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2008.03.02
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カテゴリ: lovesick
式場のあるホテルに着くと、まずは、宗太郎の柳井家の控え室に行って挨拶する。宗太郎は、一応、紋付を着ていたが、なんでか、、、こう、、しゃきっとしないんだよな、、一応は、整えてあるけど、やっぱりその長髪と髭のせいなのか?それとも、、隠しきれない内面の問題?とか思っていると、宗太郎がこちらを向き、

という。おっと。。
「いや、よく似合うな~って思ってただけだよ。今日は、ほんとおめでと」
「そうか?ならいいけど、、ありがとう。お前も、楓と、早くこういうカッコできるように、がんばれや、ははは」
と行ってしまう、宗太郎。ハ、、ハイテンション過ぎる。。。俺たちの状態なんて、全く見えてない感じ。演技の必要もなくてラクだけど。楓を見ると、同じように呆れ顔で、宗太郎を見送っていた。目が合う。
「彩の家の方、いくか?」
頷く楓。ちょっと緊張した顔。仕方ない、悟さんのご両親でもあるんだから。俺はそっと肩に手を添えて促す。
行本家の控え室の中に入ると、一瞬の沈黙。みんなが、楓を見て驚き、でも、すぐに懐かしそうに温かく受け入れていた。悟さんと、楓を知っている人たち。そして、彩のお母さんがこちらに来てくれる。

楓と一緒に頭を下げる。後ろから、お父さんらしい人が来て、
「楓、よくきたな。嬉しいよ。なあ、母さん」
「ええ、それに、とっても綺麗だわ。広川さんも、幸せね」
と俺にいうお母さん。いや、、もう、、と、こんなところで深刻に言うわけにもいかず、
「はい。確かに」
と微笑んで答える。お父さんは、初めてこちらを向いて、
「ああ、あなたが、、。なるほど、確かに、あの刑事さんですね。はじめまして、彩の父です。いつも宗太郎と、彩がお世話になっています」
「いえ、そんな。こちらがお世話になっているばかりで。今日はおめでとうございます。」
「ありがとうございます。2人が無事に今日の日を迎えることができて本当に喜んでいます」
挨拶していると、お母さんが、楓の持っている荷物に目をやり、
「あ、それが、そうなの?ごめんね、彩が無理言って」

「なんですか?」
と俺も聞く。
「彩が、楓に頼んだんですよ。サンドイッチ。花嫁は披露宴であんまり食べられないから、お色直しの時に食べるんですって。楓の作るのが一番おいしいって」
楓はこちらを向いて微笑む。
「そうだったのか、なんだろうって思ってたんだ。たしかに楓のサンドイッチ、うまいですよ。」

「彩の控え室はこっちなの、楓が、直接渡してあげてくれる?」
楓は頷いて、俺を振り返ってから、お母さんについていく。
お父さんは、2人を見送ってから、少し黙っていたが、こちらを向いて、
「あなたが、楓の今の?」
今の?に続く言葉は曖昧だが、恋人かどうかを尋ねられたのかと、
「いや、、、こちらの完全な片思いなんです。僕はとにかく好きだっていい続けてるんですが、楓はなかなか簡単には、うんとは言ってくれなくて。・・・悟さんには、全然かなわないみたいです」
謙吾にも、、だけど。。とにかく、出会ってからずっと思ってきたことをいうと、お父さんは、温かい目になって、
「楓はね、昔からなかなかがんこなところがありますが、悟はもういないんだから、早く、他の人を探して、ちゃんと幸せになるべきですよ。楓をよろしくお願いします。」
俺は、もう絶望的なんだけど、、と思いつつ、
「楓さえその気になってくれれば、僕はいつでも、そのつもりでいます」
と答えた。本当は、楓には、、謙吾がいますからって、、答えるべきだったのかな。
それから、俺は俺に気づいた彩の親戚らしい子供たちと写真を撮ったり、遊んだりしていた。(みんな、ヒーロー番組は見てるんだな。)

楓はしばらく帰ってこなかった。俺はひとり、廊下に出た。
そして、見つけた。廊下の突き当たり、窓際の広くなったスペースで、窓の外の空を見上げている、楓の後姿。多分、今日という日に、悟さんを想っている後姿。
俺が、そっと近づくと、ゆっくりとこちらを振り返る楓。その目は、現実に引き戻されたように揺れる。ごめんな、俺が俺で。。悟さんじゃなくて。
俺は、心のままに、楓の肩を抱いた。楓も、そっと俺にもたれかかる。愛しくて愛しくて仕方ない楓。このまま、ずっと、抱いていたいよ。手に少し力を込める。
でも、楓、俺がこうして抱いていても、今、楓の心にあるのは、悟さんのこと。今日は、そう、特別な日だから。それにしても、えらいよ、泣かずにいられるようになったなんて。しっかり1人で立っている楓。もう、俺の手なんて、いらないんだよな。楓は、やっと、本当に、過去から抜け出せたんだ。俺、ちょっとは手伝えたかな?もしも、そうなら、嬉しいよ。

そう、未来を向いた楓の目に映るのが、ギリギリ滑り込んできた、謙吾なんだとしても。


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最終更新日  2008.03.02 00:22:30
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