野田総理におかれては、今一度、政権与党としての矜持をお考えいただきたい。党の分裂、党内の離反に怯え、国家として成すべき課題に集中できない政権の姿を、もうこれ以上国民に晒すべきではありません。
今こそこの混乱に終止符を打ち、もう一度強い日本を取り戻すことこそ、われわれ自由民主党に課せられた使命であります。私はその覚悟の上に、野田総理に基本的な政治姿勢についての質問をいたします。
2、臨時国会における課題
野田総理は8月8日、わが党の谷垣前総裁、そして国民の皆様に対して、「一体改革関連法案が成立した暁には、近いうちに国民の信を問う」と約束されました。先の総選挙における「消費税は上げない」との約束を180度変更するわけですから、当然その前に信を問わなければなりません。しかし、われわれは政局よりも政策。増大する社会保障費に対応する責任ある姿勢を示すべきとの観点から、野党である立場を越えて法案に賛成し、成立するに至りました。あれからもう3か月になろうとしています。この「近いうち解散」について、先の三党幹事長会談において「総理が具体的な新しい提案をする」と輿石幹事長が約束したにもかかわらず、総理からは未だ何の提案も頂いておりません。与党幹事長の言葉も鴻毛より軽い。総理は平然と国民との約束から逃げる。総理は観艦式の訓示において「至誠に悖る勿かりしか、言行に恥づる勿かりしか」と述べられました。国民のために命をかける自衛官に対して発せられた最高指揮官としての言葉は重い。その言葉に責任を持たねばなりません。総理、総理は自衛隊の諸君に対し、自らの言行を省みて恥ずかしくないのですか。総理は近いうちに解散すると間違いなく仰った。前原大臣は「総理は誠実な人、約束を絶対に守る人であるから年内に解散をする」と述べました。つまり、年内に解散をしなければ前原大臣にとっても不誠実な人となるわけです。さらには、総理は、参議院における自らへの問責決議を「重く受け止める」とも仰っています。改めて国民の前でお聞きします。総理は年内に解散する約束を果たすお気持ちがおありですか。至誠に悖る勿かりしか、誠実にお答えください。
。次は野田総理、あなたの番です。この臨時国会において「近いうちに国民に信を問う」という自らの国民との約束を果たさなければなりません。
3、民主党政権の総括等
1復旧・復興
2外交・安全保障
次に、外交・安全保障について伺います。この民主党政権下の3年間はまさに「外交敗北」の3年間であり、ひたすら国益を損ねてきました。
日中韓首脳会議においても、「今までややもすると米国に依存しすぎていた。アジアの一員としてアジアをもっと重視する政策をつくりあげていきたい」と発言され、米国からは、日米中の正三角形の関係を形成し、日米同盟を見直すものと受け止められました。
当時米国の知日派の元政府高官は「この人物は日米同盟の意味が分かっていない。私達にとって驚くべき発言だ」と私に述べました。日米同盟とは、日本が侵略されれば日本のために米国の若い兵士達が命を懸けるということであります。彼は「そのことを理解していない人物がリーダーを務める国のために命を賭けねばならない兵士はどう思うでしょうか」とも述べ、「中国の指導者は日米同盟の重要性を理解していない人物が総理になったことを驚きと歓迎をもって迎えたのではないか」とまで指摘しました。尖閣諸島の漁船衝突事件における政権の対応は目を覆うばかりでありました。おおよそ「国家安全保障」の考えが理解されていない。
外交無策の足元を見透かされる中で、韓国の李明博大統領やロシアのメドベージェフ大統領のわが国領土への不法上陸を許しました。これ以上、日本が諸外国から軽視され、国益を損なうことを見過ごす時間的余裕は日本国民には残されていません。
日本外交の再建のためには、まずは日米同盟を再構築し、その揺るぎない信頼関係を内外に示すことが第一であります。
総理、総理はまさに日米同盟を傷付けた元総理をこともあろうに外交担当の党の最高顧問に任命されました。原発事故対応を誤り混乱させた前総理も新エネルギー政策担当の最高顧問です。
これはブラックジョークでしょうか?そしてこの度の内閣においては、暴力団との関係が予てから噂されていた田中慶秋氏をあえて法務大臣に任命する。総理は一体何を意図してこうした人事をなさるのか、お伺いします。
経済政策
強い外交力は力強い経済力の裏打ちを要します。
中国をはじめとする昨今のわが国領土に対する挑発行為の頻発は、わが国経済の脆弱化の結果とも考えられます。この3年間、民主党政権の経済政策には、確固たる針路も戦略も欠如していました。株価は低迷を続け、歴史的水準で推移する円高状況はもはや企業の努力を越えており、それを放置する中で企業の海外移転を看過し続けました。また、 原発ゼロと温室効果ガス1990年比▲25%といった実現不可能かつ整合性のとれない、
