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2009.07.23
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カテゴリ: blue night
照明がいくぶん落とされたのを合図に、会場は静寂に包まれた。

「本日は、私のためにこうしてお集まりくださいまして・・」
千夜の凛とした声が響き渡る。そんな母の様子に、周りの人々同様惹きつけられて目が離せなくなる。家のリビングにいるときとは全然違うオーラ。さすが、女優・千夜だわ。最後列の壁際でしばらくそんなことを思っていると、すぐそばに人の気配。さっきまで話していた慶介だと思いこんだまま、蒼夜はそちらに目を向けた。心臓が止まりそうになる。
「ウスイ、、くん」
「久しぶり」
優しく微笑んで言う碓氷に混乱する蒼夜。

・・碓氷くんがここにいるなんて。。さっきまで散々探していたけれど、、いなくて、、、もう、、あきらめていたのに。。

蒼夜は碓氷の姿を見たことで、躍りだす心と、きっと失望が待っているはずの怯えで、動転してしまう。

「ど・・して?」
「なにが?」
「だって、、、こういう席には碓氷くんはほとんど来ないって、水野くんがいつも・・」
「君の方こそ、同じように聞いてるよ」
「私は、、、ちょっと、今日は気が向いて。。。母に強く誘われたのもあって。母のお祝い事だし、たまには顔を出すのもいいかなって」

・・・碓氷くんに会えるかも、、なんて思ってたなんてこといえないよ。ね。。

「なるほどね」
「・・・そっちは?」
「同じようなことだよ。気が向いただけ。千夜のお祝い事だし」

・・・蒼夜に会えるかも、、なんて思ってたなんてこといえないよ。な。。

碓氷はスピーチを続ける千夜に目をやる。

「ですね。ありがとうございます」
碓氷は、視線を蒼夜に移し、
「君も、とってもきれいだよ。そのドレスよく似合ってる」

・・本当に、キレイだよ。他人もその姿を見てるのが悔しいくらいに。

「どうも、ついでにありがとうございます」

「それは、どーーも。。碓氷くんこそ、ステキですよ。その借り物のスーツとネクタイ」
「あれ?借り物ってばれた?」
「それ、母が、水野くんの誕生日にプレゼントしたスーツと、私がプレゼントしたネクタイです」

・・・でも、ほんとに、素敵だよ。碓氷くん。あなたにもプレゼントできるなら、いっぱいいっぱいするのに。だけど、私の気持ちもしらないで、そんなに素敵に見えるのは、、悔しいな。。

「あ、そーなんだ。知らずにゴメン。お借りしてます」

・・・僕って、ちょっと、、てか、結構、てか、、相当?、カッコわりい?よな。。

「それにしても、よくこんな大勢のところにこれますね」
「え?」
「だって、あんな騒ぎ起こして。。。」
「あぁ、、やっぱり知ってた?」

・・知らないはずないけど、知られたくなかったな。

「相変わらずお盛んなんですね」
「違うって、あれは、本当に、偶然」
あわてて否定する碓氷に、蒼夜は、
「へ~」
とつれない態度で。

・・・ちょ、、冷たっ!やっぱり、、僕なんて、、眼中にないのか、、な。。

蒼夜相手にあまりに臆病になり、心が立ちすくむ碓氷。

・・・てか、言い訳それで終わり?もっとちゃんと説明してよっ。

一瞬、そんなこと思ってみても、

・・そか、何も、私に言い訳なんてする理由、、ないんだもんね。

と、唇を噛んで、哀しく目を伏せる、蒼夜。そして、思う。

・・・今日、ここで会えたら、、て思ってた。
でも、現実に目の前に碓氷くんが現れても、結局は、こうやって、距離を思い知るだけで。
1%の希望なんて、ただ儚く消えていく。
碓氷くんは、素敵過ぎるから。
会えたら、、それだけで、、なんて思ってた自分が、、、。
何度失恋してもいいって、思ってた自分が。。
・・・やっぱり、、無理だよ。辛い。辛すぎる。

