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おはこんばんちは、ひろ。です。「first kiss」完結しました~。懲りずに最後までお付き合いいただきましたこと、感謝いたします。本当にありがとうございました。なんか例によって、勢いでチャプター1をあげて、翌日からいきなり、さあ、どうしよう、って感じでした。それに、今回は、途中で、ひろ。自身、若干不安定になっちゃって、中断なんかしちゃったりしたので、書き上げられて、本当にほっとしています。ご心配おかけしてすいませんでした。今はもう、大丈夫です。本当に。どのくらい大丈夫って、ヒロトに似た田中さんの画像をネットで探し回れるくらいです(笑)。(特にこの石成さんのとこにある写真が今のとこベストワンです。)多分、スガバンドのライブも行くかな~。で、田中さんだけを見る。かも。(オイ)大丈夫大丈夫ほんと。最初はあまりに似ていて驚いて不安定になったけれど、今はもう、こんな偶然を楽しむ域に到着です。それはこのことをきっかけに、実生活が、より安定したからかな、と、思います。さて、「first kiss」。大体のストーリーは決めていたんだけど、思いつくままに書いてたら、途中思いがけず、2人の距離が離れすぎちゃったり。。しかも、決めていたはずの重要な解決方法に、書いてる途中で急に迷ってきちゃったり。。というのも、体頼み、、というかエロ寄りの解決、ありなのかな~??って、思っちゃって。これは多分、ひろ。が女だからかな。。なんか、書きつつも、めちゃくちゃ、葛藤しましたが、心がちゃんとついてきてれば、ありかな、と思い切って書きました。結構、みなさんの反応にドキドキしてたんですが、概ね好評に受け入れてもらえたようでよかったです。恋人同士には、傍から見たらどうよ?っていうような方法でも、当事者同士にしかわかんない、ぴったりの仲直り方法がありますもんね。ともかくも、ケースケなりに考えた結果、、ですから、悪く取らないで、受け入れてやってください。(笑)次のお話。来週くらいからアップできたらな~と思っています。(1文字もかけてないくせにっ!)最後にもう一度、今回も完結までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。ながさわ ひろ。~書きながらよく使っていたBGM~シンクロ、鱗、nobody knows←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.29
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とっても久しぶりの、深い深い眠りから目覚めた私。だけど、自分の今いる場所のあまりに心地いい感触に、身動きができない。・・どこ、、だっけ?一瞬そんなこと、思ってしまったりする。そんなこと、分かりきってるのに。私が心から安らげる場所。ここは、ケースケの腕の中。やっと戻ってこれたんだ。安堵と幸せに、深く息をつく。その場所から、夕べのことを一つ一つ思い出す。・・・きっと、ケースケ、、わざと、あんな風に私をイヂメて。・・ウマイな。。なんか、まんまと、、はめられちゃったな。でも、いやな気持ちにはならない。きっと、私のために。そう、きっと、本当は、ケースケだって、不安だったはず。駆け引き。。なんて、らしくない方法を選んでまで、私を、取り戻そうとしてくれた。そのことが純粋に嬉しい。ずっとずっと拒否してしまっていたケースケの体。でも、ずっと焦がれていたケースケの体。私をまた、しっかりと包み込んでくれている。・・・てか、しっかり過ぎだし!ちょっと、抱きしめ方キツいよ?・・多分、きっと、2度と離したくないって思ってくれてるのかな?私は、肩に回されたケースケの腕を、そっとそっと外して体を起こし、姿勢をかえる。私はケースケの寝顔を見つめた。ありがと、ケースケ。・・・・キスシーンが放送される日、ケースケも家にいた。なんだかそわそわしてるし。「なあ、飲みに行かない?」なんて言ってるし。全く。もっとどーんっとしてて欲しいよ。「なんで?飲みになんか行かないよ。ドラマ始まっちゃうじゃん」「・・・見るの?」「見るよ。だって連ドラだよ?ストーリーだって気になるし。それに・・」「それに?」「ちゃんと見れなくちゃ、、意味ないよ」ケースケは、小さくため息をついて、私を見つめる。この間の意地悪のお返しに聞いちゃう。じーっと睨んで。「なに?なんか疚しいことでもあるの?」「ないよっ。あるわけないだろ?」必死で即否定。かわいいな、ケースケ。口を尖らして言うケースケ。「・・いつもと同じだよ、ただ、恥ずかしいんだよ、ドラマ、目の前で見られんの。緊張するし」ケースケ、本当に、うまいのに。いつも、こんなこと言うんだよね。ったく、子供じゃないんだからさ。「一緒に見たくないなら、出かけてくれば?」って言ってやる。「まさか。そばにいるよ」ケースケはソファに座って私の肩を抱く。ぎこちない手つき。どこまで緊張してんだか。で、肝心のそのシーン。肩に置かれたケースケの手に力が入る。確かに、情熱的に見える。テレビの中の二人は、違和感なく愛し合っているように見える。ケースケ、相変わらず、うまい。だけど。。画面がCMに変わって、私はつぶやく。「全然。。。違う。。。。」ケースケは私の耳元の髪に触れながら返事する。「ああ。」全然、違う。私にいつもしてくれるキスと。愛情の量が。情熱の温度が。当たり前のことだけど、これは、仕事なんだ。演技なんだ。スムーズに理解できる。見て、、よかった。静かに胸をなでおろした私に、ケースケが優しく伝える。「違うだろ?・・でも、それが、分かるのは世界中でミリだけだよ。これは、ミリだけにしかしないキスなんだから」そういって優しく、、でも、くらくらするほどの愛情のこもったキスをしてくれるケースケ。キスだけじゃなく、もっともっと、その先を期待してしまった、、のに。ケースケは私を離して、悪戯な目つきをしていう。「ミリも、してよ、あのキス。最高だった」私も、同じように笑って言う。「また、・・いつか、ね?」「なんだよ~、、」がっかりしたように、肩を落として俯いたケースケ。でも、一瞬後、「ま、いいや。じゃあ、いつもどおり」そういって、私を激しく抱き寄せて、キスをする。「、、ちょっと、、まだ、ドラマ、終わってないのに」「ミリ、見てて、いいよ。。俺、勝手にやっとくから」そう言って、私の服を脱がせ始めるケースケ。「・・バカ」そんなことされたら、テレビなんて、、観てられるわけないよ。ケースケの動きに、強く飲み込まれながら、私は思う。いつもいつも私を求めるケースケ。こっちから求める様な、隙も、ヒマも、全然ない。私がまた、あんな風にケースケを求めるのは、きっと、ずっと、先になるのかな?でも、ねえ、ケースケ。ケースケが、この先、何度キスシーンを繰り返しても、私、もう不安にならない。その度に私が口付けて上書きするよ。ずっとずっと。そう、きっと。人生最後の、、last kissまで。<了>←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.24
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後ろ手にドアを閉め、溜息をつく。ごめん、ミリ。俺だって実家になんて帰りたくないんだ。一瞬だって離れたくない。だけど俺、ミリを早く抱きしめたい。・・だから、だよ?エントランスを出、実家に向かうため、公園の方に歩き出す。途中、噴水に腰掛ける。心の中で、ヒロトに話しかける。なあ、兄貴、俺、間違ってないよな?大丈夫だよな?ミリと。。そこで、ケータイが鳴りだす。一瞬ドキッとしたけれど、それはミリからの着信音。・・もう?早いな。・・ミリも相当、限界だったんだ。俺は、微笑んで、でも、急いで電話に出る。「ミリ?」沈黙・・。いや、泣いてる?しゃくりあげる音。「どした?泣いてんの?」どしたもこしたもないよな?俺が泣かしたんだ。ミリは小さな声で、「ね。。何もしないから帰ってきて」そんなこと言うミリが、どうしようもなく可愛く愛しく思える。苦笑し、「どっちのセリフだよ。すぐ戻るから、待ってろ。な?」急いで戻りながら思う。ミリからの電話。予想より早かったけど、展開的には予定通り。・・でも、まだ、終わりじゃない。ドアを開けるとすぐそこにミリが座っていた。「ただいま」「お、かえり」見上げる潤んだ目。完全に泣き声、口はへの字になってるし。「そんなとこ座って、何してんだよ。ほら」俺は手を差し出す。だけど、ミリは掴まない。しゃがんでミリを見つめながら聞く。「なあ、ミリ、・・俺、何か変わったか?」視線を逸らさせないように、しっかり見つめて、もう一度聞く。「俺、確かに他の人とキスしたよ。だけど、それで何か、変わっちゃったか?」俺の瞳には、ミリへの変わらない想いが溢れているはずだ。これまで通り、いや、お預けを食った分、きっとこれまで以上に熱く強く。緩く首を振るミリ。「じゃあ、俺のこと、もう一度、ちゃんと受け入れてくれよ」ミリは、俺を見つめながら、少し首を振り、顔を歪め、、「・・ごめん、私、なんで・・?」俺は微笑む。素直なミリ。いいよ、十分だよ。「それでも一緒にいて欲しいのか?さっきも言ったけど、襲っちゃうかも知れないぞ?」「・・ケースケは、そんなこと絶対しないもん」あ~、先手打ったつもりだったのに、返り討ちにあった気分。読まれてる。確かに絶対しないよ。ミリが嫌がるなら。無理矢理ヤるのも荒療治の1つとしてはいいかも、だけど。ってつい思ってしまってから、その鬼畜な考えを頭から追い出す。「ったく、一生俺にガマンさせたって当たり前って思ってんだろ」そう言った俺に文句ありげに、でも、黙って唇を尖らせるミリ。「わかったよ。実家に帰るのやめる。さ、リビングに行こ」言葉だけで促して、独り言みたいにぼやく。「でも、もう、何日目だっけ。これ以上、そばにいてもできなくて、ガマンしきれなかったらどうすっかな。どうせ、ミリが一生触らせても、させてもくれないなら、、どっかで誰かと」ミリが、後ろで足を止めた。俺は振り返って笑う。「・・冗談だよ?」