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2010.10.21
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その1 その2 その3 その4 その5 その6 その7 その8 その9 その10 その11 その12 その13 その14 その15 その16 の続きです。



ひ:もしもし
?:もしもし、夜分にすいません。サラさんのケータイで間違いないですか?

礼儀正しい様子の几帳面な、でも、聞き覚えのない男の人の声。

・・・・?

ひ:はい。そうですけど。

訝しげに答えた私に、その人は、名乗った。

カ:カトウです。

それは、シホの不倫相手のカトウさんからの電話でした。



なんで番号知ってるんだろう。なんでかけてきたんだろう。私はどうするべきなんだろう。通夜や葬式でのカトウさんの態度に苛立ちを覚えていた私は、あからさまに、とまで言えるかどうか分からないなりに、それなりの、警戒心と不快感をこめて、曖昧に返事をした。

カ:名前だけで分かってくれるんですね。

いい意味で覚えてるわけじゃないんだけどな。なんだか、ピントハズレにややウレシそうな声をあげるカトウさんに戸惑う。

カ:今、少しだけいいですか?
ひ:なんでしょうか?
カ:シホのコトは本当に突然で。・・・サラさんもきっとお疲れでしょうから、単刀直入に申し上げます。一度2人で会えませんか?
ひ:は?

一体何を考えてるんだろう。全く考えが読めなくて、少し、いらだった気持ちになる。でも、カトウさんは意に介した様子もなく、ビジネスな口調で、

カ:実はシホから、、預かっていたものがあるんです。シホには、もう、、返せないから、だとしたら、今はもう、サラさんに渡すべきものだと思うものを。
ひ:なんですか?
カ:・・・それはお会いしたときに。・・・できれば、少し、、、話もしたいですし。。どうでしょう?できれば明日にでも。



カトウさんと会って話す。

考えもしなかった選択肢がいきなり提示されている。混乱したなりに、なんだか少し怖い気もして、

ひ:2人でなければいけませんか?
カ:そうですね。ものがものだけにその方がいいと思います。

・・・一体ナンなんだろう?


カ:見てもらうほうが早いと思うので。
ひ:・・・・

決めかねて黙り込んだ私に、

カ:・・・明日、僕は夕方まで空いています。もしもその気になられたら、お電話ください。番号は着信に残ってますよね。お住まいは、○○市でしたね?お電話いただいたら30分以内に行きますよ。では。

そういって電話は切れた。

なんで私の家のある場所までしってるんだろう?

そんなことぼんやり考えてたら、ケースケがシャワーを終えて戻ってきて、向かいのソファに座った。まだ、恋人じゃなかった頃のケースケ。眠るとき以外は、あと、ひろ。が大泣きするとき以外は、フツーにキョリを置いて座っていた。私が手に持っているケータイを見て、

ケ:電話してたのか?誰と?

少し心配げに問いかけてきた。

シホと別れなかった、そして、お通夜や葬儀でのカトウサンのことはケースケに伝えていた。
だから、きっと、カトウさんから会おうと誘われたなんてこと話したら、頭ごなしに、絶対に会うなっていうだろうなって思った。私もそれがまともな考えだと思う。
だけど、私の心はなぜだか迷っていた。
会うなんて冗談じゃない。あなたと話なんてない。て、いえない感じだった。

シホから預かっている私に渡すべきもの、っていうのももちろん気になるし、
それより何より、
シホが一体、カトウさんの何に惹かれたのか、そこがすごく気になっていて、会って話したら、分かるんじゃないかって思っちゃった。
そんなことなんで分かりたかったんだろう?、別れようとしても別れてくれなかった、オオタくんとの穏やかな幸せを望ませなかった、通夜や葬式で泣きじゃくる、どうしようもない不倫オトコ、そう思っておいてもよかったのに。
だけど、

ひ:・・・別に、なんでもない。

って、ケースケに、答えたときには、もう、心は決まってたのかもしれない。

カトウサンと会って話そうって。

今、振り返って思ってみれば、

よした方がいいって警報、心の中でいっぱい鳴ってた気がする。
それに(きっと)気になってるくせに、(それでもきっと)恋人でもないんだから、と遠慮してその時それ以上、何も聞かなかったケースケの想いに、確かに胸だって痛んだのに。

オオタクンとの約束もあったから、
決して、ヒロトの時の様に自棄になってたわけじゃない。
だけど、シホの死にしっかりと打ちのめされてはいて、マヒしていた頭と心、
そんなときに、カトウサンから連絡が来て、誘われて。

結局は、もう、いない、シホの心に少しでも、
シホの心が感じたことに少しでも寄り添ってみたかったのかなって思う。
シホのことをもっと知りたいという気持ちには抗えなかったていうのが、本音かな。
シホが惹かれて、そのせいで死まで選ぶことになったカトウさんのことをもっとちゃんと知っておきたかった。
そしてもちろん、カトウサンだけが知っているシホの話もききたかった。

だから、私は、次の日、ケースケが仕事で出かけた後に、カトウさんに電話した。
1時間後に駅の西口にあるスイーツのお店で待ち合わせることになった。
ちーこを連れて行くわけには行かないし、ケースケもいないから、
おかあさまに子守をお願いした。
※ちーこを置いて出かけるなんて、当時の私には珍しいことだったので、おかあさまはすごく驚いてたけど、もちろん快く引き受けてくれた。ケアが大変なちーこだったんだけど、それは普段から手伝っていただいてたので問題はなかった。ただ、義実家に連れてくことでケースケにバレナイかだけ、どきどきしたこと覚えてる。幸い?ケースケは、外出の仕事だったから、帰ってくるまではばれなかったんだけど。・・・帰ってきて、ばれた後のお話は、後で書くことになります。

駅の西口までは歩いていった。待ち合わせ場所のスイーツのお店の入り口の横にちょこんと立って、カトウさんが来るのを待っていた。あんまりキョロキョロするのもみっともないから、足元を見ながら、シホのコト、考えてた。

・・・私、何しようとしてるんだろうね。

シホに心の中で話しかけたりもした。そして、相変わらず、シホを思うだけで、涙が出る私。流れ落ちそうになって、慌てて外なこと思い出して、留めようとしたけど、やばいくらい涙がとまんない。ひとり、焦ってたら、目の前に誰かが立った。

カ:サラさんですね?

慌てて涙拭きながら見上げて、

ひ:・・・はい。

ただ、それだけ答えると、私の涙に一瞬驚いた顔をしたカトウさんは、それでも涙のコトには何も触れず、

カ:すいません。車、うまくパーキングみつけられなくて。とりあえず、乗ってくれませんか?

とまくし立てるように言って、

ひ:え?ちょっと、、、

戸惑う私を、引っ張って、ロータリーに停めてあった車に連れてった。
車で来ることは知っていたけれど、乗るのは気が進まなかったから、
でもちゃんと話はできるように、スイーツのお店で待ち合わせたのに。

自分の公衆の場でも止まらない涙に混乱し、
相手の強引さに戸惑っているうちに、
車は、もう、走り出していました。

ちーこのことがいつもココロで気になっているから、なるべく早く帰ろうと思っていたのだけれど、その思いもむなしく、随分長い時間がたってしまった後に、私はこの同じ西口に戻ってくることになりました。

それも、すごく、震えた状態で。





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最終更新日  2010.10.22 00:04:33
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