メートル・ド・テル徒然草

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エルネスト1969

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Oct 4, 2005
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 「社会」という言葉、小中学校の教科の名前ではありません。辞書を引くと「人間の共同生活の場」と、あります。
 「人間社会」、「現代社会」と頻繁に使われますので、随分昔からあった言葉のような気がしますが、実は「社会」言う言葉が使われだしたのは明治10年頃。一説には福沢諭吉が英語のSocietyを訳した際の造語であったともいわれています。
 という事は、明らかに「社会」とは江戸時代末期に西洋諸国の圧力で日本が開国してから後に生まれた認識であったという事です。それまでの日本には「社会」は存在していなかったのです。

 では、それまでの日本において「人間の共同生活の場」を何と呼んでいたか。それが「世間」です。考えてもみて下さい。古くからの格言・諺に「世間」という言葉は度々登場しますが「社会」という言葉は出てきません。

 日本人は人と会った時、最初の挨拶として「今日は暑いですね。」「今日はいい天気ですね。」声をかける事が多いのです。これは、お互いが同じ世間を共有している事を確認している事の表れと言えます。
 手紙をしたためる時に「残暑とはいえ、まだまだ暑い日が、、、」と書きはじめたりしますが、宛先がオーストラリアだったりしたら季節は逆ですので暑いどころか冬の真っ最中のはずですよね。

 フランス料理店で、「お箸で食べるフランス料理」を謳うお店があります。ただ、いつも思うのは日本人が苦手意識を持つのは、ナイフ・フォークの扱いがあるからだけでは無いと思うのです。

 フランス料理店において敷居が高く感じられるのは、また、ホテルのロビーにおいて日本の旅館におけるようにくつろげないのは、そこにあるのが「社会」であるからです。

 日本の料亭においては、高級店であれば皆個室を与えられます。個室は他者が介在しない空間ですので、上着を脱ごうが、ネクタイでねじり鉢巻きをしようが個々の自由です。サーヴィスを行ってくれる中居さんも個室という世間に入ってくる人なのですから、何ら気兼ねする事は無いとも言えます。


 また、レストランのホールにおいては、自分達以外の他者、レストランのスタッフだけでなく他のテーブルの、違う世間から来られたお客様に見られる事も意識しなければならないからなのです。

 例えば、日本で一流のレストランで食事と言えば、少々の緊張も伴います。しかし、同じレストランでもこれが知人の結婚披露宴で招かれた場合など、フランス料理店だから緊張するというような事は少なからず無くなります。貸切になる事によって生まれる、「社会」であったレストランのホールが、皆旧知の人間、あるいは同じ「世間」に属する人どおしの集まりである事がホールを「世間」に変化させるからなのです。

 サーヴィスは心であるというのは確かなのですが、サーヴィスにおける「心」とは「記憶と経験から生まれてくる行動力」だと私は考えます。同じ世間であれば皆同じような経験を持っているだろうという考えが大前提に、日本人はサーヴィスにやたらと「心」を強調する節があります。

 日本へ外国のお客様を招いたある会社が、よかれと思って日本で最も高級とされる料亭旅館を手配しました。さぞかし喜んで帰ってくれただろうと思いきや、後々随分とクレームを述べられる事になったそうです。
 お客様が言うには、まず、プライベートが尊重されていない、という事。食事の時間も個人を尊重することなく勝手に決められるし、知らない間に勝手に部屋に入ってきて布団を敷いていくとはなんたるプライバシーの侵害だと。

 日本のサーヴィスにおけるホスピタリティの部分は非常に優れていると思います。それを再構築していく術は欧米諸国から導入されたファストフード、ファミリーレストランの興隆を見ても明らかです。また、サーヴィスにおけるテクニックにおいても、日本人のほうが明らかに綺麗で器用であるともいわれています。
 しかし、「サーヴィス」を「奉仕・つとめ・給仕」と日本語で訳した時に、それが意味するものの成り立ってきた過程が違っているのです。



と、ここまで書いて、オチを考えて無い事に気付きました。こむずかしい話は私には似合わないでしょうか…(^^;)






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Last updated  Oct 5, 2005 12:48:28 AM
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Comments

背番号のないエースG @ チョコレート 「風の子サッちゃん」 ~ Tiny Poem ~…
坂東太郎G @ 「辛味調味料」そして考察(01/16) 「石垣の塩」に、上記の内容について記載…
エルネスト1969@ Re[1]:ホスピタリティは「人」ありき(10/04) はな。さんへ コメントありがとうございま…

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