「ひどい~っ」「ごめんごめん。冗談冗談」あっさりとだけ謝ってリビングに入る。ミリはまだ、怒ってるみたいだったけど、それ以上何も言わなかった。ミリがパスタ、俺がサラダを作って、久しぶりの一緒の食卓。ぎこちなかった空気も、食卓では、すっかり日常を取り戻し、自然にほどけていく。楽しそうに話すミリ。(てか、聞けば、またあの新谷と飯食ってたし。今度は、お父さんも一緒だったらしいけど。思っきり面白くねえって顔してやった。オトナゲないな、俺。)ただ、会話を交わすだけで、その笑顔を見るだけで、随分癒される。食後もいつも通り、俺は、ソファで台本を読み、ミリはパソコン。俺は、ミリが一緒に眠れないこと気にしないで済む様に、先に寝ることにする。「俺、もう寝るわ」そのままソファに横になると、驚いたようにミリが、「今日も、ここで寝るの?」そんなこと言われたら俺だって驚く。「だって、触っちゃダメなんだろ?まだ」言いながら、ミリの体に手を伸ばすと、やっぱり磁石の反発のように体を捩って逃げてるし。俺は笑って、リモコンで電気を消し、「おやすみ」と言った。ミリはしばらくそこにいたけれど、結局、寝室に行った。目を閉じ、今夜のやりとりを思い出してみる。・・上出来だろう、多分。こんな感じで、ミリを少しずつ・・。でも、あんまり不安にさせ過ぎちゃダメだから、さじ加減が難しいよな、なんて考えつつ。。そして、一瞬眠りに誘われた、と思った次の瞬間、ミリの気配をすぐそばに感じ、目を開けた。いつからそこにいたんだろう。ソファの前に座って、俺を見つめている。「ミリ・・?」呼びかけると、薄闇の中、ミリが、「何もしないから、、私も、ここで眠っていい?」俺は、また苦笑して、「何もしないからって、、ミリさ、我慢するのこっちなんだぞ?」ミリは、泣きそうに顔をゆがめて、「だって、さみしいんだもん。そばにいたい。床でいいから、ね?」「そんなことさせられないよ。和室行く?」ミリは、それには答えず、ポツリと呟く。「・・本当に、、他の人と、しちゃう?」そんなに気にしてたんだ。俺は微笑んで、「しないよ」「・・本当に?」縋るような問いかけに、またイヂメ心で。「多分」「っ!」「冗談だよ」「笑えないっ」「ごめん。絶対、しないよ」「・・ケースケ」「なに?」「綺麗な人と、・・キスして、心、揺れた?」「まさか。・・ちゃんと分かってるだろ?」微かにうなずいたミリ。俺は聞く。「それでも、体は受け付けてくれないんだ?」「・・自分でも、分からないの。体が勝手に」「いいよ。ミリ。ミリが受け入れられないなら、仕方ないよ。だって」俺はそこで言葉を切る。さ、一気にカタをつけるか。「?」「だって、元々、ミリが、俺を欲しがったわけじゃないもんな。俺がミリを欲しくて欲しくて、それでやっと受け入れてくれたんだもんな」「そんなことっ」「・・実際、愛してるって言われたこともあんまりないし、キスだってミリからは一度もない。Hだって、したがってくれたことないし」「それは、、だって、ケースケが・・」俺は取り合わず、続ける。「俺は、俺の心も、俺の体も全部を使ってミリを欲しがってきた。求めてきた。そうせずにはいられなかったから。でも、ミリはそうじゃなかった。キスシーンのことがショックなのは分かる。傷つけて悪いと思ってる。だけど、ずっと拒否されて、俺、段々自信がなくなってきた。・・ミリは、俺のこと、愛してないのかなって。ただ、守ってくれる、ミリを望んでくれる相手がいれば誰でもいいのかなって」「・・なんでそんなこと・」「なあ、ミリ。俺が、他の女としてもいい?」「ヤだ」「そこは即答なんだ。・・じゃあ、俺のこと、欲しい?」「・・って?」「心は、今も全部ミリのものだよ。でも、体は、、宙ぶらりんだろ?」「・・・」俺は笑って、「そこは即答じゃないのか。・・ま、いいや。俺は、ミリを愛してるから、他の女を抱いたりはしない。抱けない。だけど、もうミリが、このまま俺の体受け入れてくれないならなら・・」「?」俺は最後の追い討ちをかける。「俺がこの先、キスするのも抱きしめるのももう、ろくに知りもしない女優さん達だけになるな~。あ、そういえば、今、俺の唇、最後の感触はミリじゃなくて、。。・・ッっ」感触を思い出すフリをしかけた俺に、突然、ミリは、思いっきり抱きついて、キスしてきた。それも、くらくらするような、濃厚なキス。すげーっ、ミリっ。やればできるんじゃんっ。、、久々のミリの感触。・・下半身にまでキいちゃうよ。エロ心に支配されそうになりながらも、心底、本当に心の底まで、ほっとする。あ゛~~っ、よかった。ミリが俺の中に戻ってきてくれて。こうしてミリの中にあるはずの俺への愛情、俺の仕事への気遣いから、素直に出せなかった嫉妬心を、しっかりと刺激することが、俺のこと、「受け入れる」というよりも、「奪い返す」気持ちにさせることが、元通りになるための、近道だって思ったんだ。危険な賭け、だったけど。一歩間違えば、完全に嫌われたかも。でも、ま、、結果オーライ。いつものことだ。心の奥底で、ホっとしている間にも、濃厚さを増すミリのキス。抱きしめてぇ~っ。だけど、俺は、拳を握り締め、我慢する。唇を離し、「他の人とのキスのことなんて、私が忘れさせるもんっ」顔をすぐそばに近づけたまま、俺の頬に手を添えて言うミリに、俺は笑って、「・・そんなの最初から、覚えてないよ」ミリは、不満そうに、「・・なんで、、抱きしめてくれないの?」俺は、わざと両腕をミリから遠く離して、「腕も体もスネてんだよ。あんなに拒絶されたから」「もうっ」俺は、ミリの乱れた髪を耳にかけてやりながら、エロい目で見て言ってやる。最後の仕上げ。「ミリ、俺をもっと欲しがれよ。体ごと、ミリに、求められたい。愛されてるって感じたい。俺のこと、芝居に、仕事に、キスの相手に取られたくないと思うなら、自分で取り返せよ。そして、もう二度と離さないって言え」「・・イヂワル」可愛く睨んでそういってから、ミリはまた我慢できないように、俺にキスをする。「誰にも、何にも、渡さないよ、ケースケのこと」「分かってる。俺は、最初から最後まで、ミリだけのもんだもんな?・・・ほら、体も欲しがってやって。体にも、求められてること分からせてやってくれよ」そういってやると、ミリは恥かしそうに微笑んでから、体ごと俺の上に覆いかぶさり、唇に頬に耳に首に肩に胸に、そしてもっとその先に、俺の服をそっと脱がせては、指を、唇をずらしていく。いい子だ、ミリ。俺はそっと頭を撫ぜ、恥ずかしそうな、でも、必死で初々しいその動きに、身を任せる。「ねぇ、もう、、これ以上、どうしたらいいのか、・・分かんない、、。ねぇ、して?」ミリが、限界まで頑張って囁く。俺は、やっと我慢を解き、心のままに全身でミリを求める。たちまち可愛い声をあげ始めるミリ。俺は堪らず、下になったまま、ミリの下着をずらし、中に入って突き上げた。「ぁあんっ、ケ、、スケ」体を反らそうとするミリの腰を強く引き寄せる。それでも逃れようとするミリが俺を刺激する。しっかりと腰を抱えてやると、自然に、でも、ぎこちなく、動き出すミリ。切ない吐息とともに。ああっっ、たまんね、ヤバイ。俺は、ミリの中に入ったまま上になり、主導権を奪い返す。深く深くミリの奥に入る。久々の、そして、あまりの快感に、歯を食いしばって。だけどそのガマンもほんの束の間だった。ミリが、俺の背中に手を回し、しがみついて・・。そして、俺も後を追う様に・・。ミリは、息を切らしたまま、俺に抱きついて、もう一度キスをした。「ケースケ。愛してる。。」最高の、言葉まで添えて。「俺も愛してるよ、ミリ」腕の中、あっという間に眠ってしまうミリを、愛しさのあまり抱き寄せる。可愛い寝顔。ずっと寝不足だったんだもんな。やっと腕の中に戻ってきたミリ。守るべきミリの寝顔を取り戻せた安堵の中、俺も、急速に眠りに落ちていく。ミリ、俺、きっと、一生忘れられないよ、ミリからの、first kiss。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.23
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14 ~ケースケ~ first kissミリが出て行った音を聞いて、俺は目を開けた。寝転んだままの体勢で、大きくため息をつく。今日はミリ、自分から、俺のすぐそばに来てくれた。寝顔を見つめてくれた。でも、俺には触れられずに・・・。そのためらいを、葛藤を、濃厚に感じた。少しでも、俺に触れてくれたら、すぐに抱きしめようと思っていたけど。・・・だけど、いいよ。無関心になられてるわけじゃない。俺だって、ミリの寝顔を見ながら、葛藤した。ミリに触れたい。抱き寄せたい。抱きしめたい。キスしたい、キスだけじゃなくて、もっともっと、いろんなことしたい。だけど、、やっぱり、ミリの意思に反しては、できなかった。寝顔だけ見詰め合う俺達。心は、寄り添っているのに。体は、、拒絶、、されてる。あ~、、、、、、、、まだ、恋人じゃなくて、ただ、添い寝、だった頃と、どっちがマシなんだろう?。。。考えたって仕方ないよな。。くだらない比較を頭から追い出す。まだ時間は早かったけれど、俺は思い切り伸びをしてから、起きることにした。そして、ダイニングテーブルの上に、ミリからのメモ。『ケースケ、おはよ。毎日お疲れ様。体、、大丈夫?朝食作っておいたから、時間があったら、食べて行ってね。行ってきます。 ミリ。』俺はミリの用意してくれた朝食をしっかりと食べながら、、、何度もそのメモを読み返す。愛してる、、は、ないんだよな。。、今の状況なら、、、当たり前、、か。。いや、てか、こうなる前から、・・・なかったっけ?・・うん、なかった。そうだよな、いっつも、いっつも、俺だけが、、愛してるって。ミリから愛してるなんて言ってもらえたこと、ほんと、ほとんど、ない。。ような。。キスだって、抱き寄せるのだって、求めるのだって、いつも全部俺から、、で。。俺が、、俺から、しすぎ、、なのかなあ。。だって、ミリの顔見るだけで、もう、隙さえあればすぐに、抱きしめてキスしたくなっちゃうからな。。あ~、だめだっ。頭を振って、妄想を追い出す。顔見てなくても、思い出すだけで・・じゃないか、と、苦笑する。ミリの作った朝食。野菜もたっぷりで、うまい。