46話

第二十四章  偽りの希望




ショットガンを構えた希莉はもうすでに

さっきまで淳達といた時の希莉の表情ではなかった。

そう・・・目は完璧にやる気の・・・

このゲームで優勝を勝ち取る気が満々の目だった。

「は!やっぱゲームに乗ったのかよ?俺は最初からこうなること・・

予想してい・・・」

「ドパンッ」

ショットガンの銃声が鳴り響く・・・

どうやら小倉達に怪我はないようだ。

「これで私が本気だってことがわかった?

次は外さないけど・・・音立てちゃったし・・」

「・・・沢近はどうした?」「あんたに質問の権利ないのよ!」

小倉はさらにすごみを増して問い詰める。

「まさか殺してんじゃねぇだろうな?」

「どーだか・・」

クスリと笑いながら希莉はショットガンの銃口を小倉に向ける。

その瞬間ポケットから小倉は工具の中にあったレンチを

上空にポイっと投げた。

段々と日が昇ってきていた空が照らしたレンチは

キラリと光り、上空でチカチカ弧を描く。

当然希莉も一瞬それにつられて視線を小倉から外してしまう。

「うおおお」

小倉がベレッタを構えて希莉に銃口を向ける。

しかし希莉はそれを最初から読んでいたかのように

レンチを見上げていた時にはもう

日本刀を小倉に向かって投げていた。

距離5Mといったところ・・届かなくも無い距離だ。

日本刀が回転しながら向かってくる。

小倉はその時にはトリガーに指を掛けていたのだが

瞬時にかわし横に飛び込んだ体制のまま再び射撃を行おうとする。

しかしこれも止められる・・・。

希莉はその時にレンチをその手につかみ再び突進しながら

投げ返していたからだ。ベレッタの銃口目掛けて・・・。

「ドンッ」ベレッタの銃弾はレンチに丁度ぶつかり

粉々になった。

その頃になると日本刀もカランと床に落ち静止する。

再び希莉が構えたのはやはりショットガン・・・。

驚くほどの戦闘力である・・・。

もしかしたら津部や関内と同等・・・

いやそれをも凌ぐ戦闘力かもしれない・・・。

「ドンッ」

・・・・・一瞬空気が止まる・・・

その銃声はショットガンでもベレッタでもなかった。

「こっちも小倉を殺されるのは勘弁して欲しいって・・わけ!!」

「ドンッ」

そこにはワルサーを装備していた晶がいた。

立て続けに撃つが2発とも外していた。

(初めて撃つのだからそれもそうだろうが・・)

銃を撃った晶を見て舞は不安そうにしている。

「あんたも・・・邪魔・・・」

希莉は晶を見ながらも小倉の方へショットガンを向けたままだ。

ショットガンを突きつけたままこう言った。

「塚本・・・小倉を殺されたくなかったら日本刀・・拾って」

その言葉に一瞬舞はビクッとし晶に諭されて

日本刀を拾いに行った・・・・。

「は・・い・・」

それを受け取ったら今度は小倉にベレッタを返すよう言う。

「ベレッタだけでも返してよ・・・」

日本刀の刃先が首筋に向いている・・・。

ここで晶が意を決したようにこう行った。

「仕方ない・・小倉君・・返しちゃいなさい・・・

ここで小倉君に死なれても私としても困るから・・・」

小倉は一瞬考え込んだ挙句

「ほらよ・・」

そう言ってベレッタを渡した。日本刀の刃先は以前首筋に向いたままだ。

「そういやあんた達・・・何で小倉と一緒に?」

希莉は今この状況で一番聞きたかったことを聞いた。

”脱出策があるからよ”そう紙に荒く書かれていた書いたのは晶だ。

紙に何故わざわざ書いて伝えようとしているのか

希莉には分かったようだ。

すぐに首輪に手を掛ける・・晶はそれを見てコクリと頷く。

”みんな・・一回武器捨てて話そうよ希莉だって

まだ話し合いの余地があるんじゃないかな?”

舞がこの張り裂けそうな冷たい空気を破ろうと

必死に紙に書いた。

「そんなのはどうだっていいんだ・・」

とりあえず会話を成立させようと小倉は言った。

「ふーん・・・」

希莉は日本刀もショットガンもおろして紙に書き始めた。

”そうやってうまく小倉の口車に乗せられてるんだ・・

正直あんたら騙されてるよ・・”

晶はそれをみてこう書いた。

”そうかもしれないわね・・でも私達どうしてもこんなゲームから

脱出したいのよ・・・例えもし小倉が言ってることが嘘だとしても

今は信じるしかないじゃない・・策があることを・・”

「・・・・・」

希莉はすこし考えこう言いながらも紙に書いた。

「もうあんたたちに用は無いよ・・」

”私はあんた達と一緒にいる気はないけど・・・

もし愛理や島村達と再会できたらこのこと伝えてあげる・・・”

そして希莉は立ち去った。

去り際にこう呟いていた気がする・・・

「がんばりなよ・・・」

「さてと・・いつまでもこんな所にいられねぇぞ・・・

銃声聞きつけて誰か来るかもしれない・・明るくなってきたし・・

移動するぞ・・」

今ある希望が偽りだったとしても・・・

今は信じるしかない・・・。

3人は移動を開始した。

                【残り15名】



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