メートル・ド・テル徒然草

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エルネスト1969

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Mar 6, 2006
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(昨日の続き)


 経済学において、価格は「需要と供給」の差で成り立っているといわれます。欲しがる人が多くて、生産される商品が少なければ自ずと値段は上がっていくのが原則です。

 最近、食に関する様々な問題が露呈しているところから、和牛の値段は上がって来ています。
 和牛の値段が上がると、さぞかし、生産農家は儲かっているだろう。と思っていても、実はそうではありません。和牛が「ブランド化」されて値段が上がって来ても、食品とはそもそもが「生き物」であることから事情は少々複雑です。

 高級レストランやステーキハウス、鉄板焼のお店などで需要があるのは、「フィレ」「ロース」と言った部分になります。
 牛一頭は500キロ程の体矩があるのですが、そのうちフィレは2本あり2つ合わせても10キロ程です。
牛1頭が仮に100万円するとして、50分の1のフィレだけを残して、他のすべてを廃棄してしまっては、フィレ一本あたりが50万円になってしまいます。しかし、牛の他の部位、例えば、モモ肉だとか、ほほ肉、牛テールといった部位に買い手がつかないというのが現状です。
 内臓に関しては、ホルモンとして焼肉店に卸せばよさそうな物ですが、和牛は穀物しか与えられずに成長させられていますので、草を食べて成長している牛と違って内臓は食用に向いていません。

 残念なことに、牛からフィレだけを取り出す技術も、フィレ肉だけで出来た牛というのもありえないのです。 他の部位の売り先が確保できる予想が立って初めて屠殺出来ることが推測できます。


 牛をお肉に変えずに、つまり屠殺せずに成長させつづければ、その分飼料代もかかりますし、世話をする人間の人件費もコストとしてかかってきます。
 コストとは土地・設備代、牛の飼料代,そして人件費。人件費には多分、獣医師なども含まれるはずです。

 希少と言われる銘柄和牛の肉を牛1頭分購入するのも、フィレとロースの部分だけを購入するのも金額的には大差がないと推測しています。

 高級な「もも肉」、高級な「ホホ肉」の購入先を探しておく必要を鑑みれば、どちらかの店鋪が1頭分を丸々買ってくれることは、ロスなくして販売出来る事から、生産者にとってはありがたい話です。

 ソムリエとしての知識を活かすなら、これは「DRCアソートセット」と同じ販売方法です。本当に欲しいのは「ロマネ・コンティ」と「ラ・ターシュ」だけであったとしても、「ロマネ・サンヴィヴァン」も「エシェゾー」も一緒で無いと売ってくれない。というのに似ています。 

 実は、日本の和牛の流通ルートはそもそも2つあって、半頭分の「枝肉」(映画「ロッキー」でロッキーが、肉屋の冷蔵庫で練習用に叩いていた、首から下の肉全体の様子)と個々の部位、例えばロース、フィレ、イチボ(お尻)、バラ、、、などに解体した「部分肉」とは卸し元が違うのです。

 こういった事情から各生産者においては「ブランド牛」戦略があります。


(…続く)






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Last updated  Mar 8, 2006 11:05:08 AM
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Comments

背番号のないエースG @ チョコレート 「風の子サッちゃん」 ~ Tiny Poem ~…
坂東太郎G @ 「辛味調味料」そして考察(01/16) 「石垣の塩」に、上記の内容について記載…
エルネスト1969@ Re[1]:ホスピタリティは「人」ありき(10/04) はな。さんへ コメントありがとうございま…

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