きっと、俺の体のこと考えてくれてる、ミリの愛情だらけだからだよな。そう、ミリは、、今も、きっと、俺を愛してるはずなんだ。こんなに拒絶され続けていても、それだけは、確信できる。だったら・・・・、俺は思う。兄貴の死んだ後は、ミリが俺を選んでくれるまで、ただの添い寝で気長に2年も待ったけれど、もしかして、またそんなに?、なんて、思うだけで、ぞっとする。てか、もう、ミリの唇も、吐息も、全部を知ってしまった俺には、ガマンなんて、到底無理な話だよ。まして、ミリの心は今も俺にあるのに。体だけの拒絶・・・。こうなったら、荒療治でいくか。ミリ、覚悟しとけよ。と、思いつつ、俺もそれなりに、覚悟を決める。俺は、食事を終え、いつもどおり片付けながら、もしかしたら、「危険」かもしれない賭けのことを考えていた。×××××××××××××××××××××××××××15 ~ミリ~ first kiss私がベッドに入ってから帰ってくるケースケ。そして、目覚める前に出かけるケースケ。それ以外の日は、私は無理に用事をつくってでかけたりして・・。寝顔を見つめ合う以外、全く顔を合わせない日々が続いたある夜。部屋に帰ると、遅く帰るとメモを残していたはずの、ケースケがいた。ソファに寝転んで台本を読んでいる。寝転んだ首をこちらに向けて、にっこり、「お帰り」といわれ、でも、私の方は笑うこともできずに、すごく、ぎこちなく、「ただいま・・。早かったの、、ね?」といった。「ああ、今日は、予定より早く終わったんだ」前なら、すぐに駆け寄ってきてくれて、抱き寄せてキスをしてくれたけれど。それは、、今は、ないままで。ケースケはソファに起き上がるだけで、こちらにはこない。私は、自分勝手なこと、よく分かってるけど、哀しくなる。あのベッドでケースケの手を「イヤ」って拒絶した夜以来、ケースケは、もう、私に、手を伸ばそうともしない。伸ばされても受け入れられないんだから、、一緒なんだけど。。。そのこと、ケースケもきっとよく分かってるんだろうな。。結局、すれ違いが続いて、、、というより、私がすれ違いを続けて、、ろくな会話もないままだった。ただ、顔を合わさず、会話もなく、お互いに触れることもない、生活。。メモとメールをやりとりするだけの日々。ケースケ、何も言わないけれど、、、もう、このままでいいと思ってるのかな。。私は、、このままじゃ、、。。このまま、、いつか、ケースケの心まで離れてしまったら。。。そんなこと、耐えられるはずがない。だけど、今だって、ケースケの手も体も、もちろんキスも、受け入れられるようになったとは思えないから、私からは、、どうしようも、、なくて。。だからって、私、、ケースケに、、どうして欲しいのかな。。ただ、何か、、きっかけが欲しい。キスシーンのこと、吹っ切るきっかけが。。。だって、ケースケを失うことなんて、、、できないもん。ぼんやり考え込んでいたら、ケースケが、すぐそばに来ていた。「ミリ?」突然近くに感じて、つい、後ずさる。頭では、また傷つけちゃうから、いけないっ、って思ったけど、体が勝手に。ケースケは、私の反応を見て、自分も半歩下がった。手を胸の前でこちらに向けて広げて言う。「ごめん。驚かせちゃった?近づきすぎた?何もする気ないよ。大丈夫だよ。触らないから」私は、申し訳なくて、俯いたまま、で、何も言えない。ケースケは、そのまま少し離れた場所から、私をもう一度呼んだ。「ミリ」私は、顔を上げた。私を優しく見下ろす微笑んだケースケの瞳。声が、、うまく出ない。ケースケが話し出す。「ミリ、俺、今夜から、実家で寝るよ」「・・・・ぇ?」声になるかならないかのか細い声しかでない。ケースケは、優しく微笑んだまま、「ミリが、、あんまり辛そうだから・・。だから、しばらく実家に帰るよ。そうしたら、ミリももう、眠れないのに寝たフリしたり、用もないのに、出かけたりしなくて済むだろ?ミリ、もっと、体、休ませなきゃ」ケースケは、、全部、、分かって。。私が、、、ケースケと顔を合わすのを避けていたこと。。私は一体、ケースケをどれだけ傷つけてきたんだろう。余りの申し訳なさに、私は目を閉じた。ケースケは、静かに続ける。「ミリ、俺、正直、、どうしたらいいか分かんないんだ。今のミリに、、何をしてやればいいのか。・・ただ、ミリを前にすると、バカみたいに、何度も愛してるって言ったり、抱き寄せたり抱きしめたり、キスしたり、ミリにそういうことしたいってしか思いつかないんだ。今だって、そんな不安そうな、泣き出しそうな顔見ると、抱きしめたくて、大丈夫だって、ずっと背中撫ぜてやりたくて。。だけど、ミリがそれを望んでないならできない。、、してやれない。だから、せめて、、、そんな顔させてる原因の、俺自身を、ミリの前から、取り除くよ」ケースケ、、、。唇が震える。顔から血の気が引いていく。「ごめん。辛いこと全てから、ミリを守ってやりたいのに。その原因が俺じゃ、、離れてやることしか、、ないんだよな。・・って、こんな言い方じゃ、まるで、別れ話みたいか。・・違うよ?ミリが、、俺のこと、受け入れられるようになったら、すぐに戻るから。」ケースケの言葉が、耳を流れていく。ケースケは、ふっと笑って、「・・さっきは、えらそうに、ミリが辛そうだから、なんていったけど。ほんというと、俺も、、辛いんだ。そばにいるのに、触れられないこと」話しながらケースケは、一歩ずつそっとそっと私に近づいて、そっと私に手を伸ばす。そして、私の髪に、頬に、肩に、触れないように、そっと手をかざして動かす。体が硬直する私。拒絶ではなく、・・・快感で。・・・触れられてもいないのに、どうして、こんなに感じるの?ケースケに、触れられたい。ただ、もう一歩だけ、、前に出ればいいのに。・・でも、足は動かない。、、、怖い。また拒絶して、傷つけてしまったら。。。?ケースケは優しい声で続ける。「もう、、そろそろ、ガマンできそうにないんだ。、、前は、ずっと添い寝だけで、ガマンできてたのにな。あんなの嘘みたいだよ。俺、自分を抑えられなくなるのが怖いんだよ」ケースケは手を握り締めて、自分の体にそって下におろした。「隣の部屋で寝てたって、俺の心も、、体も、ミリをずっと求めてる。だから、、、このままだと、ミリに、、無理矢理、、ヤっちゃいそうで。・・だから、ミリ。俺、実家に帰る。もう、これ以上、ミリを苦しめたくないんだ。」何も答えられない私に、ケースケは、「愛してるよ、ミリ。俺の気持ちは、絶対に、変わらない。ずっと、ずっと、待ってるから。俺に、、会いたくなったら、いつでも、連絡して。夜中でも、飛んでくるよ。そんな日が、きっと来るって信じてる。・・それだけ、ちゃんと顔を見て言いたかったんだ。」そう言って、笑って、、、「じゃ、な。ちゃんと飯、食えよ?」ケースケは、部屋を、出て行った。私は、呆然とその場に立ち尽くす。立ち去ろうとするケースケの大きな背中に飛びつけたら。しがみついて、行かないでって、大声で泣けたら。だけどだけど、ケースケの体に触れること。それがどうしてもできなくて。でも、やだ。ケースケ、やだよ。ケースケのいない部屋で眠るなんて。一人ぼっちでここにいるなんて。こんな風に離れ離れになったら、私たち。。ケースケの気持ちだって、体だって。。置いてかないで、ケースケ。体も全部消えてしまって、心だけぽつんと取り残されたような気持ちになる。気づけば、私は、子供みたいに声をあげて泣いていた。ひとりぼっちの部屋で。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.22
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ベッドに入っても全然眠れなかった。ずっとケースケと、今のドラマの相手役の女優さんがキスするシーンが頭の中に浮かんできて。あんなにきれいな人とキスしたんだ。バカみたいにそればっかり。ケースケがきっともうすぐ隣に入ってくるのに。泣いたりしちゃいけないって、思えば思うほど、涙が溢れてくる。しゃくりあげてしまうほどに。ケースケが部屋に近づく気配を感じて、私は必死で息をつめる。疲れてるはずのケースケに、これ以上、心配かけられない。せめて、ケースケが寝るまでは、私もちゃんと寝たふりをしなくちゃ。。できるはず。くたくたなケースケは、きっとすぐに眠ってしまうはずだから。布団にしっかりつかまって、深呼吸する。そして、入ってきたケースケも、しばらくは私を見つめてる気配、、でも、そっと私に触れないように、横になった。あと、少し。・・・あと、少し、、、だったのに、こらえきれずに漏らしてしまったしゃくり声に、ケースケが反応した。そっと伸ばされた優しい手。・・だけど、、、やっぱり、拒絶してしまって。「ミリ、、愛してる」いつもどおり、優しくケースケが告げてくれる。ベッドで背中で聞きながら、私はしゃくりあげてしまうのを必死で止めようと手で口を塞いでいた。ケースケは、静かに部屋を出て行った。ソファで寝るんだ。。。私は口から手を離し、布団にもぐった。声を殺して泣き続ける。泣き止むことなんてできない。・・・どうして、「イヤ」なんて言ってしまったんだろう。私は、、、、ケースケを傷つけた。それなのに、あんなに優しく、「愛してる」なんて。どんな思いで、この部屋を出て行ったの?どんな思いで、1人で眠っているの?ごめんね、、、ごめんなさい、、ケースケ。私だって愛してる。思い切り叫びたいくらい。なのに。とまらない涙。とまるはずない。いつも受け止めてくれるはずのケースケの腕の中に飛び込めないんだから。涙に溺れながら、私はいつの間にか眠っていた。・・・そして、目が覚めたら、いつもどおり、ケースケは出かけた後だった。ソファにたたまれたブランケット。ダイニングテーブルの上には、ケースケからのメモ。「おはよ。今日もミリのこと、思いっきり愛してるよ。泣かせてごめん。愛してるしか言えないんだ。ごめんな。ミリ、きっと寝不足だよな?きっと目も腫れてるだろ?せめて、ちゃんと飯食って出かけるんだゾ。行ってくる。今日も多分遅いけど、俺はソファで寝るから、安心して先に眠ってていいよ。 ケースケ」きっと辛いのに、変わらず、優しいケースケ。気付けば頬を涙が伝っていた。ケースケの優しさに触れて。