元大阪市長で弁護士の橋下徹氏( 53 5 日、フジテレビ「 日曜報道 THE PRIME 」(日曜前 7 ・ 30 )に出演。韓国との間で懸案となっている 元徴用工訴訟問題 について言及した。
元徴用工訴訟を巡っては、韓国政府が日本企業の賠償支払いを韓国の財団に肩代わりさせる解決案を公表。韓国の原告らが日本企業の資金拠出や謝罪を求めて反発していることを踏まえ、両政府は外交当局間で協議しているが、妥結の見通しは立っていない。日本政府は解決案を韓国政府が正式決定すれば、「反省」や「おわび」を明記した過去の政府談話を継承する立場を説明する方向で検討している。
橋下徹氏
元徴用工問題、韓国政府の解決案に「この案に賛成。これしかまとまることはないと思う」 (msn.com)
橋下氏の発言は、意外であるとともになかなか興味深いものでした。
出席者は、外務省出身の松川るい議員と武藤元駐韓大使でした。
まずは、関連する朝日新聞の古い(2018年)記事からです。
元徴用工の「個人請求権」なぜ残る 弁護士ら声明で指摘
聞き手・黄澈 2018 年 12 月 4 日 朝日新聞
韓国大法院( 最高裁 )が戦時中の韓国人元 徴用工 へ賠償するよう日本企業に命じる判決を再び出した。日本が植民地にしていた朝鮮半島から日本本土へ多くの韓国人が労務動員されたが、政府は1965年の日韓請求権協定で解決したとの立場だ。これに対し、日本での 戦後補償 裁判に関わってきた弁護士らは声明を出し、元徴用工の個人としての請求権は「消滅していない」と指摘している。声明の呼び掛け人の一人、山本晴太弁護士( 福岡県 弁護士会)に聞いた。
◇
請求権を互いに放棄する条項は1951年のサンフランシスコ 講和条約
(サ条約)にもある。後に原爆被害者が「条約により米国に賠償請求できなくなった」として日本政府に補償を求めて提訴すると、政府は「自国民の損害について、相手国の責任を追及する『 外交保護権
』を放棄したもの。個人が直接賠償を求める権利に影響はなく、国に補償の義務はない」と主張した。
90年代には、韓国人の戦争被害者が日本で提訴し始めたが、政府は従来と矛盾する解釈は取れず、「 個人請求権
は消滅していない
」との国会答弁を続け、訴訟でも「請求権協定で解決済み」とは抗弁しなかった。
ところが、2000年代に重要な争点で国や企業に不利な判決が出始めると、国は「 条約で裁判での請求はできなくなった
」との主張に転じた。最高裁も07年4月、中国人 強制連行
訴訟の判決で、サ条約について「事後的な 民事裁判
にゆだねれば、混乱が生じる。裁判上では個人請求権を行使できないようにするのが条約の枠組み」と判断した。この判例が 日中共同宣言
や日韓請求権協定にも適用され、以降、 日本の法廷
での外国人戦争被害者の権利回復は不可能になった。
一方で、この判決では「 (条約は)個人の実体的権利を消滅させるものでなく、個別具体的な請求権について、債務者側の自発的な対応を妨げない 」とも示し、関係者が 訴訟以外の交渉で問題解決する道を 残した。政府は「解決済み」と切り捨てず、話し合いで救済を目指すべきだ。(聞き手・黄澈)
◇
〈 韓国の元徴用工
〉
戦時中に朝鮮半島から日本の工場や炭鉱などに労働力として動員された人たち。動員は、企業による募集や国民徴用令の適用などを通じて行われた。当時の公文書や証言から、ときに 威嚇や物理的な暴力を伴った
ことがわかっている。
元徴用工への補償は、日韓両政府とも1965年の日韓請求権協定で解決したとの立場だが、不満を持った元徴用工らが日韓で日本企業などを相手に訴訟を起こし、争ってきた。韓国政府が認定した元徴用工は約22万6千人。
◇
〈 日韓請求権協定
〉
1965年の日韓国交正常化に伴い、両国間で締結された。日本が韓国に無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力金を供与し、両国とそれぞれの国民間で「請求権」の問題を「 完全かつ最終的に解決されたことを確認する
」と明記した。日本政府はこれに基づき、元徴用工への補償問題は解決済みとの立場。韓国政府も2005年には、協定が定めた経済協力金に元徴用工への補償問題解決の資金も含まれるとの見解を発表していた。
元徴用工の「個人請求権」なぜ残る 弁護士ら声明で指摘:朝日新聞デジタル (asahi.com)
繰り返しになりますが、日本政府の立場は次の通りです。
日本政府は、 ( 1 )請求権は消滅していない、( 2 )国家によって国民の権利が守られるという外交保護権は消滅した 、という立場を取っている。
背景にあるのが、日本国民が連合国軍の空襲などで被った被害への補償問題だ。
日本政府はサンフランシスコ講和条約での日本国民の連合国に対する請求権放棄について、「外国における国民の権利を保護しないという消極的な決定をしただけだ」と国会で答弁している。対米請求権を放棄した日本国に原爆被害への補償を求めた被爆者訴訟でも、同様の論理で国に補償義務はないと主張した。日本政府はその後、個人の請求権は消滅していないが、相手国・国民がこれに応じる法的義務は消滅しているので「 救済されない権利 」であるという説明をするようになった。
日韓請求権協定で個人請求権が消滅していないという解釈は、これを踏襲している。日本国民に補償しないですむように考えられた論理が、韓国人にも適用されたということだ。
外務省の柳井俊二条約局長は 1991 年 8 月の参院予算委員会で、日韓請求権協定と個人請求権の関係について明確に表明している。
柳井氏は「日韓請求権協定におきまして 両国間の請求権の問題 は最終かつ完全に解決したわけでございます。(中略)これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます」と述べた。
さらに安倍政権下でも、 岸田文雄外相
が 2013
年 11
月の参院外交防衛委員会で「日韓請求権、そして経済協力協定の下では、個人が裁判所に対して個人として訴えを提起すること自体は妨げられていないものと理解をしています。しかしながら、この協定に基づきまして、このような個人の請求権は法的には救済されないということになる」と答弁している。
「解決済み」の徴用工問題で誤解が多い理由 Wedge ONLINE( ウェッジ・オンライン) (ismedia.jp)
両国間の請求権の問題
は 最終かつ完全に解決しているのは疑いがないことでしょう。
でも、国家間の請求権は消滅しても 個人の請求権は消滅していない
というのも日本政府が認めているところです。
日本国内でこの個人の請求権が行使できるか否かについては、裁判=判決によってできないというのが判例です。
救済されない権利
と言われる所以ですが、訴訟を起こして事実認定や和解を勝ち取ることを妨げるものではありません。
では、韓国ではどうでしょう。
続きます。
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