3月16日行者小屋を7時前に出発、文三郎尾根方面にルートを取り、途中からトラバースして赤岳沢に入る。めったに人が入らないルートでトレースがないためワカンを履いて潜り込みを防ぐ。この時点では天気は悪くなく文三郎尾根を登る沢山の登山者や主稜に取り付くクライマーがはっきり見え、阿弥陀岳には朝日が輝いて見事だった。
沢を詰めた地点でアンザイレンしダブルアックスで登攀開始。誰もいなくて私たちだけ、ショルダー左を独占して心落ち着いて臨めた。


下の2枚を除くすべて PHOTO by H.Yamashita 元気一杯です
この赤岳ショルダー左ルートはミックスを主とした全5ピッチ、リッジの頭に出て赤岳主稜線・地蔵尾根へ突き抜け、更に赤岳まで登り詰めて下山というルートである。第1ピッチの出始めはちょっとした岩だがほとんど雪稜。2Pからは岩と雪のミックス地帯で特に難しい部分は無く、ダブルアックスで順調によじ登る。


PHOTO by M.Matubara
急な雪壁、岩稜、ルンゼ、岩場と変化に富んでいてとても楽しい。右手には男性的な阿弥陀岳と中岳がくっきりと見えて気持がスカッと晴れる。


第4P終わり
1ピッチ目、2ピッチ目は非常に寒くて手がかじかんだ。加えて3ピッチ目当たりから風がどんどん強くなり寒さと強風との戦いになった。5ピッチ目を終了して、稜線の地蔵尾根に抜けるとすさまじい強風で軽い私は何度も吹き飛ばされそうになった。この悪天のため赤岳山頂に登るのは中止。これは適切な判断でもし山頂に行ったりしていたら帰還できたかどうか分からないと思う。
風に薙ぎ倒されそうになるのを踏ん張って踏ん張って下り、赤岳展望荘へ到着。ここは鞍部になっているのだが風が吹きすさび隠れる場所もない。トイレをしてすぐ下山。下から吹き上げる風・雪・氷のつぶてが顔面を直撃し、目を開けていられない。前を向いて下れないので後ろ向きのダガーポジションで一歩一歩下った。ニット帽が凍ってつららが目の上に垂れ下がり視界を狭める。顔は氷のつぶてに叩かれて凍傷になるかと思うほど痛い。一刻も早くこの強風地帯を切りぬけて樹林帯に入りたい。左手はもう感覚が無くてエビのようにこわばって曲がったままでアックスを落とさないように押さえているのがやっと。右手だけで辛うじてアックスを使い、耐えつつ下る。
やっと高度が下がって風も弱くなり樹林帯に入ると嘘のような穏やかさ。瞬く間に行者小屋に到着。登攀装備を脱いでトレッキングスタイルで南沢を気持ち良く下った。下界はおだやかな晴天だった。こんな強風と寒さの中で登山したのは初めてで様々な意味で貴重な山行となった。
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