山への情熱 音楽への愛

山への情熱 音楽への愛

2010年12月09日
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藤谷 治の「船に乗れ」全3巻を1ヶ月ほどかかって読み終わった。1冊1冊が途中でやめられない面白さだったのだが、11月は忙しくて続けて読めず時間がかかった。終わりまで読み、それなりの結末を得て気持ちが落ち着くとともに感慨があった。人間の成長とか人生についてじんわりと感じるものがあった。

12.9船にのれ1.jpg12.9船に乗れ2.jpg12.9船にのれ3.jpg

この長い青春音楽小説の主人公は高校生だが、まるで私の大学生時代の出来事のように感じた。主人公サトルは金持ちかつ音楽一家の坊ちゃんで音楽環境にこの上なく恵まれた少年だが、私は貧しい農家の娘で家にはピアノもオルガンもなく、父親はと言えば「女の子に勉強は要らない、本など読む暇があったら家の手伝いをしろ」という人だった。実際音楽を学びたくても学ぶ環境になく、その後自分が音楽を学べたことは今思えば奇跡にすら思える。

でも当時私はこのサトルに負けないほど音楽への情熱に燃えていた。大学で音楽を学び、オーケストラでバイオリンに熱中した。周囲には憧れの音楽・先生・先輩に満ち溢れていて青春は音楽とともに輝いていたのだった。

この本にはそんな若い時代の音楽体験や恋愛体験、音楽に熱中し夢見るだけだった少年が現実の社会や人間関係に傷ついたり悩んだりしながら普通の大人になっていく過程が実に生き生きと描かれている。驚くことは作者は大人になってかなりの年月を経て、思い出しながら書いたと思うのに、演奏や音楽の詳細、その時の情景を克明に記述していることである。それもす体験者でなければ書けない内容ばかりでいちいち納得させられた。

「船に乗れ」という題名は3巻の終わりまで出て来ない。これは、ニーチェの著作『悦ばしき知識』に出てくる言葉らしい。この本は音楽だけでなく哲学にも満ちているのだった。3巻の後半からサトルの辛い選択と現実が迫ってきて、大人になって生きていくことが容赦なく突きつけられる。最後がこの長い物語のエンディングにふさわしく特にすばらしい。久しぶりに音楽を題材にしながら人生を感じさせるいい本を読んだ。ノダメも同じように青春と音楽を題材にしているが全く異なっている。

12.9船に乗れポスター.jpg 本を紹介するポスター






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Last updated  2010年12月09日 20時30分21秒
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