でも、今日も遅いと言う言葉に、すれ違う生活に、涙を隠さずに済むと、ほっとしてしまった自分が悲しい。でも、『ソファで寝るから、安心していいよ』なんて・・。そんなこと言わせてしまってる自分だって悲しい。頭の中、とってもとっても矛盾を抱えている。頭が混乱してくる。心が不安定になってくる。・・・1人で、、いちゃダメだ。早目に、学校に行こう。私は、ケースケの言いつけどおり、しっかりと朝食をとってから家を出た。その夜、本当に遅く帰ってきたケースケは、またベッドで寝たフリをしていた私の顔を、しばらく見つめてから、「ミリ、愛してるよ、・・・おやすみ」と囁くようにいって、寝室を出て行った。私は、その声に、安心して眠ることができた。翌朝、珍しく、ケースケはまだ眠っていた。本当にまたソファで。ダイニングテーブルの上に、私宛のメモ。『ミリ、おはよ。今日も愛してるよ。俺、多分、、寝てるよな?今日、俺、11時に出ればいいから、寝かせといて。目覚ましかけてるから、大丈夫だよ。ミリは、今日も学校かな?気をつけて。 ケースケ』私は、足音を潜めて、そっと、ケースケに近づく。ソファからだらりと下がった手の先には、台本が落ちていた。拾い上げてサイドテーブルに置く。手もこんな状態じゃ、、辛そうだけど、、触れられない。。何度も触ろうとしてみるけれど、でも、できない。私は、、小さなため息をついて、、ケースケの寝顔を見つめる。夕べ、、ううん、夕べだけでなく、いつもケースケが私にそうしてくれるように。ケースケ、私も愛してるよ。・・なのに、なんで。。。?・・ううん、なのに、じゃなくて、、、、だから、なのかな。どうしても、、ケースケに触れるのが、、辛い。触れられるのが、、辛い。その日は、特に出かけなきゃいけない予定はなかったけれど、2人分の朝食を作り、1人で静かに食事を済ませると、メモを残して、私は家を出た。すれ違っていれば、、、顔を合わさなければ、、拒絶してしまって、、ケースケを傷つけることもない。だけど、こんなのは、、、逃げだよね。自分でも、よく分かってる。私、、こんな風に、最愛の人を避けて生きていくの?一体いつまで?目的もなく歩き始めながら、答えが出ない問いが頭の中をぐるぐると回っていた。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.21
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ミリの体から半径1メートルくらいの拒絶のオーラが出てる。俺を振り返りもせず、ふらふらと歩き出す後姿。部屋についても、いつものキスも受け取ってくれる素振りすらない。目も合わさずにシャワーを浴びに行って、そのまま寝室に消えたミリ。俺はしばらく、ミリが消えたドアをただ、見つめていた。そして、こらえきれずに、イスに座ったまま顔を覆って大きく息を吐き出す。まずは、直接的に、ミリから拒絶されていることが辛い。ミリが傷ついていること、苦しんでいること、頭では理解できるのに、やっぱりミリの態度は辛い。そして、もちろん、ドアの向こうで、ベッドの中で、きっと、泣いているんだろうミリを思って辛い。・・・なあ、ミリ、俺、今のお前に何してやれる?碓氷さんは、ミリの気持ちの整理がつくのを待つしかないって言ってたけど、、ほんとにそれしかないのかな。気持ちの整理なんて、、つくんだろうか?俺のこと、イヤになったまんま、、、いつかは、、さっきの新谷みたいなヤツに・・・。そんな風に思ってしまって、俺はいてもたってもいられなくなる。すぐにミリを抱きしめたくなる。寝室のドアに手をかけて、、でも、俺は開けられない。きっと、、、拒絶されるだろう。ミリは、、拒絶することだって、きっと辛いはずなんだ。さっきの自分でも驚いたような顔。せめて何か言葉を、、そう思っても、どんな思いつく言葉も、ミリを包めそうにはない。やっぱり、、そっとしておくしかないのかな・・・。俺はドアから手を離す。シャワーを浴びながら考える。ミリを抱きしめることをためらう日がくるなんて。ミリにキスすることをためらう日がくるなんて。泣いてるミリに声をかけることすらできないなんて。一体、、俺、何やってんだ・・・。シャワーから上がり寝室に行く。ベッドまで行って、ふとんの中、身動きしないミリをみて、ほっと息をつく。眠れてる・・・?あの酔いがミリを眠りに誘い込んでくれたのか。少なくとも眠っている間は、苦痛から逃れられているかな。。隣で眠ってもいいかな?俺はミリを起こしてしまわないように、触れないように、静かに、隣に入る。眠れそうにはなかったけれど、目を閉じ、・・・だけど、ミリの、しゃくりあげるような息遣いに気づいて起き上がる。「・・・ミリ、、起きてるのか?」答えない。だけど、ほんのわずか肩が震えている。泣いてるんだ。。。俺はつい、手を伸ばしてしまう。だけど、手がミリに触れるか触れないかの時に、ミリが小さく叫んだ。「ィヤっ」俺は手を引っ込める。ミリの体が硬直しているのが分かる。明確な言葉での拒絶。俺は、・・甘んじて受けるしかないだろう。心の中はぐちゃぐちゃになったけれど、俺は優しく、静かに伝える。「・・分かったよ」布団の上から、2,3度ポンポンと叩いてから、俺はベッドから出て、立ち上がる。身動きしないミリの背中に、「・・・だけど、ミリ。俺が愛してるのは、ミリだけだよ。ミリ、、愛してる」それだけ告げて、俺はドアを閉め、リビングのソファでクッションを枕にして横になった。ミリ、俺が愛してるのは、愛せるのは、ミリだけだよ。傷つけてゴメン。その傷を癒してもやれなくてゴメン。ただ、愛してる。そう、伝え続けることしか、今の俺には思いつかないよ。どんな言い訳も、きっと意味がない。ただ、俺の目にはミリしか映らないこと、伝えることしかできないんだ。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.20
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「今日・・だったんだ」ケースケが申し訳なさそうに、そうつぶやいたとき、なんだか、目の前が真っ白になっちゃった。ケースケは、今、私が新谷先生と歩いていただけで、、ヤキモチやいた、、よね?だけど、私は、ケースケが他の人とキスしても、ヤキモチやくとこじゃないんだよね?ヤいちゃいけないんだよね?ケースケが他の人と唇を重ねた。そう考えるだけで。胸がひどく熱くなって。苦しくて。怒ってるのか、悲しんでるのか、泣きたいのか、叫びたいのか、、自分でも分からない。血の気が引いて、ただ立っているとガタガタ震えそうで。とにかく、、帰ろう。そう思って、、一歩踏み出した時、よろけて。。。だけど、ケースケの腕に助けられるの、瞬間的に拒否してしまった。さっき、、、受け入れるって決めたばかりなのに。だけど、現実に、他の女の人とキスをしてきたんだと思うと、途端にそんな決意も揺らいでしまう。私って、ほんと、へちょい。ケースケが、私の反応に凍りついている気配を感じる。自分だって、自分で驚いている顔をしているのも分かる。・・・だけど、どうしようもなくて。受け入れなくちゃって、がんばらなくちゃって思ったって、全然、全然、無理。だから、もう、そのままケースケのほうは振り返らずに、先に歩き出した。部屋に帰ると、私は、いつものケースケの小さなキスも、受け取らなかった。受け取れなかった。どうしようもなくて、思いっきり酔ったふりをした。酔いなんて完全にさめているのに。「あ~。なんか、酔っ払っちゃった。。シャワー先、浴びてもい?すぐに眠りたい」って無理やり、シャワーを浴びにいく。私なんて、所詮、素人。酔ったふりなんて、、、できているはずがない。バレバレ。だけど、ケースケの反応なんて確認できない。いつもより、シャワーを熱く強くして、その中に入る。一人になると耐え切れずに、私は顔を覆って、しゃがみこんだ。涙がどんどん溢れる。シャワーに流されるから丁度いい。嗚咽が漏れる。シャワーの音にかき消されるから丁度いい。ケースケ。。ケースケが他の人にくちづけたんだ。私は自分の唇に触れながら思う。私の唇はケースケだけの、、ものなのに。。他の人にキスした唇で、、また私にもキスするの?・・・そんなの、、、、、、、、耐えられない。頭では、分かってるのに。ケースケの心には私しかいないこと。だけど、、現実に、リアルにキスのこと考えてしまうと、やっぱり、、、ダメ。大好きなのに、愛してるのに、、、頭から必死で心に呼びかけても、拒否反応は収まらない。もう、何も考えたくない。シャワーから出ると、私は、頭からバスタオルを被ったまま、ケースケと目も合わさずに、「おやすみ」と告げ、寝室に入り、ベッドにもぐりこんだ。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.19
