lovesick

lovesick

PR

カレンダー

コメント新着

windsurf4179 @ Re:近況(05/08) お久しぶりです、福岡の加藤です。 何年振…
ぽわぽわ0127 @ Re:近況(05/08) ひろさん! よかった♪たまには近況知らせ…
シゲタロス @ Re:近況(05/08) なんだか凄く久しぶり!! 帰ってきてくれて…
t-nik0618 @ Re:近況(05/08) 良かった、仕事もできるようになったので…
ひかるですが…何か!? @ Re:近況(05/08) ひろ。さん、はじめまして。 こちらでコ…

お気に入りブログ

空想世界と少しの現実 緋褪色さん
きっくまーくのくだ… きっくまーくさん
無限の扉 yuto.さん
room47 shingo4711さん
ココロのまま るーじゅら。さん
     . ☆Yuri☆さん
不況に負けずに肝っ… かわちゃん4729さん
テレビでお馴染みの… 京師美佳さん
テイ・サックス病の… □■ぱん■□さん
食いしん坊のHappyLi… ぽわぽわ0127さん
2010.03.25
XML
カテゴリ: box
「美莉が、幸せになるため、なら、いいよ。・・・分かった」

俺のその言葉に、美莉は、少しだけ長い瞬きをし、小さく肯いた。
薄い微笑さえ浮かべて。
そして、もう一度静かに瞬きをし、視線を、俺から、噴水の方に逸らした。

もう、自分から話すことはなにもない、というように。

水のない噴水を眺める、愛しいミリの横顔。
何かを決意しやり遂げた表情。
あの日 、電車で見たときと同じように、とてもきれいで。

思わず手を伸ばしそうになるのを、拳を握り締めて、奥歯を噛み締めて、必死で堪える。



そして、俺は、立ち去ることにする。

これ以上、手を伸ばせないまま、美莉を見ていたら、
自分がどうかしてしまいそうで、
ガマンしている未練がましい台詞を吐いてしまいそうで。

「じゃあ、俺、行くよ・・」

弱々しく響いた俺の言葉に、微かにうなずいた美莉。
俺と目を合わせることすらせず。
笑顔を見せてくれることもなく。

・・・もう、俺の胸に飛び込んで甘えてくれることも、
俺のキスに頬を染めてくれることもないんだな。

考えるな、そんなこと。


どうしようもない気持ちのまま、一歩踏み出そうとして、足を止めた。

・・・どこに帰ればいんだよ、俺。

そう、ミリにも、確認しなければいけない。

「なあ、あの部屋、、、どうする?」

2人で暮らしてきたあの部屋はヒロトの部屋だった部屋。


美莉は、少し戸惑ったように、こちらに顔を向けかけたが、
一瞬後には、さらに噴水の方へと向き直り、俺に完全に背中だけを見せて言う。
「なる・・・べく、、早く、片付けるわ」
「・・・あの部屋には、住まないんだ?」
ただ背中のまま静かに、うなずいた美莉。
「手伝おうか?」
そんな言葉を口にした俺に、美莉はゆるく首を振ってみせる。

・・・当たり前だろ?何聞いてんだよ。俺。

自嘲気味に微笑みながら、
「・・・いるものだけ持っていけよ。ミリが住まないなら、俺が住む。・・・急がなくていいけど、・・・・終わったら、教えてくれよ。それまでは、、、もう、今日から、今から、、俺、実家にいるから」
もう一度うなずいた美莉の背中。その表情は伺えない。

ただ、小さくて、か細くて、今にも折れてしまいそうな、美莉の背中。

・・・・本当に、失えるのか?

俺の中で、誰かが俺に問いかける。

・・・そんなこと、知るかよっ。

心で乱暴に答える。

ただ、抱きしめたくて、抱き寄せたくて、
でも、もう、2度と、
俺にはそんなことをする権利などないんだ。

・・・失えるのか?・・・だって?

俺は心で笑う。

・・・失ってるんだ。もう、とっくに。

こぶしを握り締め、俺の中に何度も湧き上がる、
抱き寄せたくて、口づけたくて、抱きしめたくて、
腕の中で、いっそ壊してしまいたいくらいの熱い衝動を必死で堪える。

・・・どのくらいそうしていただろう。

俺はゆっくりと力を抜いて拳を開いてから、美莉に言った。

「美莉、こっち向いてくれよ」

・・・もう一度、顔が見たい。

ゆっくりと顔をあげ、ゆっくりゆっくりこちらを向いた美莉。
何かをあきらめたような、
いや、
何かから解放されたような、
緩い表情。
愛しすぎる美莉。

折れそうな心を必死で叱り飛ばしながら、俺は言った。

「なあ、ミリ、俺も、2つ、お願いがあるんだけど、聞いてくれるか?」

美莉は、ただ黙って俺を見上げる。

・・・ギュッとしていいか?
・・・なんて聞かないよ。
二度と離せなくなりそうだから。

俺は、美莉に触れるつもりはないことを、示すために、
少し、身を引いてから、俺からの願いの1つを口にした。

一つ目の願い。
「幸せになれよ、絶対。」

俺の言葉に、美莉は微かにうなずいた。
そして、静かにたずねる。さっきの俺と同じように。

「・・・・2つ目は?」

俺はミリを、愛しそうに、まぶしそうに見おろしたまま、口にした。その言葉を。

「・・・元気でいてくれよな、・・・ずっと」

そう、手を離す上で、これからも、ずっと願うのは、その2つだけなんだ、美莉。


にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説へ 人気ブログランキングへ ←2コクリでよろしくお願いします。いつもありがとうございます



こちら ぽっバカップルにご注意ください大笑い





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010.03.25 13:09:29
コメント(8) | コメントを書く
[box] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: