メートル・ド・テル徒然草

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エルネスト1969

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Oct 30, 2005
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最近、「宮大工千年の知恵」(松浦昭次著:詳伝社黄金文庫)という本を読みました。

フレンチのメートル・ド・テルがそんな本読むのかァ?と思われる方もいらっしゃいますでしょうが、大変面白かったです。

この中で宮大工職人の見習いの頃の話が出てくるんですが、昔の職人というのは、手取り足取りモノを教え込むのでは無かったという事。

「…あえて何も教えない。すると弟子は困って何とかして仕事を覚えようとする。ああではないか、こうではないかと自分の頭をはたらかせながら仕事を覚えていけば、頭と身体で覚えていく事になります。それでなくては応用もきかないし、自分なりの工夫というものも出てこない。
だから教えないというのも教育法なのです。」

料理業界というのも職人気質が根強く残った世界です。フランス料理においてもそうでした。

私がこの業界に入った頃は、

「仕事は盗んで覚えるんだ!背中を見て学べ!」

  と、



という時代の端境期。

私は職場において部下をあまりほめません。
というか、ほめ言葉をあんまり知らないようです。

この年になれば、部下も後輩も出来てきます。

努力する人は好きです。しかし、努力は結果を伴わないと意味が無いのも社会のシビアさです。
仕事における結果は、一歩越えたところにまた新しい結果が求められます。

では、「結果を求める人」とは誰を指すのでしょう?求めるのは経営者や上司ではありません。
結果を出した「本人」です。そんな人ほど、ほめてあげたい。

となれば「ほめてあげたい人」に与えるべきものは、クリヤーすべきバーの高さを上げてやる事ではないでしょうか。
それがその人に対する評価だと思います。

昨日今日、この世界に入ってきた若い人でも、彼等がこの仕事を続けていく以上、彼等にも後輩が出来ます。今現在の時点では、専門学校生かも知れません。小中学生かも、また、もしかしたらまだ生まれてない子かも知れません。




 若い人は周りに充分な環境があっても、初めて社会に入った職場が自分の知るすべてになってしまいます。高級ワインがバンバン売れてても、フランス語が飛び交ってても、面倒な事だとばかり思えてメリットの部分にはなかなか気付かないものです。

「馬を水飲み場に連れて行っても、

  馬が飲みたがら無ければ水を飲ませることはできない。」

中国の諺だったでしょうか。はっきりとは覚えていないのですが。

確かに、馬が水を飲みたく無いのなら水飲み場が目の前にあっても水は飲まないでしょう。



馬に跨がり、鞭を入れるのもひとつの方法です。なだめすかして一緒に並走するのもひとつです。
いづれにしても咽が乾くまでつきあわねばなりません。

いつか、彼等が我々を越える時が来ます。その時、初めて我々は自分にかせた「結果が出た」と感じられる。そうありたいと思います。







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Last updated  Oct 31, 2005 02:02:23 AM
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Comments

背番号のないエースG @ チョコレート 「風の子サッちゃん」 ~ Tiny Poem ~…
坂東太郎G @ 「辛味調味料」そして考察(01/16) 「石垣の塩」に、上記の内容について記載…
エルネスト1969@ Re[1]:ホスピタリティは「人」ありき(10/04) はな。さんへ コメントありがとうございま…

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