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一体誰かは分からないけれど、俺だって、いつまでもぼーっと、見守っているつもりはない。ミリに向かって、気持ち足早に歩き出した時に、ミリがよろけるのが見えた。あ、あぶねっ。駆け寄ろうとして、隣の男がミリを抱きとめるのを目にする。てか、触んなよっ、大体抱いてる時間、長すぎるだろ、離せよって、思った時、ミリが顔をあげその男を見あげた。男が左手でミリの腰をだきながら、右手をそっとミリの頭の方に上げようとするのが見える。まさか、、、抱き寄せて、、、キスする気かよ?させるかよっ。「ミリ!」俺が、叫ぶと、ミリが、ふわりとこちらを向いた。男も同時に。俺は男が動きを止めたのを見て、ゆっくりと近づいていく。ミリはやっと力を抜いたらしい男の腕から離れ、俺の方に、2、3歩近づいてくる。「ケースケ」嬉しそうな顔で俺を見るミリ。なんだよ、ご機嫌だな。俺には、、背中向けて寝たくせに。そんなにその男といて楽しかったわけ?俺はミリがいなくて、心配で駆け出してきたのに。なんて、きっと憮然とした顔をしているはずの俺にも、ニコニコとミリは、「どうしたの?こんな時間からどこかに行くの?」ったく、何言ってんだか。「こんな時間に家にいないから、探しにきたんだよ」ぶっきらぼうに言ったにもかかわらず、ミリは嬉しそうに、「そなんだ。ありがと~。」と答える。その言い方に相当酔ってるな、って気づく。俺は、男に一度目をやってから、ミリに無愛想に聞く。「・・ダレ?」「あ、紹介するね。お父さんの病院に新しく来た新谷先生。で、新谷先生。こっちが、ケースケです」「はじめまして。」差し出された手を俺は心もち強く握り返す。新谷、と呼ばれた男は、「あなたがミリさんの。こんなかっこいい人だったんですね。これじゃかなわないな。」とポツリと言う。俺はつい、言ってしまう。「今、一体、何時だと思ってるんですか?」俺が初対面の人間相手に、怒っているのにやっと気づいたらしいミリが、「ちょっと、ケースケ」慌てて割って入ろうとするけれど、新谷は、「すいません。つい、楽しすぎて。時間が経つのを忘れてしまいました」屈託なくそう言ってから、「じゃあ、美莉さんをお願いします。僕は、ここで失礼します。ケースケさん、また、改めまして。」と俺に頭を下げる。ミリが横から、「今日はありがとうございました。お気をつけて」「はい。美莉さん、ほんとに、今日はありがとうございました。」「いえ、こちらこそ、楽しかったです」「じゃ、また、おやすみなさい」遠ざかる新谷を見送って、振り向く美莉。無邪気に、「帰ろっか?」というが、俺は気持ちが治まらず、ミリを睨んでしまっていた。「・・・なに?」不安げに見つめかえすミリ。「誰だよ、あれ?」「誰って、、今、紹介したじゃない」「そんなことじゃなくて、どういう関係?」「どういう関係もなにも、、今日は、新谷先生の誕生日で・・」「お父さんと食事じゃなかったのかよ?」「お父さんは仕事でこれなくなったの。なにそれ、ヤキモチ?」楽しそうに茶化すミリだが、俺、さっきミリが目の前で、他の男の腕の中にいたことが頭から離れなかった。「・・・怒ってんだよ、俺は」「怒って、、?」「だって、完全に浮気だろ?他の男とその男の誕生日にディナーして、そんなに酔っ払って、こんな時間に帰ってくるなんて」ミリは、呆然とつぶやく。「浮気、、、って。。」「それに、アイツの腕になんか抱かれて。アイツ、俺が声かけなかったら、絶対キスしようとしてた」「まさか」言い返そうとするミリに、「なにかのあてつけかよ?」俺のキスシーンのことで悩んで落ち込んでるはずのミリを、なんとか宥めようと必死で頭を悩ませてたのに。他の男と、2人で、楽しく飲んでたなんて。・・・自分勝手なことは100も承知ながら、自分でも、歯止めがきかなかった。「そんな・・・」一気に酔いがさめたような顔をしたミリが、俺を見上げる。「・・・ごめん。そんなに怒んないで。ただ、もうアリタリアに入ってから、お父さんが来れないって言ってきたから・・。誕生日の先生一人残して帰れないじゃない。ケースケには、、ちゃんと説明したら分かってもらえると思ったんだもん。気を悪くしたなら、謝るわ。だから、許して?」その率直な謝罪に、俺は急に我に返り、とても恥ずかしくなる。そんなこと言えた立場かよ?俺は、、今、ミリを苦しめているのに。「・・・ごめん。浮気だなんて、、言い過ぎた。確かに、、ヤキモチだよ。ほんと、ごめん。ミリが謝ることないんだ。俺、どうかしてた」「ううん。私も悪かったんだ。ケースケのことで、少し、もやもやしてた気持ちを忘れたいって思いもあったから。心配させちゃってごめん。」ミリはそこまで言ってから、一度目を閉じ、もう一度、俺を見上げて言う。「ねぇ、ケースケ、私、夕べのことも、ごめんね。ケースケのお仕事だもんね。辛いし、苦しいけど、きっと、ちゃんと受け入れるようにがんばるから」「ミリ・・」やっぱり今日はずっと悩んでたんだな。。ごめん、、と心の中で詫び、辛いのに、きっと、必死で、受け入れようとしてくれているミリがどうしようもなく愛しくなって、そっと、抱き寄せようとした時に、ミリは、思い出したように尋ねた。「そういえば、メールの返事、くれなかった・・ね?」「ん、、?あぁ。。見る暇なくて」苦しい言い逃れ。「いつなの?心の準備がしたいから。。」不安げに、でもどこまでも、イノセントに覗き込む瞳に、俺は、いたたまれず、少し目を逸らしてから言った。「今日・・だったんだ」言い終える時に視線を戻すと、ミリは、目を閉じるところだった。でも、ちゃんとまた目を開けて俺を見る。哀しそうな瞳で。「そ、、なんだ?」「ああ、ちゃんと1回で決めたよ?」きっと言っても仕方のない、気休めにもならないことを付け加える。「うん」頬が歪んで、、無理に笑おうとしているのが分かる。でも、ミリは笑えなかった。沈黙の時間。やがて、「帰ろぉ・・」力なくつぶやき、血の気の引いた表情のまま、家に向かって歩き出す。そして、また、よろけるミリ。抱きとめようと、腕を出した俺を避けるように身をよじり、近くの木に手をつく。ミリ。。。。呆然とする俺の目の前で、ミリは、自分でも自分の反応に驚いたような顔をしている。そう、夕べと同じ。いや、もしかしたらそれ以上に。ミリの体は俺を避けていた。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.18
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食事は、新谷先生との話が弾んで、あっという間に時間が過ぎた。なんだか話し足りなくて、バーの方に席を移してもう少し飲んだ。普段はあまり飲まないショートドリンクで、さすがの私も、少しウットリくる。ウットリきかけた頭で考える。新谷先生って、素敵な人。細い目に薄い唇。いかにもキレる感じがする。でも、声や話し方やしぐさはとてもソフトで。恋人がいないってなんでなんだろうな?なんて、おせっかいにも思う。「今日、落ち込んでるって言ってたけど、何かあったんですか?」酔いにぼんやりしていると、突然、そう聞かれて、予定通りすっかり忘れていたケースケのキスシーンのことを思い出す。そしてついため息。少し胸まで痛む。辛い。きっと楽しそうだったはずの私の表情が一変したことで、新谷先生は、慌てたように言う。「すいません。余計なこと思い出させちゃいましたね。」私は、首を振る。どうせ家に帰るなら、そろそろ考えずにはいられないことなんだ。だからって先生に相談することでもないし。私は曖昧にごまかす。「いえ、どうせ思い出すことです。先生と食事して少しでも忘れられてよかったです。・・だけど、できたら、そのことは家に帰るまでは忘れていたいな。だから、先生の話聞かせてください。」「そんなことで気がまぎれるなら、何でも聞いてください」新谷先生は優しい目で私を見てうなずいてくれる。子供を見つめるような優しい目で。私は、その目に引かれてつい聞いてしまう。「先生」「はい?」「恋人がいないって、、本当ですか?」先生は少し苦笑して、「はい。本当です」「どうしてですか?」「どうして、、といわれても。ご縁がなくて」「だけど、そんなに素敵なのに・・。きっと、理想が高いんですね」私がそういうと、新谷先生は微笑んで、こちらを見て、「・・・美莉さんには、恋人がいるってお伺いしましたけど」「はい。いるには、、いるんですけど」こんな答え方、ケースケに聞かれたら、本気で怒られそうだけど。なんだか今日は、とても曖昧だ。「その彼とケンカ、、でもしたんですか?」私は新谷先生を見る。「ま、、、そんなとこです」「なるほど。落ち込んでる理由、ですね」私は静かにうなずく。「仲直り、できそうですか?」「・・・そう願ってるんですけど」新谷先生は、優しくうなずいて、「その気持ちがあれば大丈夫ですよ。きっと」そう言ってから、腕時計を見て、驚いた声を出す。「おっと、いけない、もうこんな時間だ。送ります」帰るのが少し憂鬱だった私は、「まだ、平気ですよ」と言ってみたけど、「いえ、僕はいつまででもいたいですけど、これ以上遅くなったら、高崎先生に怒られてしまいますよ。ミリさんの彼も帰ってるでしょう。早く話して、仲直りするべきです。こじらせると長くなりますから、ね」私は、うなずいて立ち上がった。新谷先生の送ってくれるという言葉に甘えて、一緒に、並んで歩く。あまり会話は交わさずに。1人、月を見上げながら、ケースケのことを想う。お酒を飲んで楽しい時間を過ごした分、少し気分は上向いていた。大好きなケースケ。ケースケが、今の仕事をがんばってるの、私、よく分かってる。だから・・・、だから、ちゃんと受け入れなくちゃならない。ケースケを失うことなんて、私には、できないから。夕べは、ごめんね。夕べは、心よりも体が、先に、拒絶反応を起こした。今まで、辛いことがあれば、いつも、抱きしめられて、その腕の中で癒されてきたのに。背中を向けて眠ってしまったなんて。今日は、、大丈夫かな。ちゃんと抱きしめられて、心の底から、体の底から、癒されたい。ケースケの心が、変わらず私にあるのなら。私には、ケースケを失う理由なんてないんだから。辛いのは伝える。平気じゃないのも伝える。だけど、、、だけど、ずっとそばにいたいってことも、伝えなくちゃ。私を傷つけることができるのも、私の傷を癒すことができるのも、ケースケだけなんだから。私は、自分が少しずつ表情を緩め、穏やかな気持ちになっていくことに気づく。そしてもう一度、新谷先生と何気ない会話を交わしながら歩く。「ミリさん」新谷先生が静かな声で私を呼ぶ。「はい?」「足元気をつけてくださいよ?随分千鳥足の様子だから」「は~い」って返事をしてすぐに、私はよろけた。慣れないヒールのせいだ。もちろん、、酔いのせいもあるかも。「おっと」すぐに、力強い腕に抱きとめられる。それは、ただ、抱きとめるというには、力のこもった腕で。新谷先生の胸に顔をつけたまま、足元をしっかりと確かめなおして、体勢を直しても、その腕が解かれることはなかった。そして、先生の方に視線をあげた時に・・・。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.17
