かえりみち

かえりみち

2009/02/09
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カテゴリ: 四国遍路
『俄(にわか)』
・物事が急に起こるさま。突然。
・ 一時的であるさま。かりそめであるさま。
(大辞泉より)

職場の上司の車に乗せてもらい、三坂峠に着いたのが2009年(平成二十一年)2月8日7時07分のことだった。これより壮大な旅が始まるのである。

「四国遍路(しこくへんろ)」

弘法大師、空海が修行した四国八十八箇所を巡礼することである。主な廻り方は徳島県の一番、霊前寺をスタートして高知県、愛媛県を経由して香川県の八十八番、大窪寺に至る1400キロの巡礼である。本来は一回で巡礼するのだが、わたくし学生にして時間もお金もない。だから暇を見つけて時間のある時に回ろうというものである。

だが、全行程徒歩というルールだけは破るわけにはいかない。そういうわけで私は三坂峠の頂に立った。

01・三坂峠.jpg
↑三坂峠(愛媛県久万高原町三坂)



徒歩で三坂峠を下りるのだが、車道とは別の道を使う。砥部に下りる道ではなく、久谷に下りる峠道だ。細い杉林の道を颯爽と下りる。

02・峠道.jpg
↑峠を下りる

03・朝霞.jpg
↑朝霞

04・鍋割坂.jpg
↑鍋割坂

旅人が鍋を割ってしまうほどの難所、鍋割坂。鍋割坂の標柱には「仰西翁偉績」とある。仰西(山之内彦左衛門)は江戸時代前期に生きた久万の人で私財を投げ打って仰西渠と呼ばれるものを作り、険しい久万盆地に農業用水を引いた人であるそうだ。この仰西が鍋割坂も開削したのであろうか。

【三坂越えれば吹雪がかかり、戻りや妻子が泣きかかる】

と、詠われた程に三坂峠は久万街道最大の難所であった。きっと、この開削も大変なことであったに相違ない。

05・久谷.jpg
↑早春の棚田と三坂峠

06・坂本屋.jpg
↑坂本屋(愛媛県松山市桜)

7時49分、坂本屋に到着。三坂を下りて最初の民家である。坂本屋は江戸時代には遍路宿としてたいそう賑わったそうであるが、モータリゼーションの波はこの小さな山村にも影響を及ぼした。国道33号線が出来た後に、坂本屋は廃屋となってしまった。しかし、地元の人たちによってこの宿は立派に修復された。現在はお遍路さんたちの交流場所となっている。私はここでお手洗いをお借りした。

07・梅.jpg
↑梅が咲いている・・・・

08・網掛け石.jpg


その昔、弘法大師は道路工事を手伝ったと云われ、鍋割坂にあったビクともしない巨大な石を畚(もっこ)に担いで山すそまで運んだといわれている。その石には網目が残っていたことから網掛けの石と呼ばれているそうだ。ここでトレッキングの人と出会った。追い抜かれたが、そんなに急ぐ旅でもない。道を進むと二手に分かれる道があった。地元の犬を連れていたおじさんは「下の道が、お大師様の通られた道じゃ。」言いよるので下の道を行くことにした。

09・浄瑠璃寺.jpg
★第四十六番札所・医王山浄瑠璃寺(愛媛県松山市浄瑠璃町)

8時50分。私にとっては一番札所、浄瑠璃寺に到着した。ここで納経帳を買って納経して頂いた。浄瑠璃寺の方にはたいそう親切にさせて頂いた。境内に椰子の木があるのが南国っぽい。

10・八坂寺.jpg
★第四十七番札所・熊野山八坂寺(愛媛県松山市浄瑠璃町)

10分ほど歩くと八坂寺である。ここでお遍路さんらしき人とすれ違ったのだが、挨拶ができなかった。なんということだろうか。私はたいそう後悔した。

11・垣根.jpg



12・諏訪神社前.jpg
↑まっすぐな道(愛媛県松山市恵原町・諏訪神社前)

諏訪神社に参拝して、遍路道から県道194号線を北へ向かった。途中、別格霊場文殊院と呼ばれるお寺さんに立ち寄った。

その前に四国遍路を語る上でかかせない人物がいる。
【衛門三郎(えもんさぶろう)】である。

伊予国浮穴郡荏原荘の豪農で河野一族に衛門三郎という人物がいた。この人物はたいそう欲深い人物であったという。ある日、三郎の門前にみすぼらしい格好をした僧が現れ托鉢をしようとしていたのだが、三郎はこの僧が持っていた鉢を割って追っ払った。この僧・・・実は、弘法大師であったとされる。その数日後、三郎の8人の子供はどういうわけか、突然死してしまった。三郎は懺悔の気持ちを抱き、田畑屋敷を売り払い、あのときの僧を追いかけて、四国を廻りに廻った。

だが、二十回四国を廻ってもあの僧に会うことはできなかった。三郎は阿波国焼山寺付近で病に倒れる。その枕元に弘法大師は現れた。三郎は懺悔し大師に問いかける。

「私に望みはあるのでしょうか?もしも望みが叶うなら河野家に生まれたい。」

大師は落ちていた石に【衛門三郎再来】と書き記し三郎に握らせた。安堵した三郎は息を引き取った。三郎は架空の人物とも云われるが、最初に四国遍路を行った人物とされる。架空の話とはいえ二十回も四国を廻るとは凄い話である。

13・文殊院.jpg
★三郎旅立ちの様子(愛媛県松山市恵原町・文殊院境内)

文殊院は衛門三郎の屋敷跡と伝えられる。ここで、先ほど八坂寺で出会ったお遍路さんと遭遇した。軽く「おはようございます。」と挨拶をして少し話をしてみた。この方は俄遍路であり、松山の知人宅に居候しているのだという。そしてどういうわけか、この後に行動を供にすることになったのである。

にわか四国遍路(2) へ続く。







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Last updated  2013/09/28 12:58:54 AM
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