かめさんの百名山日記
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2023年8月4日、日本百名山、最後の一座である北海道幌尻岳(2052m)に無事に登頂できた。雨男に似つかわしい悪天候で、20ケ所を超える渡渉、そして幌尻山荘からの急登に喘ぎ、爆風のガスガス、眺望ゼロの頂上だったが、同行の仲間とのチームワークで頂を踏む事が出来ました。 今回、幌尻岳が日本百名山最難関だと、なぜ言われてるのか、私なりの振り返り、その心境を綴り、今後、幌尻岳登頂を計画されてる方の参考になればと思います。 今回の登山計画は、北海道遠征期間:2023年8月3日(木)〜6日(日)とし、1日目に東京から新千歳空港からとよぬか山荘までレンタカーで移動、とよぬか山荘泊、2日目とよぬか山荘から幌尻山荘前泊3日目登頂、もしくは、コンデションが良ければそのまま登頂、下山後、幌尻山荘後泊の2つのプランを立てていた。週間天気予報は、前線が北海道北部に停滞、ところによっては大雨、と今週は連日不安定な天気と伝えていた。8月3日、新千歳空港に降り立つと小雨が降っていた。今回のパーティを構成する千葉、静岡、岩手の5名の仲間と合流、レンタカーをピックし、これ以上天気が崩れないようにと願いながら約2時間のドライブでとよぬか山荘へ向かった。連日の悪天候でとよぬか山荘は、キャンセル続出だった。シーンと静まりかえった山荘の宿泊者は、北陸からお越しで幌尻岳に登頂され、後泊の百名山達成された方、お一人のみで、ほぼ貸切状態。 「明日は天候シャトルバスが出るかわからないので、切符は明日出発前に購入してください。」とスタッフから説明を受けて、明日の天気が大丈夫か一抹の不安に。なぜならシャトルバスが出る=沢の渡渉は可能のバロメータだから。 【幌尻岳バッチ】 【レンタカー】 【豊糠小中学校閉校後とよぬか山荘と 【豊糠小中学校閉校記念碑】夕刻は、明日からの幌尻岳登頂成功を願いビールで乾杯。夕食は、山荘名物ジンギスカンで舌鼓。デザートは、私の8月誕生日サパライズで、仲間がケーキを用意してくれた。午後9時、明日、天気が好転してくれる事を信じて消灯。 【ジンギスカン鍋】 【誕生日サパライズケーキ】 【貸切の12人部屋】8月4日午前2時半起床、午前4時予定通りシャトルバスが来てくれた。ヤッター、これで幌尻岳が近づいたとハイテンションに♬ ほとよよぬか山荘から21.6km、午前5時前の第二ゲート到着。時折り日もさして来て、天気は好転の予感。 【第一便シャトルバス】 【第一ゲートを開錠】 【第二ゲート 登山口 とよぬか山荘から21.6km地点】午前5時5分クライムオン。第二ゲートから北電取水口までの8kmの林道歩きでは、午前6時18分、早くもヒグマのウンチ発見。ウンチが転がってるところは、熊鈴だけでは、物足りないとホイッスルを吹きながら進む。突然、遭遇しないか、以前のトムラウシのトラウマが頭をよぎる。怖!! 【林道8kmを歩く】 【日高山脈国定公園】 【5km地点通過】 【ヒグマの糞が至るとこに】 【7km地点】 【北電取水口】午前7時16分、8kmの林道を歩き切り、午前いよいよ渡渉区間に入る。手前の削り部分は、クサリが設置されているが、古いクサリでアンカーがところどころ抜けており、20kg近い装備で自重をかけるのは危険と、濡れた足場を滑らないように三点支持で進む。昨年7月の西吾妻での沢への転落してアキレス腱完全断裂したトラウマが頭をよぎる。しばらく歩くと、古いものではあるが、木の幹にヒグマの爪後が深く刻まれているものを発見。こんなのに、襲われたらひとたまりも無いなぁとビビる。 【額平川に沿って歩く】 【登山道は最初は平坦】 【ヒグマの爪跡】 【額平川の淵を滑らないように歩く】 【だんだん狭くなる登山道】 【削りの部分は、転落注意!!】渡渉開始点に到着。立札に、「ここの渡渉で怖いと感じたら勇気をもって引き返しましょう。命あっての登山です。」とある。この最初の渡渉点が増水していて手こずるようであれば、とてもこの先の約2km、20数ケ所の渡渉はできない事を意味している。 【渡渉の注意書き】 【ここで渡渉を手こずるようであればアウト】 【連日の雨にも関わらず増水は見られず】 【渡渉注意看板】連日雨は降っていたものの最初の渡渉は、くるぶし上ぐらいで問題無し。