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正直言えば、たくさんのシーンの撮影が続き、空き時間にはウスイさんの演技を見たり、いろんな話を聞いたり、で、夜仕事を終えたときには、その日撮ったキスシーンのことなど、もう俺の頭には何も残っていなかった。しかし、携帯のメールをチェックして、それを思い出す。『キスシーンっていつ撮影なの?』ミリからだ。ミリの哀しい心ごと思い出して、辛くなる。『今日だった。もう終わった』・・・なんて、メールで済ませるわけにもいかない。ちゃんと顔見て、、メールの着信時間は、午前中だ。もう、ここまで待たせたんだ、返信はせずに直帰して、話そう。そう決めて、俺はタクシーを拾った。だけど、マンションまで帰りつき、部屋のドアを開けて、その人気のなさに、俺は、何がなんだか分からなくなる。ミリが、、いない?俺は電気をつけ、ドアを入ると条件反射的に外しかけていた腕時計を確かめる。もうすぐ日が変わる。ケータイを確かめるが、今朝のメール以外の連絡は入っていない。すぐにミリに電話をかけようとして、テーブルの上においてあるメモに気がついた。『ケースケ。お帰りなさい。もしも、私の方が遅かったら、だけどね。お父さんと食事してきます。ミリ』ミリの可愛い字。なんだ、お父さんと、、と、ほっとしかけて、でも、遅すぎるだろ?と思う。・・・実家に泊まるんだろうか?そんなこと、、したことないんだけど。それにそうするなら、連絡してくるだろう。お父さんが一緒なら、、何も心配はないだろうけど。。だけど、、、夕べのキス、背中、大きな不安になって、押し寄せてくる。俺は、やっぱりミリのケータイにかけてみる。・・・出ない。お父さんにかけるわけにも行かないしな。実家にかけるのも、、遅いか。。俺はいてもたってもいられなくなり、とりあえず、ミリの実家まで行ってみることにした。マンションのエントランスを出て、何かにせかされるように、走り出す。だけど、実家まで行くまでもなく、公園の途中で足を止める。遠くから、こちらに向かって歩いてくるミリが見えたから。普段は着ないエレガントなワンピース。めちゃおしゃれしてるし。だけど、服装が変わっても、遠目でも、俺にはミリが瞬時に分かる。ただ、足を止めたのは、ミリの隣を歩いている人間がいたから。背の高いスーツ姿。お父さんではない男。俺は見たこともない人間だった。ミリとその人は、並んでゆっくりと歩いている。俺に気づくこともない。俺は、ミリの安心しきったような、楽しそうなその様子に、夕べとは全然違うその様子に、そこから動けなくなる。・・・誰なんだ?←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.16
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父の指定の場所は実家の近くにあるイタリアンレストランだった。ここは父のお気に入りのお店で、私の誕生日やお祝い事があるといつも誘ってくれる少し高級なお店だ。このお店を選ぶなんて、新谷先生のことよっぽど気に入ってるみたい。私の部屋からも近いので、歩いていくことにする。日が傾くと、ワンピースに着替えアクセサリーもつけ、慣れない化粧もし、少しおしゃれをして、いつもの公園を抜けていく。噴水の前で少し立ち止まることも忘れない。・・・ちゃんと可愛く見える、ヒロト?ケースケのこと、、、どうしたらいいのかな。心の中で少しヒロトと話してみる。返事は、・・・ない。だよね。私が自分でちゃんと考えないと。お店に着くと、テーブルでは新谷先生が1人で待っていた。席に着くと、挨拶の後、「高崎先生は、少し遅れられるそうです」と、まるで自分が悪いように言ってくれる。私は笑って、「はい。さっき私にもメールが来ました。いつものことなんです。、、って、新谷先生も、よくご存知ですよね?」「はい。お忙しい方ですから」父が来るまで、少しだけ食前酒を頂くことにする。しばらく新谷先生と話す。新谷先生とは、まだ会うのは2度目だけど、平気で話せる。多分、先生が大人だからだろうな。私は思い出して、「あ、そうだ。お誕生日おめでとうございます。」「ありがとうございます。すいません。ミリさんにまで、来ていただいて。お祝いしてもらうような歳でもないんですけど」「いえ。お祝いするのは、するほうも楽しいですから。先生おいくつになられたんですか?」「28です。」「28。・・大人、ですね」と、私は、小さな包みを差し出す。「これ、ささやかですけど、誕生日プレゼントです」新谷先生は慌てたように、「そんな、頂くわけには」私はにっこり笑ってもう一度差し出す。「そう言わないで下さい。先生のために選んだものですから。受け取っていただけないとどうしていいか」そういう私に、新谷先生は遠慮がちに、「いいんですか?」「ええ、ただ、先生の好みとか何も知らないから、喜んでいただけるかどうか。。」「ありがとうございます」新谷先生は、静かに受け取って、私を見る。「開けていいですか?」「もちろん。」革製の小さな犬のキーホルダーを選んだ。先生が開けて手に取るのを見届けてから言う。「すいません。恋人でもないのに図々しく身に着けるものを」新谷先生は、顔をほころばせ、「いえ、ありがとうございます。素敵なキーホルダーだ。是非使わせてもらいますよ」「そういっていただけると嬉しいです」そこに、ウエイターが電話を持ってきて新谷先生に渡した。私は小さくため息をつく。父だろう。きっと、来られなくなったのだ。職業柄仕方ないとはいえ、自分からお祝いと言い出しておいて、ほんとに、もう、と思う。新谷先生は簡潔にやり取りを終え、私に受話器を回す。「高崎先生です」私はうなずいて受け取る。「もしもし、お父さん?」「すまん、ミリ。ちょっと今日行けなくなった。払いは僕がすること伝えているから、悪いが新谷君のお祝い、よろしく頼むよ」「分かったわ」父にとはいえ、あまり不快感を表すと新谷先生に嫌な思いをさせてしまう。私は努めて明るく受け答えを済ませ、ウエイターに電話を返した。新谷先生に申し訳なくて、「すいません。父ったら自分からお祝いだって言い出しておいて。・・また父にはしっかりお祝いさせますから」と謝る。新谷先生は、穏やかな笑みを浮かべて、「いえ、高崎先生は、、、高崎先生なりに、もう十分にお祝いしてくれていると思います」そのときの私には意味の分からなかった言葉をつぶやいてから、「ミリさんは、僕と2人でも、、かまいませんか?」2人。先生はいい人だし、きっと楽しいだろう。ケースケのことはあえて考えないようにした。ちゃんと話したら分かってくれるだろう。まさか食事をしただけで、妙な誤解をするとも思えない。それにどう考えても、誕生日の先生を独り残して帰るなんてこと、ありえない。「もちろんです。先生さえお嫌でなければ。今日は私、、少し落ち込んでて。、、だから、とても嬉しいんです。こういう空間にいられること」新谷先生は、少し心配そうな表情を見せた後、うなずいて、「僕としては、ミリさんと2人でディナーなんて申し分のない誕生日ですね」と微笑んでから、「じゃ、注文しましょうか?」「ええ、私、お腹すかせてきたんです。父のおごりですからたくさん食べましょ」私がにっこりとそういうと、新谷先生は、少し指で合図して、注文のためにウエイターを呼んだ。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.15
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「今の、よかったよ」後ろから声をかけられて振り返る。「碓氷さん、ありがとうございます」碓氷は確固たる地位を築いている役者の一人だ。まだ連ドラが2度目の俺はもちろん初共演だったが、俺の前作の演技を見てくれて気に入ってくれたらしく、初顔合わせの日から、いつも気さくに声をかけてくれる。ともかくも大先輩に褒められてとても嬉しい。素直に頭を下げる。「しかし、初めてのキスシーンだろ?一発で決めるとは、なかなか根性座ってるな」と碓氷は笑う。予定では少し先だったのに、いきなり今日、といわれた時は少し焦ったけれど、なんとか1回で済ませることができて、俺はミリの手前、ほっとしていた。「碓氷さんは、、最初の時、どうでした?」「俺・・・?」碓氷はしばらく考えていたが、首を振り、「忘れた」「ほんとに?」「ああ。だって、そうだな~、もう多分22年位前の話だからさ」「俺が生まれるか生まれないかの頃ですね」「え?慶介っていくつ?」「21です」俺は思い切って聞いてみる。「碓氷さん、その初めてのキスシーンのとき、恋人いましたか?」相手は今も浮名の絶えない碓氷だ。間違いなくいただろうと思って聞く。碓氷は、「ちょっと待てよ~、どうだったかなあ。22年前か。。」なぜか少し表情が曇ったような気がしたが、それも一瞬のことで、碓氷は俺の方に向き直り、「いや、いなかったと思うな。なんで?」「俺は、、いるんですけど、なんか今回のキスシーンのことで、ちょっと妙な感じになっちゃって」碓氷は、うなずいて、「そうか~。初めてなんだもんな。付き合って、長いの?」「知り合っては長いですけど、付き合ってはまだ3ヶ月くらいですね」「うわ、また、微妙なとこだな~。」「そうなんですよ。だから、なかなか言えなくて。昨日、やっとこのことで話せたんですけど、、あれですね。やっぱり、自分には全くやましいとこがなくっても、どうしても、彼女の方は、気にしますよね。それは仕方ないとは思うんですけど」「彼女、怒ってるの?」「・・・怒ってるって感じでもないんですよね」「じゃあ、哀しんでる?」いわれて気づく。そう、まさに。「そうですね、ただ、静かに哀しんでるって感じです。それに」「ん?」「ちょっと、俺に触れられるのも、なんとなく拒否気味ていうか。気のせいかもしれないですけど」夕べのキス、そして、ベッドでの背中。俺は結局、あの強張ったキスの後、ミリに一本も指を触れることができなかったんだ。「ん~・・」碓氷は渋い顔で、「そういうこともあるかもしれないな。確かに、俺らにとっては、仕事って思えても、彼女の方からしたらなあ。初めてのときに限らず、その時々で付き合ってる相手にチクチク言われたことはあるよ。」「そのときどうしました?」「放っておいた」あっけらかんというウスイ。「放って・・・」唖然とする俺に、ウスイは笑って、「ま、適当な付き合いだったからさ。だけど、慶介は、大切な彼女なんだろ?」「はい。もちろん。・・まだ、昨日、キスシーンがあるって話したばかりで、いきなり今日だったし、今日は今日でまた、終わったって話さなくちゃなんないんですよね。あぁ、どうしたら、元通りのミリになってくれるかなあ」「でも、慶介、いい演技だったよ。・・そう、演技なんだよ。そこをなんとか割り切ってもらえたらいいんだけどな」「はぁ・・」ついため息がもれる。碓氷は笑って、「大丈夫だよ。慶介が恋人に対しても誠実なことくらい、付き合いの浅い俺にだってわかることだ。今はまだ彼女もショックだろうけど、それが治まれば、冷静に、そんなことで慶介を失えないことに気づくさ。今はそうだな、、ただ、刺激しないように、慶介は自分が仕事をしっかりしてるのを見せて、彼女のことは優しく見守って、彼女の気持ちの整理がつくのを待つしかないんじゃないかな。きっといつか分かってくれるさ」「あ~ぁっ。。そうするしか、ないの、、か。な。」ため息のとまらない俺だった。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.13
