米国からの栄養支援など、各国からの支援が断ち切られるマイナス効果の方が大きい。
おりしも、3月26、27日、韓国・ソウルで核セキュリティ・サミットが開かれた。
本来は唯一の被爆国で福島第一原発問題を抱える日本が世界に発信するチャンスであったはずだが、野田首相は国内の国会審議を優先し、
とんぼ帰りでの参加とした。
二国間会談も立ち話程度だった。
首相や閣僚の外遊について、「国会軽視」とイチャモンをつけて野党が足止めすることはよくあったが、
今回は野党である自民党から「首相はサミットへしっかり参加すべきでは」との声があがったにもかかわらず、政府側から事前の根回し、必死の要請もなかった。
要は、消費税増税実現を最優先する野田首相の判断なのだろう。
核疑惑を抱えるイランをイスラエルがたたくかどうか、
それはいつかと世界は固唾をのんでいるところに、北のミサイル発射問題が加わった。
与党内の足並みの乱れから成立も見込めない消費税増税よりも、
ここは核サミットでの外交努力を優先すべきだったのではないだろうか。