佐藤 錦

佐藤 錦

2005/01/01
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情けない話、年末に過労で倒れた。
風呂に入っていると重心が定まらなくなり、気がつくと救急隊がいた。
自宅に救急車がきたのである。
なぜここまで働くのかと言われたが、誰も倒れることは予想していないはずである。


ショックであった。情けなかった。

何とかせねば気持ちの切り替えができない。
以前から セブかプーケットに行こうと言っていて、妻とのスケジュールが合わずダ
ラダラしていた。
普通、こういう時、家族は健康を気遣い、家にいることを勧めると思う。

出発の前日、自分にやけになっていた私は、旅行など現実のものとして考えてもい
ず、ひとり大阪へ遊びに行っていた。
そのため、荷造りに時間がかかり、午前0時から4時の間、高速をETCで通過すれば3割
引なのに、起床したのは、午前5時をまわっていた。

普通、旅をするときは、リーズナブルながらその中で最高のものをチョイスするか
ら、宿の選択なども時間をかける。だから、都内や箱根、名古屋・大阪のホテルには
詳しい。
南紀白浜の高級リゾートホテルには、1部屋2万円以上は使っていない。

今回は前述の通りであるから、まことにいい加減極まりなかった。
どこに行こうかわからない。
ただ、妻が八甲田だか八幡平に行きたいというから、ネットで適当に引き出してプリ

ただし、このプリントアウトが、後々とても役に立つことになる。
後は、コンビニで適当に見繕った雑誌を2冊。

東名川崎ICまでの道は、混んでいた。
ただし、仕事ではないのである。
急ぐことは無い。

今日の目的地を小岩井農場とする。

竹橋を過ぎるとクルマの流れが変わり、空いてきた。
タイヤはスタットレスだから、下手に飛ばすと角が減る。
だから、煽られても抜かされても、若いときのようにレースはしない。
白河を過ぎても雪はなく、快適な道すがらなのだが、ここ数日の遊びが祟って、猛烈
に眠い。
もともとが2時間おきに休んでいたが、この度は休むたびに睡眠がはいった。
とてもしっかりと。
その結果、昼になっても郡山である。
ラッキーだったのは、磐越道は右も左もチェーン規制がかかっていたのに、真ん中を
突っ切る東北道は雪さえも降っていなかった。
ここで、コンビニで買った雑誌登場。
温泉が肌触り別に分類されている。
目に留まったのが、ヌルヌルうなぎ系温泉。
その浴室の写真も風情がありよかった。

ヌルヌル系の温泉は、山梨の天目山温泉、たがねの湯、玉川温泉が凄かった。
それで満足していた。
そして雑誌が賞賛していた鳴子温泉は、温度が低いと聞いたことがある。
以前、足を痛めた折、増冨ラジウム温泉に行ったのだが、温泉というより鉱泉のそれ
は温度が低く、結果風邪をひき散々な目に遭った。
でも、時間的なことを考えると悠長なことは言っていられない。
仙台ならロイヤルパークホテルやニューワールドホテルなど、価格の割りに部屋の広
いホテルを何故か知っている。何故か・・だったが、隣に妻がいたこともあり、止めておいた。

古い宿であった。
食事もひとり1万円にしては・・・である。
ただし、共同ではあるものの部屋を出てすぐのところにあるトイレはリニューアルさ
れており、悉く清潔極まりない。
大便器もTOTOのしっかりとした新製品が備え付けられており、ウォームレットウォッ
シュレットである。
強いて言うなれば、ウォッシュレットがリモコン仕様でないのが惜しまれる。
客は高い金を払いリラックスをしにくる。
そういう細かなことが客を呼ぶのである。

ゆさや旅館・・鳴子でも老舗の温泉宿である。
宿の大浴場に入ってみた。
雑誌のとおりである。
当たり前のことだが、本来はこの発想がいけないのだろう。
ヨーロッパの旅人は日本人のこの感覚を嫌う。
点から点のポイントだけを満喫する日本人のスタイルに対し、ヨーロッパの旅人は移
動中の車窓も旅のうちという考えを持っている。
基準を自分に戻し、改めて大浴場。
2つの浴槽がある。
ひとつはより濃い源泉なのであろう、水道からホースが引いてあり、水でうすめてい
る。
大きいエメラルドグリーンの湯に入る。
熱い!
温いのではなかったのか。
よく見ると注意書き。
「表面が非常に熱くなっておりますから、十分にかき混ぜてお入りください。」

納得。

近くにあった家庭用の掻き回し棒で、表面と底面を万面無く掻く。
すると、丁度よい温度になり、ゆっくりと入る。
硫黄の臭気がする。
しかし、ヌルヌル感はない。

してやられた。

見た目はトロリとしている。
しかし、前述の山梨の温泉には程遠い。

年末に倒れたとき、意識を失って顔面から倒れたのであろう。
口の中を結構切っていた。
タオルが血まみれになったほどである。
大阪へ行き、疲れが功を奏し、その傷がすべて見事に口内炎になった。
顔の形が腫れで変形したほどである。

温泉に浸かりながら、急に飲用の効能という文字を思い出し、湯を口に含みうがいを
してみた。
痛いだろう 滲みるだろうなぁと ビクビクものであったが、思うように食事が取れ
ず、膿が口をまわり悪循環であったので、藁をも掴む思いであった。

滲みない。

しかも、うがいをする度に痛みや腫れが見る見る引いていく。

嘘だろ ?

紛れも無い事実なのであった。

風呂に入る前には顔半分が腫れていて、夕食が憂鬱だったのに、部屋に戻ったときは
ルンルン気分であった。

ゆさや旅館は古い旅館である。
その建物は、何でも文化財に指定されているのだと、妻が聞いていた。

勿体無いポイントがいくつもある。

・料理がありきたりであり、宿の料金にそぐわない。
・階段などのカーペットはいつ変えたものなのであろうか。客にとって建物の古さは
気にならなくとも、メンテナンス
 の仕方で客をどう見ているかが判断される。
・折角良い泉質の浴室を持っているのに、洗い場の前のタイルが取れたまま放置して
ある。
 硫黄泉だから鉄類や石類に手がかかるのは当たり前である。勿体無い。
・客は我々1組ではなかったにせよ、仲居が1人。しかも接客教育がされていない。
 ならば、なぜ女将が出てこないのか。

食事の後、大浴場は女性用となるので、無料券をもらい、隣の滝の湯に入ってみた。

造りはゆさやのそれより古く、風情がありよいのであるが、泉質はゆさや旅館の大浴
場のもののほうが断然いい。ちなみに口に含んでうがいをしてみたものの、口内炎は
云とも寸とも変化なかった。

宿の湯から上がると肌がいつのまにかツルツルしており、雑誌のトップを飾っていた
わけがわかった。

翌日、鳴子は大雪であった。
大阪で口を痛めながらお好み焼きを食べたのが嘘のように 腫れもほとんど引き、東
北道を一路、岩手に向かい快走である。

ゆさや旅館・・その気になれば全国でも有数の行列のできる旅館になるのに・・・。








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Last updated  2005/06/14 05:22:44 AM
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