夢だけを先行させたエネルギー政策を掲げ、安定的なエネルギー供給の確保に何ら具体策を示さずに経済成長を唱えるという、大いなる矛盾を抱え続けてきました。
なお、三党合意によって民主党政権の正統性と政権基盤は崩壊しました。社会保障制度改革は、国民に信を問い直し、その民意を受けた正統性と安定した基盤を備えた新たな政治体制の下で腰を据えて進めるべき問題と考えます。国民会議についても、単独で設置を強行しようとしたり、民主党の選挙対策のために新年金制度の議論を先行させたりすることがあれば、これは三党合意を踏みにじるものと付言させていただきます。
5教育
次に、教育再生について伺います。現在、教育は危機に直面しております。陰湿ないじめ、親による虐待、育児放棄といった凄惨な事件が起こる中で、家庭教育、そして学校教育に対する国民の自信と信頼が大きく揺らいでおります。私は、品格ある国家、社会を創り、世界から信頼され、敬愛される国を創りたいと思います。誰もが日本に生まれたことを喜び、誇りに思うことができる国創りを目指してまいります。しかしそれは、日本に生まれてきた子供達全員がそれぞれの夢を実現する力と機会を与えられた結果でしか実現しません。その目標は、すべての子供達に高い学力と規範意識を身に付ける機会を保障することであり、5年前に制定された新しい教育基本法には「公共の精神」「道徳心」「国や郷土を愛する心」「職業教育・環境教育・家庭教育」などが盛り込まれています。
民主党は、教員免許更新制の抜本的見直しをマニフェストに掲げるとともに、教員の指導力強化と学力・体力の向上を図るための全国統一学力テスト等を廃止するなど、教員の質の監視、教育の評価の機会を自ら摘み取り、教育の再生に向けた歩みを徹底的に止めようとしております。
教員が違法な選挙活動を行い、裏金を民主党の候補者に渡すという信じがたい出来事も起きております。そしてその多くは、日本の歴史・伝統・文化を否定し、国旗・国歌に反対する日教組との関係によるものと言っても過言ではありません。
高い道徳力と学習意欲の構築は、国家発展の基盤であります。公平中立、そして正義感と子供への愛情にあふれる教師の背中で、子供達は伸び伸びと失敗を恐れず挑戦し、そして自ら学んでいくのです。そして、オリンピックの時だけでなく、自然に国歌を奏で、歌う。そんな教育現場の実現に向けて、われわれ自民党はもう一度全身全霊を捧げる用意があります。
野田総理、総理自らの教育観はあまり聞いたことがありませんが、教育再生についての私の所見に対するお考えを伺います。
4、おわりに
最後に野田総理、私は敢えて申し上げたい。
総理は、所信表明演説の中で、「あした」や「あす」という言葉を何回も用いて、責任を果たすと述べられた。政治空白を作って、政策に停滞をもたらしてはいけないとも述べられた。しかし、一度「解散」を約束した政権は、その存在自体が政治空白だということを肝に銘じていただきたい。もう、これ以上、日本人の美徳と品格を傷付けないでいただきたい。それが野田総理、あなたの責任です。
日本は黄昏を迎えていると評論する人達がいます。それは間違いです。未来は私たちが何をするかにかかっています。所信で述べられた様に、沈む夕日のセンチメンタリズムに浸っている暇はありません。今、求めるべきは、人々に活力をもたらす光輝く朝日です。
私達、自由民主党には成長戦略があります。地に足のついた未来を見据えたエネルギー政策があります。私達は働く人達の為に、日々の生活に不安を抱く人達の為に、子供達の為に、力強い経済を取り戻す事ができます。
日本が主権を回復して今年の4月28日で60年目を迎えました。本来であれば60年前、7年間の占領時代に作られた仕組みを見直すべきでした。しかしそれをしなかったが為に今、様々な問題が私達の前に立ち塞がっています。国民の生命、財産と日本の誇りを守る為、今こそ憲法改正を含め、戦後体制の鎖を断ち切らなければなりません。われわれの伝統と文化の上に、瑞々しい新しい日本を創ることができるのは、われわれ自由民主党です。
野田総理、一日の仕事を終えて仰ぐ夕日の美しさに感動する時を迎えているのは総理自身です。解散・総選挙を行い、その結果、国民の信を得た政権によってこそ、強力な経済、外交政策を推進することが出来ます。そして日本は輝ける新しい朝を迎えます。その為に、総理の決断を求め、質問を終わります。(以上)