モンベルのサワーシューズ(沢履)は滑らず、かつサワーソックスは、浸水しても自らの体温で温かく感じ快適であったた。途中で空き缶を下ろす幌尻山荘のスタッフの方と出会い挨拶。天気が崩れそうなので、今日中に登頂をする旨を伝え小屋への下山が遅くなる旨伝える。その後も、渡渉は、深い所で膝上20cmぐらい。水圧はあるものの危険を感じる箇所は1カ所もなく、無事に渡渉最終地点まで辿りついた。渡渉点を終えると、幌尻山荘が見えて来た。ホッとする瞬間だった。 【渡渉に唯一かかる橋】 【滑って転落しないように渡る】 【渡渉も慣れてきた】 【皆、順調に渡渉を重ねた】 【安全確保の為、メットを着用】 【幌尻山荘 最後の渡渉地点】午前10時10分幌尻山荘着。スタッフが出迎えてくれてチェクイン。まず氏名、住所と行動予定を記入して、携帯トイレを1000円で購入。幌尻山荘では、色々なルール事がある。まずザックの山荘内の持ち込みは禁止。小雨振り始める中、屋外で仕分けと沢で濡れた衣服の着替え、沢履を脱いで屋外の下駄箱へ収納。食料、着替え、シュラフは、2階へ運び、指定された場所に借りたマットを敷き、場所を確保。 【幌尻山荘の全景】 【幌尻山荘2階の寝室①】 【幌尻山荘2階の寝室②】今回はアタックザックを新調していたので、ある程度は、事前に分別整理していたものの、想定以上に時間がかかる。スタッフからは、「明日は天気が悪くなる可能性が高いので、今日頂上アタックした方が良いでしょう。でも往復で最低7時間かかります。今からだとギリギリだと思います。午後6時ぐらいには薄暗くなって来るので午後6時半までに戻って来てください。夕食も屋外でシート張ったところで取っていただかねばなりませんし、消灯時間も午後7時半なので、遅くなると他の宿泊予定グループに迷惑がかかりますから。下山時間は、今からだとギリギリです。」とも言われ、その言葉に焦りながら出発準備ととよぬか山荘で作ってもらったおにぎりを口に押し込む。ザックは、床下の収納倉庫に納めたが、その時、どこに置いたかスマホが無いことに気がついた。2階もザックもアタックザックも探すが、見つからない。もうこのまま時間がかかれば、スタッフから、「時間切れ。もう登るな!!」と言われかねないので、スマホ無しで登頂する事に。とりあえず私のアップルウォッチウルトラで、位置情報や高度、脈拍、血中酸素濃度は拾えるので、行動自体は問題ないが、時間がなく水筒に沢水をエキノコックス感染しないように浄水して補充する事もできなかった。その時の水の残量は、約1リットル。約2時間登ると「命の泉」と呼ばれる水場があるので、足らなければ、そこで給水することとした。小雨降る幌尻山荘(標高950m)から午前11時15分登頂開始。樹林帯なので、雨はさほどではないが、小屋からは、見上げるように立ち上がる急登に加えて、レインウェアが蒸せるように暑く、体力がどんどん奪われていく。最初、標高差100mずつ刻み小休止を、仲間に伝えて先頭をとらせてもらうが、「スマホどこにいってしまったんだろう? 個人情報が詰まっている。見つからないとどうしよう。」と考えるだけで登ることに集中できない。そのうち300m程度ほど登ったところで、足が思うように上がらずペースも落ちてる自分に気がつく。どうやら渡渉で足を冷やしたのが、昨年、沢から転落して断裂したアキレス腱に影響が出ているかとも思った。「うーん、あと標高差1000m近く、果たして登り切れるか? 仮に登る事が出来てもリミットの午後6時半までに下山できるか?」と自問自答の中、不安が不安を呼び、ますますテンションダウン。そのうちに当初の標高100m登るごとの小休止どころか50mぐらい登るだけで、今度は太ももが攣り初めて来た。僕だけここで引き返して、他の5人だけで登ってもらおうかとも思った。「やっぱ今日は戻ろうかな?当初の予定通り明日の登頂にしようかな?」と思わず弱気の発言が口に出る。仲間からは、「4年も待って、やっとここまで来たんだよ。あと2時間頑張れば頂上だよ。休憩しながらでも登ろう。午後6時半の下山を今は気にしなくても良いから」と。気を取り直して、登る。また足が攣る。ただ足が攣った時の筋肉マッサージの仕方は、アキレス腱断裂の時のリハビリで整体師の先生に手解きをいただき心得ているので、その方法で、攣ってはマッサージ、登る、攣る、マッサージを繰り返し、午後1時13分、なんとか「命の泉」標高1550mまで到達。 