目を閉じてしまった蒼夜の、睫、唇が、、薄闇の中で、かすかに、、ほんのかすかに震えている。
碓氷はしばらくその様子を眺めてから、静かな声でたずねる。
「・・そっちは?」
「私?」
ゆっくりと目を開け、ぼんやりと言う蒼夜。
「、、見つかった?」
「・・・」
「愛せる人」
「・・ええ」
「そうなんだ、よかったな」
「・・」
屈託ない碓氷の言葉に、、、何も、、、何も答えられない蒼夜。
「実は、僕も見つかったんだ。もう誰も愛せないって思ってたのに」
「・・・?あの、、写真の人ですか」
「まさか」
そこで、蒼夜は、そっと碓氷を見上げた。何かを確かめるように、蒼夜の瞳の奥の奥まで覗き込む碓氷。
「誰か知りたい?」
蒼夜は、碓氷の優しく問う声に、導かれるようにうなずく。
「知りたい。。です」
魅入られたように、もう、蒼夜は、視線をそらせない。
「じゃあ、蒼夜も教えてくれる?その、愛した人のこと」
いつのまにか、蒼夜は、碓氷の腕の中にいた。うっとりとした気持ちになる。一体、、これって。。。
「いっそ、せーので、言い合う?」
碓氷の声が、少しずつ、、耳に寄り添ってくる。
「それとも・・」
ここが、パーティ会場であることすら、忘れてしまうほどの2人の世界に誘われる。
「そんなことすっ飛ばして、、もうキスしてもいいか?」
ゆっくりと、、気が遠くなるほどにゆっくりと、碓氷は顔を、、唇を近づける。
「・・いいよな?」
静かに、重ねられる唇。
蒼夜は、、もちろん、抵抗なんてできない。
できるはずがない。

蒼夜に優しく何度も口付けながら、碓氷は、心の中で蒼夜にわびていた。
震える睫、唇、そして、頼りなげに見上げた瞳。
そこにある、僕への想い。
僕なんかって、、勝手に思い込むことで、
この1ヶ月、どれだけ辛い思いをさせてしまったことだろう。
僕だって、あんなに辛かったのに。
蒼夜は。
今日の新聞ネタにだって、どれだけ心を痛めたことだろう。
もっと早く気づくべきだった。
きっと、蒼夜も、あの夜から。
僕と同じように、僕に会ったときから。
ゴメンな、蒼夜。
だけど、もう、辛い思いはさせないよ。

やがて、ゆっくり離される唇。額はくっつけたままで、信じられないほどの、胸の鼓動。燃えそうなくらい、熱い頬。
蒼夜は、目を開ける勇気はなく言う。
「ねぇ・・」
「ん?」
碓氷もそれ以上離れること無く、蒼夜の頬にそっと添えた親指だけをゆっくりと動かす。
「いいの?」
「何が?」
「だって、、すごいフラッシュたかれてるよ?」
目をつぶっていても、めちゃくちゃ眩しいほどに。きっと、人々の目もこちらに。。
碓氷はふっと息を吐いて微笑んで言う。
「かまわないさ。今度はガセじゃないからね」
そして、もう一度口付ける。
「だけど・・・」
唇を離された碓氷はすぐにその唇をまた取り戻そうとしながら言う。
「なんだよ」
何度も唇を重ね、そのたびに焚かれるフラッシュ。蒼夜はなんとか逃れて言葉をつなぐ。
「どうやって、、、ここから出るの?た、い、へんなことに、、」
「平気だよ」
「え?」
「きっと、そろそろ、千夜が助けてくれるよ」
「お母さんが?」
そう言った途端、
「あなた方、お仕事熱心なのは分かりますけれど、カメラの向きが違うんじゃないかしら?」
千夜のいつもどおりのその凛とした声にひきつけられ、フラッシュが止み、みんなの視線がそちらに戻ったことが分かる。
碓氷は、そのタイミングで、蒼夜をドアの外に押し出した。


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最終更新日  2009.07.23 00:08:22
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