読書日和 ~Topo di biblioteca~

読書日和 ~Topo di biblioteca~

2006.07.24
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著者である中山さんはどうして、こういう物語を書かれたんだろう。
音楽(ましてモーツァルト)と聴けば、癒やしや励まし、勇気付けられる、
そんなイメージを抱く人が多いことでしょう。

でも人を癒す筈の音楽も、悪魔がそれを利用すれば人を傷つける道具にしてしまう。

『ケッヘル』下巻を読んでいたとき、
ナチスドイツがユダヤ人をガス室に送る際に優雅なクラッシック音楽の演奏を
聴かせた…という話を思い出しました。
演奏させられたのは確か同じユダヤ人ではなかったでしょうか。
自分がガス室送りにならないよう、必死で演奏させられた…と。


戦後、解放された後も精神的苦痛から音楽を弾く事はもちろん、聴くこともできなくなる。

何でそんな残酷なことを人は出来てしまうんだろうー…と。

この話を教えられたときに感じた憤りとやり切れなさを、
この「ケッヘル」を読んでいる最中にもまざまざと思い出してしまいました…。



ケッヘル 上 ケッヘル 下

   放浪に倦んだ伽椰は、海峡の町で出会った男に職を斡旋される。
   それはおそるべき復讐劇の始まりだった(文芸春秋HP内容紹介より)


先日の日記 はちょうど上巻を読了した時点で書いたものだったのですが
下巻、まさかこんな急展開が待ち受けているとは予想もしていませんでした。

モーツァルト、特に「レクイエム」や「ジュピター」などはじっとりと
トラウマになってしまってしばらく聴けそうにありません。


その曲を聴けば、とある登場人物の悪意を思い出してしまいそうで、怖い。
駄目です。怖ろしくてとても聴けない。

モーツァルトの音楽が優雅であればあるほど、切ないほど、
その効果を増してくるところがいっそう怖いのです。

どうして?どうしてこういう物語を?


もちろんモーツァルトはこの物語にとって核となる大切な素材であり、
物語全体を通して語りかけたいことは柊の抱いた感想とは
まったく別のところにある、というのはわかるのですが…。

物語の結末は決して救いがないわけではないけれど、それでもやっぱり哀しい。

モーツァルト…柊はときどき聴きますが、柊はこの物語に出てくるような筋金入りの
モーツァルティアンにはやっぱりなれそうもないです…。

実は柊はモーツァルトよりベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキー、
バッハの方が好みだったりします~








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最終更新日  2006.07.24 22:44:28
コメント(8) | コメントを書く


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Re:『ケッヘル』(上)(下)中山可穂著 読みました。(07/24)  
arsha  さん
W.A.モーツァルトの音楽は、世間一般的には人や
動物を癒すとか育てるとか色々言われていますが、
私の大学の先生はその妄信的な考えに異を唱えてらっしゃいました。
モーツァルトは天上の音楽を目指していて、自分の作品に満足せず、
苦悩しながら作曲していたとその先生は言われていました。
『アマデウス』とか映画やドラマやドキュメンタリーなどでは、
天才だから湯水のように音楽が湧いてきて、
何の苦労もなく作曲されていたように描かれますが、
本当は天才だからこそ、いつも完璧な物を求めて
苦悩していたと聞きました。
なので結構ベートーヴェンなどよりも複雑でドロドロしたものが
音楽の根底にあるんじゃないかなぁって私は思ってます。。

この作品は読んでないので何とも言えませんが、
もしかしたらこの著者さんはそこまでW.A.モーツァルトの音楽を掘り下げて聴いてらっしゃるのかもしれませんね~。。


(2006.07.24 23:03:58)

Re:『ケッヘル』(上)(下)中山可穂著 読みました。(07/24)  
kayokorin  さん
昨日の日記を拝見して、
上下巻の装丁を見て、これはぜひ読んでみたい・・・と
図書館にリクエストしようとメモっていたのですが
今日の日記を拝見して 三歩ぐらい後ずさりしてしまいました(笑)
ちょっと今読むのは怖いかな・・・。
(2006.07.24 23:04:14)

Re:『ケッヘル』(上)(下)中山可穂著 読みました。(07/24)  
「ケッヘル」ってタイトルなんだ とちょっと興味があったのですが、
うーん、そういう感想だとひるみます。

私もモーツァルトがあんまり好きではありません。
ピアノを習ってた時に弾けた曲はどれも単調な感じで、
弾いてても面白くなかった覚えがあります。
もう少し続けて、難曲が弾けるようになったら違ってたかもしれませんけど。
(2006.07.25 08:41:20)

