読書日和 ~Topo di biblioteca~

読書日和 ~Topo di biblioteca~

2005.07.22
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血が繋がっているからといって必ず湧き上がってくるものでもない。
まして、未来永劫それが存在し続けると保証される訳でもない。

柊は幸いなことに、親から「ひもじい」なんて気持ちを
覚えさせられたことはありません。
「弟の方がより可愛がられている!」なんて僻んだことは多々あったけど、
それは姉弟で取り合うだけの愛情がちゃんと与えられていたことの
証拠だったかもしれないです。
(きっと弟は弟で、「姉ばかりずるい」と思っていたと思うし。)


そんなニュースを多く目にするようになって来た昨今。
「児童虐待」「育児放棄」…どうしてだろう。どうなってるんだろう、って思います。

でも、その一方で、周りにいるみんなが当たり前の顔して享受しているものを
得られずに、(得るだけでなく、与えることも出来ない、ということに)
惨めな思いを感じる気持ちも知っています。

柊の場合、それは親の愛情ではなく、「友達」だったのですが。

柊は転校ばかり繰り返していたからか、
喧嘩をしても翌日には仲直りできる…と信じてる、ずっと友達でいられる…と
信じてる友達同士の会話が無性に嘘っぽく聞こえて、それでいて
羨ましかった時期がありました。
緊張せずに、話しかけることが出来る(それが当たり前、という)同級生たちの

「ありがとうー」とか照れもなく、屈託なく言える人に違和感を覚えてました。

またまた話は飛びますが。
以前、新聞の読者投稿欄にこんな記事を見つけた時はショックでした。
なかなか子供に恵まれず、親戚からの「まだ?」の何気ない質問にストレスを
感じているという女性からの投稿で、

憎らしい気持ちが湧いてくるのを自分でもどうすることも出来ない。」という内容でした。

記事を目にした頃、丁度柊は歩みを覚え始めた子供達を連れて、公園に散歩に
行くのを日課にしていた時期だったので一層ショックでした。
柊にもどうしようもないことですし、(まさか家に閉じこもるわけにもいかない)
でも、そんな目で自分たちを見ている人が身近にもいるかもしれないという
やり切れなさが歯痒くて仕方がなかった…。

無いものねだり…とは違うのです。
周りが自然にやり取りしているものを、どうして自分は誰かに与えたり、受け取ったり
することが出来ないんだろうという、そんな疑問を持つことはすごく寂しいことです。
(寂しさをぶつける為に弱者を傷つけることは許されないことですが。)

そんな傷を癒やそうと思ったら、自分が先ず与える側にまわる勇気を持つことが
必要なのかもしれません。
人間は(柊は)どうしたって僻んだり、あるいはけちだったり?するので
自分が得られなかったものを、与える、ということに躊躇してしまいがちです。
自信がないので、迷ってしまいがちです。

だけど自分を「愛されなかった人間」だと僻むことより、
「愛することも出来なかった人間」だと悔やむ方が、後悔が大きいように思います。

てるてるあした

  親が夜逃げしたために高校進学すら諦めて、遠い親戚が住むという
  「佐々良」という町にやってきた照代。
  自分の居場所、自分の将来が見えなくて、連絡のつかない両親がいつ
  自分を迎えに来てくれるのかという不安に押しつぶされそうになる日々。

  そんな彼女の元に差出人不明のメールが届き、女の子の幽霊が…。
  謎が解ける時、照代を包む温かな真実が明らかになる。(bk1紹介文より)

「佐々良」というのは不思議な町。
そこで出会う様々な人との出会いや、出来事が少しずつ照代の気持ちに
変化をもたらしていきます。
単純に照代の気持ちが癒やされていく…というわけではないけれど。
徐々に彼女の気持ちが前に、明日に向いていく過程は、読んでいる方にも
じんわりじんわり伝わってくるものがあると思います。
うううん、きっとある!

『ささら さや』の姉妹編ということで、ファンタジックな連作ミステリを想像して
読み始めたんだけど…いい意味で予想を裏切られました。
こういう展開が待っているとは…。

最後に、印象に残った部分を抜書きします。

 「本はいいよ。特に、どうしようもなく哀しくて泣きたくなったようなとき、本の中で
 登場人物の誰かが泣いていたりすると、ほっとするんだ。
 ああ、ここにも哀しみを抱えた人がいるってね。(中略)
 小説なんて絵空事で嘘っぱちだから、現実に誰かが泣いているわけじゃないって
 我に返ることだってある。それでもやっぱり、ほっとするんだ。
 泣きたくなるようなことがあったら、試してごらんよ。
 長い人生、そんな気分になることだっていっぱいあるだろうからね。」

著者の加納さんの、読者への気持ちが込められているような気がして、
何だか泣けてしまうのです。









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最終更新日  2005.07.22 23:23:58 コメント(2) | コメントを書く


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