【標高1550mの水場 命の泉】 【森林限界を越えるとガスガス】仲間の飲料に余裕があるとの事、少し下がらないといけない水場をパスして、先を進む。樹林帯を抜けるとハイマツ帯となり視界が開けて来た。少しきぶんも良くなりペースをあげる事が出来るようになって来た。ガスガスで時折、強風が吹き抜けてゆく。周囲はお花畑に変わって来ていた。熊のウンチもところどころに転がっているので、そんな場所では、ホイッスルを吹きまくって先を進む。しかし爆風で獣臭も辺りの物音もかき消されて、もはやヒグマなどを意識する事も難しい。 そんな中、先に登頂アタックしていた単独行の登山者が下山して来た。「頂上は爆風でしたぁ」と。そこで「小屋のスタッフに、下山は午後7時ぐらいになる事を伝えてもらえますか」と仲間から伝えてもらい、先を急ぐ。相変わらず登りがキツくなると足の攣りが出て来るので、何度かマッサージの小休止をしながら、午後3時16分、ようやく新冠コース(新冠ポロジリ山荘方面)との分岐点(標高2013m)に到着。 【ハイマツの稜線部を歩く】 【ヒグマがいないか確認しながら進む】 【霧雨が雨に、風も強くなって来た】 【新冠コースとの分岐点】頂上まで、あと10分、標高差は40m程度。そして夢の幌尻岳頂上(2052.4m)に午後3時30分登頂。そこはガスガス、爆風、眺望ゼロ、超雨男の僕には似つかわしい13年2ケ月の月日をかけた日本百名山完登の瞬間だった。思わず泣けた。今回の6名のパーティは、最高のチームだった。体調不良の僕のフォロー、叱咤、チームワークで乗り切ることができた。 【幌尻岳(2052m)頂上】 【ありがとう日本百名山完登!!】 【暴風で記念撮影も容易ではなかった頂上】 【昭和50年7月に遭難された佐川さんの慰霊碑】爆風と雨で記念撮影もそこそこに午後3時45分、下山開始。下山3時間とすると午後7時には、なんとか下山できそうだと思った。しかも下リは、攣る事もないし、通常コースタイムの200%程度で下山出来る余裕を感じていたからだ。加えて今回の登頂の為に新調したスカルパ エクイリビウム ST GTXのグリップ力は、素晴らしく、ぬかるんだ下リの登山道で、その効力を発揮してくれた。途中で松ぼっくりを齧るナキウサギも可愛い姿を見せてくれた。樹林帯の手前では、いよいよ雨が激しくなりレインを着用、「命の泉」のあたりは、樹林帯になるので、そこまでペースをあげて下山した。命の泉を超えたところで、仲間の一人が転倒、靭帯を損傷したようだと。幸い看護師の山トモの応急処置で痛みを堪えながらも、なんとか下山は出来そうだと。6人が一緒では、午後7時までに下山出来ないと判断して、3人ずつ2組にパーティーを分けて、私を含めて3人が先に下山開始、午後6時45分、幌尻山荘に到着。スタッフにすぐに状況を報告。スタッフは「救助に行きましょうか?」と心良く、ちょうど小屋に詰めておられた平取町山岳会の方と共に申し出てくれた。ただゆっくりながら二人がフォローして歩けてるので、大丈夫だと思うと伝えた。すぐに翌日の下山方法をスタッフと相談、麓のとよぬか山荘とも無線連絡を取って頂いたところ、自力で北電取水口まで下山できない場合は、道警か防災ヘリでとよぬか山荘へ、そこから病院へ救急車で搬送することになるとの事。でも来週後半まで天候が悪くヘリポートが上空から確認出来ない可能性が高く、1週間小屋に滞在してもらうことになると。そんなやりとりをしている中、予想より早く午後7時15分ぐらいに、仲間3人が下山して来た。痛みが酷く辛そうであったが、なんとか明日、自力下山できそうとのげんに、まずは一安心。 幌尻山荘は、この日、私たちのパーティ以外に約10名。翌朝午前2時半起きで、頂上を目指すと言われていて、既に、皆さんは2階で眠りについていた。皆さんを起こさないように、細心の注意をして、食材を分別していたスタックバックから取り出して屋外へ。幸い雨は止んでいて、無事下山できたことに、ささやかに350ml800円の缶ビールで乾杯。レトルトハワイアンシュリンプカレーを温めて、ワカメアルファ米ご飯に投入、めちゃくちゃな組み合わせであったが、それでも十分に美味かった。皆で明日の下山方法を再確認。