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ベッドに入ってきつく目を閉じる。早く眠ってしまいたい。ケースケが隣に来る前に。嫌なこといっぱい考えてしまう前に。でも、そういうときに限って眠れない。つい、想像してしまう。ケースケが知らない女の人を抱き寄せて、甘いキスをするところ。とってもとってもとっても辛い。哀しい。そんなのヤダって怒鳴れたら。ケースケの胸で思いっきり泣けたら。そんなこと思う自分に、自嘲気味に笑う。そんなことしたって、ケースケはキスするんだ。台本次第では、裸になってベッドにだって入るだろう。泣いて、叫べば、私の悲しみはケースケに届くかもしれない。でも、それでも、やめさせることはできない。ケースケの手は私のためだけにあるのに。たとえ、、そう、たとえ、他の誰かにキスをしても、ケースケの愛情は、何も変わらないって、ちゃんと信じられるのに。頭では分かってるのに。でも、胸が苦しい。痛い。いつもどおりのキスだって、辛かった。『泣いたっていいんだぞ。』ケースケはそう言ってくれたけど。泣くわけにいかないよ。泣いたら、、、他の人とキスするの、やめてくれる?そんなつまんないこと、言っちゃいそうで。私と仕事とどっちが大事?なんてくだらないこと、言っちゃいそうで。いつなのかな、その撮影の日。ああああ、頭がおかしくなりそう。って、今更、気づくこと。私、実は、ケースケのこと、ほんとに好きだったんだなって。そんなバカみたいに当たり前のこと。すごくすごくヤキモチ焼きな自分が教えてくれる。ケースケの足音に、私は、寝たふりをする。ベッドに入ってくるケースケ。「ミリ、、、、もう寝た?」いつもなら、ケースケの寝る方に向いて寝ているけれど、今日は無理だから、壁の方を向いて眠る私を、しばらく見つめている気配を感じる。いつもなら、自分の方を向いて寝ている私を、そっと抱き寄せてくれるはずだけれど。手を伸ばしかけては、引っ込める、ケースケのためらいを感じる。ケースケだって辛いんだ。私を苦しめていること。ごめんね、ケースケ、だけど、、今は、辛くて、平気な顔できないよ。キスだって素直に受け取れない。ごめんなさい。心で小さく囁く。ケースケのためらいを感じながら、それでも、ケースケの気配を感じられて、私はいつのまにか眠りについていた。そして翌朝、目が覚めたらケースケはもういなかった。ただ、ケータイにメール。「おはよ、ミリ。今日も愛してるよ」いつも優しい言葉を送ってくれるケースケ。『おはよ~。今目が覚めた。お仕事がんばってね』いつもなら、そう返すはずの私。だけど、今朝は。同じようには打てない。指が止まる。でも、思い切って、聞いてみる。「キスシーンっていつ撮影なの?」・・・返事は来ない。内容のせいなのか、仕事中なのか、判断はつかない。もやもやする気持ちを追いやるために、私はベッドから出てシャワーを浴びた。シャワーから出てもメールは来ていない。あぁ。やだな、このもやもや。って思ってたら、ケータイが鳴った。父からだ。「もしもし」「ミリ?お父さんだけど」着信画面で分かってるのに、いつも名乗る父。そんな律儀な父が可愛く思えてしまう。「うん。なに?」「今夜あいてるか?」私は少し考える。今日は予定ないんだよね。「うん。あいてるよ。どしたの?」「新谷君が今日誕生日だそうなんだ。彼まだ一人身でね、恋人もいないっていうから、どっかで食事でもって思ったんだけど、僕みたいなオヤジだけじゃあんまりだから」私はクスっと笑う。確かに、誕生日に、上司のお父さんと2人でディナーじゃ、新谷先生も気の毒だな。まだ、赴任したばっかりで知り合いも少ないみたいだし。。ケースケは今日も遅いし。。私は答える。「私なんかでいいなら、どこでも行くよ?ちょっとおしゃれして」父は、嬉しそうに、「そうか、じゃあ、新谷君と相談して場所と時間が決まったら後でもう一度連絡するよ」「うん。おいしいとこにしてよね?」「分かってるよ」そう言った父は、思い出したように、「ケースケくんは?仕事か?」「うん。ケースケは遅くなるから、気にしないで」「分かった」電話を置いて、私は、う~んっと伸びをする。こんな時、くよくよ悩んでも仕方ない。何度も伸びをしながら、今日の予定を立てる。朝のうちに家の用事を済ませて、お昼からは泳ぎに行こう。で、夜はおしゃれして豪華ディナー。1日の予定が決定。いい感じだ。ケースケのキスシーン。。考えても仕方ないなら、せめて、忘れてすごそう。そう決めた。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.08
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予想された展開だったけれど、やっぱりミリを傷つけてしまったことで胸が痛む。心にもないことを捨て台詞に、後ろ手でドアを閉めようとするミリを、まさかそのまま行かせるわけにはいかない。ドアを思い切り引き返し、そして、胸の中でミリを包み込む。「ミリ。愛してる。ごめん、イヤな思いさせて」身動きしないミリ。俺は続ける。「。。イヤな思いをさせることは謝る。だけど、仕事でキスすることは謝らない。仕事だから。これから同じような思いいっぱいさせるかもしれないけど、俺は役者を辞めないよ。まだ少しやってみただけだけど、自分ではこれが天職だと思うんだ。つらいの分かる。だけど、そのこと、ちゃんと分かってほしい。」ミリは少し顔を上げる。俺は胸からミリを離し、潤みかけた瞳を覗きこむ。ひどいこと言ってるかもしれない。だけど、仕事を続けていく上で、理解してもらわなくてはならないことなんだ。ミリは言う。「・・・そうだね。ケースケは、今の仕事、本当に向いてると思う」ポツリとつぶやくように告げ、少し目を閉じるミリ。目をもう一度開いて言う。「だから、がんばってね」言葉の内容とは裏腹な、突き放すような言い方に、俺は胸を締め付けられる。自然に手に力がこもる。身をよじって逃れようとするミリを、より強く抱きしめる。「離して・・?」「いやだ」こんなんで終わるわけにはいかないんだ。「なんでよ。離して。私、怒ってないよ」穏やかに告げるミリ。俺は少し体を離して、瞳を見つめる。確かに、、。でも。「怒ってない」繰り返すミリ。俺はミリの体から、ゆっくりと手を離す。「なんかちょっと妬けただけ。子供みたいだね、私ってば」にっこりと笑ってくれるミリ。くそっ。俺、無理させてる。ミリにガマンさせてるんだ。確かに、俺の仕事で、つらい想いさせること、納得してもらわなくちゃならない。だけど、こんな風に気持ちを押し殺して無理してほしいわけじゃない。俺はミリをもう一度抱き寄せる。「んだよっ。無理しなくていいんだよ。いつもみたいに、イヤだとか、キライとか、バカとか言ってくれよ。大声で叫んだっていんだぞ?」ミリはあきらめたような笑顔で俺を見る。俺はなんだか不安になって、「泣いたっていいんだぞ?」こっちが泣きそうになりながら言うと、ミリはそのまま首を横に振る。「無理なんてしてないよ。泣きたくなんてない。ただ。。。」「ただ?」ミリは、「何でもない」と笑ってごまかす。「言えよ」ミリは気弱そうに目を伏せ、「ケースケには役者は天職でも、、」「・・でも?」「でも、私は、こんなことくらいで動揺して、、役者の恋人には向いてないのかな、なんて思っちゃった」頼りなげに微笑むミリ。俺は、愕然としながら、「ミリ、、、まさか、」言葉につまる俺を見つめ、ミリは、ニッコリ笑う。「な~んてね、こんな気弱なキャラは似合わないない。ね?」明るく言ってくれるミリだけど、俺は立ち直れず、「俺には、ミリしか、いないんだぞ?」呆然とつぶやく。少し声が震えてしまう。ミリは、笑って、「はいはい。分かってるよ」と言ってから、「あ、そうだ」「え?」「せめて、NG出さないようにがんばってよね?」「NG?」「うん。だって、NGになったら、何度も、、、するんでしょ?」「ああ、きっと1回で決めるよ。約束する。」静かに頷くミリ。「もう、、、寝るね」「・・俺もシャワー浴びたらすぐに行くから」そういってから、俺は付け足す。「なあ、練習台なんて、ありえない。いつだってミリのことだけ思ってキスしてるよ?」「・・分かってるよ。そんなこと。なんだか動転しちゃって、、バカなこといってごめんね」俺は少しだけ安堵し、ミリを抱き寄せて、いつもどおりキスをする。だけど、いつもと違うこと。唇が触れる瞬間、ミリの体が固くなった。唇も固くなっている。体が、、俺を拒んでる、、の、か?ミリは自分から唇を外し、俺を優しく押し返してから、俯いたまま、「おやすみ」そう言って寝室に消えた。俺はしばらくその場から動けなかった。俺が、キスシーンのことを話せば、きっと、もっと、ミリは泣いて怒って拗ねてって思ってた。俺はそれを抱きしめて、なだめて、腕の中で思いっきり泣かせて、気が済むまで泣かせて、キスして、しっかりと抱くことで、何度も愛してるってささやくことで、これまでと同じだって、これからもずっと同じだって、何も不安に思わなくていいんだよって、伝えようと思っていたのに。ミリは、あんなに穏やかに、、ひとりで飲み込んでしまおうとしている。ひとりで・・?そんなことできないだろ?なあ、ミリ。頼むから、他の誰か、なんかに、助けを求めないでくれよな?『役者の恋人には向いてないのかな』ミリの言葉が脳裏に甦る。役者であろうと、、なんであろうと、俺の隣には、ミリ、お前の居場所しかないんだよ?一体、俺、今のミリに何をしてあげられるんだろう?1人残された部屋で、途方にくれる俺、だった。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.07
