(書評)『ネット右派の歴史社会学 アンダーグラウンド平成史1990 ― 2000年代』 伊藤昌亮〈著〉
2019
年 10
月 12
日
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「ネット右翼」または「ネトウヨ」という言葉を最初に耳にしたのはいつ頃(ごろ)だったか。ネット上で過激な国粋主義の言説を展開し、しばしば 排外主義
に結びつき、
ヘイトスピーチ
をまきちらす。そんな人々を漠然とイメージしているうちに、あれよあれよという間にその存在感は現実世界においても増していった。
本書によれば、これらの言葉が広く用いられるようになったのは、2000年代半ば以降である。ただし、その起源はより古く、1990年代初頭、米国による日本異質論に対する反発から生まれた「 反日国家
」の枠組みが、やがてその対象を米国から韓国、そして中国へと移すことで発展したという。本書は「 ネット右派
」(著者はあえてこの言葉を用いる)の歴史を萌芽(ほうが)期から2010年代の成熟期まで追い、元々は種々雑多な潮流が最終的に合流する過程を詳細に論じた研究書である。
サブカル
保守の反リベラル市民、バックラッシュ保守の歴史修正主義、ネオナチ極右の
排外主義
などが、「嫌韓」を中心に、
2ちゃんねる
などを舞台に結集していく。個別には耳にしていた名前や出来事が一つの巨大な流れとして整理され、読んでいて圧倒される。
著者はこのような「ネット右派」を単純化して退けるのでもなく、かといって擁護するわけでもない。論調は批判的だが、内在的に理解することを目指している。本来、権威を批判する健全さや、弱い立場の人々に寄り添う側面もあったのが、むしろ抑圧的・威嚇的になり、「内なる差別」を生産するようになったのはなぜなのか。10年代半ば以降、「
イノベーション
」がなくなり、むしろ停滞期に入ったのはなぜなのか。著者は 歴史社会学の手法
から考察を進める。
何が日本社会において「ネット右派」をかくも大きな存在にしたのか。複雑な思いと、ひりつくような焦燥感を持って、この本を読んだ。
評・宇野重規( 東京大学 教授・政治思想史)
*
『ネット右派の歴史社会学 アンダーグラウンド 平成 史1990 ― 2000年代』 伊藤昌亮〈著〉 青弓社 3300円
いとう・まさあき 61年生まれ。成蹊大教授(メディア論)。著書に『デモのメディア論』など。
読売新聞も書評で取り上げているようです。
まずは、ネット右翼や侮蔑的なネトウヨでなく ネット右派
とは、気になりますね。
「本書では、ネット上で保守的・右翼的な言動を繰り広げる人々を指し、一般に『ネット右派』と呼ぶこととする」と定義している。
その理由について著者は、「一つには、『ネット右翼』や『ネトウヨ』の極端なイメージに引きずられないようにするため」とする。
保守、右翼、極右、民族主義者、新右翼、国粋主義者、ネオナチ、・・・と
いろいろありますがひとまとめにネット右派と言うようですが、
ひとつにくくられた方はどうなのでしょう。
『ネット右翼』や『ネトウヨ』の極端なイメージとは?
ネット右翼の中には自分は違うと言ってみたり、ネット右翼と呼ばれるのを
嫌う人が多いようです。
おちこぼれの若者や暴走老人というイメージがつきまとうからでしょうか。
歴史社会学の手法と言うのも、どんなことを言うのか不明でした。
社会現象としてとらえてそのような現象が生じたメカニズムを解き明かすと
いうなら社会学ですが、それに歴史がかぶさるのは?
時間的な経緯を追って、分析するのなら歴史学ですが。
消化不良感の残る書評でした。
もう少し調べてみましょう。