天気がこのまま悪くならず沢の増水がなければ、午前4時出発、途中まで靭帯を痛めた仲間をフォローしながら渡渉、一方で幌尻山荘のスタッフ、山岳会のメンバーが林道終点の北電取水口から渡渉中間点まで迎えに来てもらえることを確認した。 気になっていたスマホを改めて探すが見つからない。時間は午後9時半を過ぎており、諦めてシュラフに潜り込んだ。着替えもできていないため、汗と雨で湿った衣服が気持ち悪い上、周囲のイビキで、疲れ果てているのに全く寝られず、そのまま午前2時半を迎えた。ゴソゴソ周囲が起き始め準備をしている。耳をすますと雨が屋根を叩いてるようだった。これ沢が増水してるんじゃないか?と一抹の不安が。気になって、外に出てみると小雨が降りしきっていた。小屋のスタッフは、双眼鏡で水位の定点観察をしているようであった。仲間の足の具合は、痛みはあるものの、なんとか下山できそうとのこと、あとは、小屋のスタッフから渡渉オッケーの判断を待った。午前4時、幸いにも雨も小康状態になり、沢の増水も見られないと下山オッケーの許可を得た。気になっていた紛失スマホは、なんと出発準備をしていたらザックのサイドポケットに入っていたのを発見!!昨日から気にし続けたスマホ、何よりもホッとした瞬間だった。沢履に履き替えようと下駄箱に行くと、なんと沢履がネズミに齧られている。沢履なんて美味いのか? 新品なのにショック。まぁ、思い出にネズミくん許してやろう。沢履まで齧られるので、ザックの中に食べ物を入れたまま、倉庫にザックを収納してはいけない。間違いなく喰われる。スタッフは、熊を誘き寄せるから食料は2階にあげるようにと指示されたが、熊どころかネズミ対策でもあることを、これから登る人たちには知っていて欲しい。 【午前4時15分 一睡もできず下山開始】 【下山も慎重に下る】午前4時15分幌尻山荘を出発。靭帯を痛めた仲間も予想外に早いペースで渡渉を重ねることができた。午前5時5分、下から救助に来てもらった平取町山岳会の方々、幌尻山荘のスタッフ4名と無事に合流。皆さんフレンドリーで嫌な顔一つせず、始終笑顔で、流れの早い深いところでは、棍棒を川底に突き刺し渡渉をフォローしてくれた。 【平取町山岳会の方々と合流】 【山岳会、幌尻山荘の方のフォローで下山開始】 【削り部分は慎重に①】 【削り部分は慎重に②】 【北電取水口まであとわずか①】 【北電取水口まであとわずか②】無事に午前6時45分、約2.8kmの渡渉を終えて北電取水口に到着した。ここで靭帯を痛めた仲間と看護師でもある山トモは、ランクルで登山口の第二ゲートへ。第二ゲートからは救急車で平取町の病院へ搬送いただいた。幌尻山荘のスタッフ、平取山岳会、消防署、病院の皆さんの連携により、大事に至ることなく全員が無事に下山が出来たことに、この場を借りて、深く御礼申し上げます。 【平取町国民健康保険病院】 【搬送中の仲間】残る私たち4人は、午前9時30分発の第一便のシャトルバスに乗車する為、8kmの林道を急いだ。午前9時無事に第二ゲートに到着、既にシャトルバスは到着していた。終わったという達成感に満ちた自分がいた。バスの車内販売のコーラを購入、がぶ飲み。めちゃくちゃ美味かった。午前10時半前にとよぬか山荘に到着、記念のTシャツなどお土産を購入、その後、靭帯を痛めた仲間の治療を終えたとの連絡を受け、迎えに平取町の病院へ。幸い骨にも異常はなく捻挫という診断でヤレヤレ。2日間の汗を流す為、道の駅に隣接する温泉へ。1日早い下山に、急遽、小樽で打ち上げをしようと、小樽のホテルを予約した。その晩は、近くの居酒屋で、改めて登頂できた喜び、そして無事に全員が下山出来た感謝を仲間と噛み締めた。【幌尻岳で出会った花たち】 こうして登り続けた13年2ケ月の日本百名山もフィナーレを迎え、次の目標は、新日本百名山へバトンを繋ぎたいと思います。 【コースタイム】 1日目:第二ゲートー幌尻山荘ー幌尻岳頂上ー幌尻山荘(泊) 登り:8時間25分(14.6km ) 下り:3時間(3.8km)2日目:幌尻山荘ー第二ゲート 下り:4時間45分(10.8km ) 合計:29.2km 【累積標高差】・Up 1790m ・Down 227m
2023.08.04
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