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ベッドに入ったものの、うとうととまどろむだけで、何度も目が覚める。ケースケは、、まだ、帰っていない。今、何時だろ?ふと思って、枕もとのケータイを開く。2時35分。今日もまた随分遅いな。小さくため息をつく。体大丈夫かな?本当に心配になる。ケースケがドラマの撮影時期に入ると始まるすれ違いな生活には、少し慣れてきた。言葉を交わす時間がなくても、メールすらほとんど来なくても、大丈夫だった。添い寝だけの頃とは違い、わずかでも一緒にいられる時間に、ケースケと濃密に繋がることができるから。ケースケは、息をつくヒマもないくらい、私を求める。私に拒む理由は何もない。ケースケは私を愛してくれている。きっとずっと守ってくれる。そう信じることができるから。ケースケの腕の中でいることはとても幸せだから。ただ、隠し事しだしてから、キスの回数が増えた気がする。言い出しにくいから、なのかな。。。隠し事してたって、ケースケの私への愛に変わりはないと思う。だけど、気になる。。そんなに言い出しにくいことなのかな?ほんとに、なんだろう・・・?そうは思っても、夜中には、想像力も、創造力も働かせない。きっと、悪いことばかり考えてしまうから。そんなことぼんやり思っていると、ケースケが帰ってきたみたいだ。言い出しにくいなら、なんとか思い切って、今日こそこっちから聞いちゃおうっと。そう考えて私はベッドから出る。「お帰り」そういいながら、ドアを開けると、腕時計を外そうとしているケースケがこちらを向いて言う。「ただいま。あ~、ごめん。起こしちゃった?」私は近づきながら、首を振って言う。「なんだか眠れなくって」いたわるように微笑んでから、いつもどおりキスをくれるケースケ。でもその後で、心配そうに覗きこむ瞳。「何かあった?」私は黙って首を振る。そして思い切って、「何かあるのは、そっちでしょ?」努めて明るく言う。胸はドキドキしているけれど。何を聞かされるんだろう?「え?」「何かあるんでしょ?私に言いたいこと」なるべく軽く言ったつもりだったけど、夜中の静まった部屋だからか、少し意味ありげに響いてしまう。ケースケは、少し虚をつかれたような表情を見せたけど、すぐに、「・・ああ、そうなんだ。話さなくちゃいけないことが、、、あるんだよ」と言う。その深刻な表情に、私は自分で聞いときながら、なんだか、やっぱり聞くのをやめたくなった。でも、ケースケのほうは、いいきっかけを得たとでも言うように、話し始める。「あのさ、俺」少し腰をかがめて、私の瞳を覗き込むケースケ。「うん・・」なんだか怖くて少し瞳を閉じてしまう私。目を開くと、ケースケは少しためらうように、目を横に逸らし、もう一度私に戻してから言った。「俺さ、今やってるドラマで、、キスシーンがあるんだよ」キス。。・・・キスシーン??「ええっ」まんま、思いっきり驚いちゃったし。ケースケのほうは少し罰の悪そうな表情。キスシーンってキスって、キスするの?ケースケが、、他の女の人と。。「だけど、、ただの、仕事だから」呆然とする私に、先手を打ってくるケースケ。私は、頷いて、「だよね。仕事だもんね。仕方ないよね」と明るく言ってみる。ケースケは訝しげに私を見て、「・・怒んないの?」心はさっき驚いた時にどっかにいっちゃった。そして、今は、ただ、私の抜け殻が、勝手に口を開くみたいに。。「なんで?怒んなきゃいけない?」「いや、、本当は、ミリにはショックかなと思ってなかなか言えなかったんだけど」ショック受けまくりだと思うけど、それすらうまく感じられない。私は、うなずきながら、「そっかそっか、それで、この間から、キスの回数が増えてたんだ」「なに?」「キスしてくれる回数が増えたじゃない」「ああ、それは、ミリを安心させたくて」言いかけるケースケを無視して、私は、寝室のドアを開ける。「私で練習してたんだね~。ということは、他の女の人とキスすること思い浮かべながら、私とキスしてたんだ。練習台ってわけか。。ヒドイな。。サイテー」口が止まらない。こんなこと言いたくないのに。ケースケが寝室に入ろうとする、私の手首を掴む。「ミリ、誤解だって。俺はただ、なかなか言えなくて、、、不安にさせてたし、、話したら、きっともっと不安にさせるから、ミリを安心させたくて」バカな私。ケースケ困ってんじゃン。子供みたいなヤキモチ。自分で自分が情けない。いつもいつも誠実に私に向かい合ってくれるケースケ。きっと、今の言葉も嘘じゃないだろう。ただの仕事なんだ。だけど。。だけど、ケースケが誰かとキスをする。しかも、きっと綺麗な人と。ただ、それを思うだけで、妬けて妬けて仕方なくて。「あ、そ。いいよ。何でも。仕事なら、キスでもHでもすればいいよ。私に文句は言えないもんっ。」なんてひどいこと、強がって言うしかなかった。ほんと、バカみたいだけどしょうがなかった。涙をこらえるためには。ヒドクて、サイテーなのは私だよね。。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.06
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俺はミリに隠し事をしている。隠し事っていうか、言わなくちゃいけないのに、どうしてもなかなか言えないことがある。毎日マンションのドアを開ける前に思ってる。「今日こそ言わなくちゃ」って。だけど、言えない。「お帰り~」って、駆け寄ってきてくれるミリの、穏やかな笑顔を見てしまったら。腰をかがめて、キスした後、イノセントに見上げてくるミリの瞳を覗いてしまったら。途端に、「明日でも、、いっか」って。そんな日が続いて、きっとミリも気づいてる。俺が少し違うこと。笑顔のトーンが下がってる。目を合わせる回数が減っている。俺の瞳の奥に何かを見つけるのを恐れるように。俺に負担をかけないように、そんな自分を必死で隠そうとしていることも分かる。ったく、情けない俺。ミリを不安にさせてどうすんだよ。ただ、意識したらなんだかどんどん言えなくなってきた。言わなくちゃって思えば思うほどどんどん言いづらくなってきた。喉元まで出かかっても言えないとき、俺は、ただ、ミリにキスをする。ミリは瞳を閉じて、俺のキスを受け止める。心の奥にたくさんの小さなため息を飲み込んでいる。だから、俺は何度も何度も口づける。そのまま最後までヤっちゃうこともある。てか、ほとんどそのまま最後までいっちゃうんだ。不安に思うミリを安心させたくて。心から愛してるのはミリだけなんだって分からせたくて。「愛してるよ、ミリ」その言葉なら、いつでも何度でも口にできる。耳元で囁きながら、優しく、強く、ミリを抱くんだ。終わったら、ミリは、薄闇の中、俺の瞳を丁寧に覗きこむ。その暗さなら、見つけたくないものを見つけなくて済むから?そっと俺の頬に手を添える。俺を見つめる、トロリとした瞳に、ひかれ、俺はまた何度もキスをする。ミリは、その全てを受け止めてから、俺の胸に、きつくしがみつくようにして眠る。俺はミリの寝顔を見つめながら思う。でも、ほんともう、言わなくちゃ。「今度のドラマで、俺、キスシーンがあるんだよ」って。別に、女優さんとキスをすることに、なんの感情もない。ただ、仕事、って感じだ。だけど、ミリは。俺が、他の女とキスをすることに、きっと何の感情もなくはないだろう。ああ、どうしよう。知った日にあっさり言っちゃえばよかったんだよな。さらっと、なにげなく。でも、それができなかった。なんとしても撮影までには話さなくちゃな。でも、もう、それも目前だった。ああ、今日は随分遅くなってしまったから、多分、先に眠ってるだろうし。俺は、ため息をつきながら、マンションの鍵を開けた。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.05
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ケースケが私に何か隠し事をしている。ケースケと恋人になって3ヶ月。いつもと変わらない仕種、いつもと変わらない優しい微笑み、いつもと変わらない抱き寄せてくれる腕、いつもと変わらない柔らかいくちづけ。でも、私には分かる。私を見つめる瞳の奥に、砂一粒ほどの微かなためらい。・・・一体、何?仕事から戻ったケースケを出迎え、小さなキスをもらってから見上げた先に、初めてみつけたその砂粒。でも、すぐに、聞いたりはしなかった。きっと自分の方から話してくれるだろうと思ったから。だけど、その日は何も話してくれなくて。ま、でも、いいやって。明日はきっと話してくれるだろうって思って。ただ、いつもどおり、優しく抱かれて眠った。ケースケの腕の中。これほど安息を得られる場所は私にはない。だけどその夜を境に、新しいドラマの撮影が始まったケースケは、少しずつまた、私と生活がすれ違っていった。ただ、その間も、会うたびに見つけ続けていた砂粒。だけど、聞けなくて、話してもくれなくて。ケースケが、私に隠し事、なんてよっぼどのこと、、だよね?そんな風に思っちゃうと、今さら、聞けなくて、話そうとしてくれてるようでも結局躊躇われて。そんな風に、毎日があっという間に過ぎていった。今日は帰ってくるのも遅い。待つにもさすがに遅すぎて、先にベッドに入る。・・・ケースケ、一体、、なんなの?私の胸を覆う不安は、最高潮に達していた。←1日1クリックいただけると嬉しいです。
2008.08.04
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