一人のひと
ひとりの 男 を通して
たくさんの異性に逢いました
男のやさしさも こわさも
弱々しさも 強さも
だめさ加減や ずるさも
育ててくれた厳しい先生も
かわいい幼児も
美しさも
信じられないポカでさえ
見せるともなく全部見せて下さいました
二十五年間
見るともなく全部見てきました
なんて豊かなことだったでしょう
たくさんの 男 を知りながら
ついに一人の異性にさえ逢えない 女 も多いのに
*恋しい人だけどすべてが素晴らしかった訳ではない。ダメさ加減もずるさも見てきた。可愛い幼児性や信じられないようなポカもやった人間性を見せてくれた。それでも愛おしい。みるとはなしにみんな見てきた。
自分は一人の男しか知らないがその男を通じて大勢の異性を知ることができた。世の中にはいっぱい男と付き合いながら、あるいは何十年と結婚生活を送りながら一人の異性にも逢えない人もいる中でこんなに大勢の異性と逢うことが出来て幸せだったと詠んでいる。
おのろけだが本当のことだと思う。結婚していながら相手をよく知らないままそれぞれ死んでいく夫婦も多い中でこれほどよく理解しあった夫婦はいないのではないかと思った。
同僚の先生は医局で隣席だったので宮沢賢治や井伏鱒二、茨木のり子などの詩人や作家、アフガンで井戸を掘ったり灌漑用水路を作った中村哲医師などを紹介して下さって図書館から借りてきた本を又貸しして下さったりした。お蔭で随分勉強させて頂いたが、明日からはもういらっしゃらないので一抹の寂しさを感ずる。
図書館から借りてきた本をまた貸ししてくれる人がいなくなったので、これからは自分で自分を豊かにしてくれる詩人とか小説家を探していかなければならないなと思っている。
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