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2010.03.15
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カテゴリ: box
食事を終え、妊娠初期の彩にムリさせちゃいけないから、って、
宗太郎たちは珍しく早々に引き取っていきました。
そして、いつもどおり、後片付けは、悠斗と慶介がしてくれていて。

私は、美莉と一緒に サンルーム に出ました。
二人きりで話したかったから。
慶介のいないところで謝りたかったから。

彩の妊娠のことを聞いても、その様子に違和感を覚えたのは最初の一瞬だけで、
その後は、平気そうにしていた美莉だったけれど。

やはり、謝っておきたかったのです。
こんなタイミングで聞かせてしまったことを。
何も感じなかったはずはないのだから。

「わ~。やっぱり綺麗だね~」
サンルームに出ると、いつものように、チェアに腰もおろさずに、空を見上げて美莉は言いました。
「うん。今日は特によく見えるね。空気が澄んでるのかな」
「そうだね」
とはいっても、こんな都会で見る星の光量など微かなものなのに、
まるでまぶしいものでも見るように、目を細め、
ずっとずっと空を星を見上げ続ける美莉。
愛おしそうに穏やかに空を見つめる美莉を見ていたら、

根拠もなく。だけど・・・。

・・・美莉、まさか・・?

「美・・莉・・・?」
予期したよりも、弱々しく響いた私の声。
美莉は、すぐには反応せず、まだしばらく空を見上げていました。

いつものように、ふざけ合いながら片づけを続けている悠斗と慶介の様子を見て、
唇の端でだけ微笑んでから、私を見ました。静かな瞳で。

・・・やっぱり。

その瞳を見ただけで、私は、胸が締め付けられるような気がしました。

・・・また、心が、変わってしまっている。

それがはっきりと分かってしまったから。

美莉は、自分が何も言わなくても、美莉の気持ちを私が理解したことを知ると、
そして、
私が何も言わなくても、私の気持ちを理解すると、
静かに言いました。

「楓と話して、、慶介にちゃんと話そうって、、さっきは、本当に、思ったんだよ・・・?」

私は、口を開きかけました。でも、美莉はそれを目で制して、続けました。
「楓、楓の気持ちはとても嬉しかった。・・・私なんかのこと、、そんなに思ってくれて。だけど、楓。楓は楓なの。私じゃない」
何もいえない私に、美莉は少し自嘲気味に笑って続けます。
「・・・ごめんね、ひどい言い方。だけど、、イヤミで言ってるんじゃないの。・・でも、、、。楓は、、私じゃない。ねえ、楓。私だって、立場が逆なら、、、きっと楓と同じことを言うわ。楓の事を必死で思って。心配して。・・・楓と別れた後の、悠斗くんのことだって、すごく心配するとおもうし。だって、2人にはずっとずっと仲良くいて欲しいもん。幸せでいて欲しいもん。同じだから。あなたたちは同じだから。私たちと、同じような思いでそばにいることを決めた2人だから。鏡に映る自分たちみたいで、、幸せにいて欲しいって願ってる。・・・だけど、楓。楓だって、立場が逆なら、楓が、今の私の立場に立ったら、こう答えると思う。今の私と同じように。・・・やっぱり、話さないで離れるって。」
「美莉」
ミリは吹っ切れたように微笑みました。
「私、何度も迷ったわ。症状が揃ったって気づいた瞬間から、ずっとずっと迷ってた。・・・でも、不思議だよね。・・・何度迷っても、私の気持ちは、元に戻るの。振り出しに戻るの。最初に決めたとおり・・・話さないで離れるしかないって」
私は、その決意の深さを思い知りながらも言いました。やっと声に出して。
「そんな・・・ねえ、、ミリ。・・・彩の・・・妊娠のこと聞いたせいなのよね?ごめんなさい。本当に、あんな話があるなんて、知ってたら、、呼ばなかったのに。いきなりあんなこと聞かせて、動揺させちゃって。。だから、なんでしょ?・・だったら、、お願い、もう一度、考え直して?・・・お願いだから。そうじゃなければ、私、自分で自分を許せなくなる。この場に、2人を呼んでしまったことを」
ミリの思いつめた視点を変えるためにも、『私のために』ということを強調してみたけれど、ミリは静かに首を振りました。
「・・・違うの。楓。彩さんの妊娠の話を聞いたせいじゃない。・・・もちろん、最初は、、うらやましくて、、一瞬、、。でも、2人は夫婦なんだし、とても幸せそうで、何より本当に幸せなことだと思うわ。だから、楓こそ、そんな風に考えないで。大切な彩さんの妊娠に暗い意味を付け加えて欲しくない。そんなことされたら、私だって、自分で自分を許せなくなる。だから、信じて。彩さんの妊娠の話を聞いたせいなんかじゃないの。本当に違うの。・・・私に心を決めさせたのは、・・・・慶介の言葉だったの。」
「慶介の・・・?」
ミリはうなずいていいました。
「慶介、さっきね、彩さんと宗太郎さんの前で、はっきりとこういったの。『夢なんですよ、たくさんコドモのいる家庭』って」

・・・そんな・・。。

私は、ミリの心にシンクロし、あまりのつらさに、目を閉じました。
ミリの声は続きます。
「・・・慶介の声で、言葉で、それを聞いたら、なんだか私、はじめて、すっきりと思ったの。あきらめられるって。」
ミリは声だけで微笑んで言う。目を開けることすらできない私にも、しっかりとわかる様に。ミリが、私を責めてなどいないことを。
「・・・楓、楓のせいじゃない。だから、自分を責めないで?」
美莉はしっかりとそう言うと、少しだけ声のトーンを上げて続けました。
「楓、私ね、実を言うと、ほっとしてる。・・・慶介の前に、私か子供か、なんてひどい選択肢を並べる前に、慶介が答えをくれたんだもん。・・・だから、それでいい。だから、、これで、よかった。。・・・私は、話さずに離れる。・・・・ね?」

・・・もう、何を言っても今のミリには届かない・・・。

そんな無力感だけが私を包みました。
今の私には、ミリを説得なんてできない。
ミリの気持ちが、痛いほど理解できてしまう私には。


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最終更新日  2010.03.15 11:00:30
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