Re[1]:『ケッヘル』(上)(下)中山可穂著 読みました。(07/24)  
柊♪  さん
arshaさんへ

>天才だから湯水のように音楽が湧いてきて、
>何の苦労もなく作曲されていたように描かれますが、
>本当は天才だからこそ、いつも完璧な物を求めて
>苦悩していたと聞きました。
>なので結構ベートーヴェンなどよりも複雑でドロドロしたものが
>音楽の根底にあるんじゃないかなぁって私は思ってます。。

優雅で軽やかな旋律のなかに時折顔を見せる短調、その寂しさや哀しさが聴き取れるようになると
モーツァルトに嵌ってしまう…というようなことを評論家の宇野功芳さんは著書で語ってました。
柊もそうなんだろうなあ、と思います。

>この作品は読んでないので何とも言えませんが、
>もしかしたらこの著者さんはそこまでW.A.モーツァルトの音楽を掘り下げて聴いてらっしゃるのかもしれませんね~。。

中山さんの綴るモーツァルトの音楽(表現)は素晴らしくて、
読んでいるとどれも実際に聴いてみたくなるものばかりです。
作中で読むに耐えない事件が起きたりもするのですが
それでも最後にはやはり音楽によって救われる部分もあるのだと
訴えられている気がします。
でも全ての人がそんなふうに思ったり感じたりするわけじゃない、というところに
哀しさを感じてしまったりするのでした^^;
(2006.07.25 19:38:51)

Re[1]:『ケッヘル』(上)(下)中山可穂著 読みました。(07/24)  
柊♪  さん
kayokorinさんへ

>昨日の日記を拝見して、
>上下巻の装丁を見て、これはぜひ読んでみたい・・・と
>図書館にリクエストしようとメモっていたのですが
>今日の日記を拝見して 三歩ぐらい後ずさりしてしまいました(笑)
>ちょっと今読むのは怖いかな・・・。

すいませんー。後ずさりさせてしまって^^;
上巻の部分は本当、モーツァルトの音楽について語られる文章が素敵で
どれも聴いてみたくてたまらない衝動に駆り立てられたんですが…。
モーツァルトの音楽が好きだ、という人には後半の展開はとても酷かもしれません。
読むのに勇気がいるかもしれません。
(北村薫さんの作品は大好きだけど『盤上の敵』だけは二度と読めない…というのにこの作品は似てます。)

でも一日たって冷静に受け止めてみるとやっぱり著者はモーツァルトの音楽を
とても愛しているんだろうな、って思えます。
物語は現在から過去へさかのぼっていくわけですが、それを考えるとこれは
どんなに辛い事件が過去にあったとしても最後には音楽によって救われた人々の物語なのかも、と
読めますしね。

ただ作品の影響を受けやすい人ならこれを読んだあとしばらくは
モーツァルトの「レクイエム」や「ジュピター」なんかは聴けなくなっちゃうかもしれないので
(それはとっても悲しいことだと思うので)
柊的には強力推しは出来ない作品ですねー(笑) (2006.07.25 19:51:58)

Re[1]:『ケッヘル』(上)(下)中山可穂著 読みました。(07/24)  
柊♪  さん
☆なほまる★さんへ

>「ケッヘル」ってタイトルなんだ とちょっと興味があったのですが、
>うーん、そういう感想だとひるみます。

すいません、ひるませてしまって^^;

>私もモーツァルトがあんまり好きではありません。
>ピアノを習ってた時に弾けた曲はどれも単調な感じで、
>弾いてても面白くなかった覚えがあります。
>もう少し続けて、難曲が弾けるようになったら違ってたかもしれませんけど。

モーツァルト、嫌いではないんですけどね…。
柊は聴き込み方が足りないのかもしれません(笑)
優雅~な感じよりどどーん、としたものの方が性に合うような…!?あはは。
(2006.07.25 19:57:08)

Re:『ケッヘル』(上)(下)中山可穂著 読みました。(07/24)  
machirun  さん
ほう~。参考になりますね。
私は最近モーツァルトばかり聴いてますが、名前はわからないんです。笑。調べようともしないし;
ただ曲を聴いているという感じ。
本との相乗効果って思っている以上にあるのかもしれませんねぇ。 (2006.07.25 20:53:20)

Re[1]:『ケッヘル』(上)(下)中山可穂著 読みました。(07/24)  
柊♪  さん
machirunさんへ

>本との相乗効果って思っている以上にあるのかもしれませんねぇ。

あると思います☆
上巻を読んでいたときには著者の中山さん監修で、この『ケッヘル』に登場する曲を集めた
モーツァルトのCDが出てもいいのになあ、なんて思ったんですが後半はきつかったです…^^; (2006.07.26 17:45:28)

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