仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2005.10.09
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カテゴリ: 東北
秋冷の候、鳴子峡に行きました。朝10時頃到着ですが、既に結構な人手。3連休の中日ということで、遠方から来ている方も多いようです。紅葉には早いですが、渓谷の散策は独特の良さがあります。子供達も喜んだようです。

渓谷歩きは、初夏の「山寺~面白山」以来ですが、切り立った崖に何とか開削された歩道を歩いていると、どうしても思い浮かべることが2つ。1つは、この場で完全犯罪ができるだろうか、火曜サスペンス劇場ならどう描くだろうか。それはどうでもいいのですが、もう1つは、かくも狭いところにわざわざ道を開いた先人の苦労です。

今回の鳴子峡では、途中の売店のある休憩広場の神社脇に石板がありました。読むと、つい80年前までは地元にさえほとんど知られていなかった。陸羽東線の開設工事に伴い大正6年頃に、渓谷美に見せられた故佐々木精一さんが遊歩道を提案するも、町議会では危険で途方もないと請願を否決する。佐々木さんは議員になるとともに自ら歩道を計画し、私財と浄財で、昭和2年、幅60センチの歩道を完成。この情熱に心を動かされて、議会で反対の急先鋒だった故高野善兵衛さんも協力に転じ、尿前の観音堂を不動滝付近に移し(この神社がそれだろう)、自ら探訪者の案内も買って出た。以来、天下の絶景、紅葉の名所として全国に知られ、年間数十万人の観光客を集めている、という内容です。

現在我々が歩く道はコンクリートで補強したりして幅も広くなっているのだろうから、当初は狭かったのだろう。それにしても、世間に広く知らしめたいという信念に、地元に対する誇りと愛着が伺えるし、また当時の町の議論のようすも伺えて、大変興味深い。いや、興味深いなんて言い方は失礼で、地域のことを考え行動した人たちに、深い畏敬の感を抱くのです。

渓谷だけではなく、土地改良、治水、農作物、交通など各方面で、どの地域にも先人の苦労があったはずです。私は数年前から、これらの話に接するたびに、美談として飾っておくだけではなく、その時代の人たちの考え方や生き方も含めて捉えたいと思うようになりました。モノによっては議論や喧嘩もあったでしょう、それも重要なはずです。考え方の背後にある生活の環境や条件があったはずです。それが当時の地域そのものだったのですから。
時代的には、明治以降戦前までが中心ですが、具体的には祖父母やその父母、祖父母の時代と言うことになります。

ちょっと別な視点なのですが、我々は戦前と戦後の断絶を強く意識するよう教育されてきました。特に岩手県で義務教育期を過ごした私は(岩教組はストまでやった)。貧農層ですから、わが先祖も歴史に受動的な一般的な東北の地域農家というぐらいにしか考えていませんでしたし、そもそも戦前はすべて暗黒時代で皆大変でした、はいそれまで、という感じです。極端に言えば。
しかし、先人がどういう世の中にどう生きてきたのか。私も不惑を過ぎて、自分がどう生きるかと全く同じレベルで、このことを考えたくなりました。考えないのがおかしかった、と思うようになりました。

岩教組の悪口をいいましたが、先生達は熱心に地元の先人の話をしてくれたように思います。でも受験勉強には全く関係ないし、なにしろいち早く田舎を出たい一心でしたから、あまり心に残っていませんが。最近、私の出生地に近い温泉に行ったら、ロビーに地元の人が書いた地域の先達の本があり、食い入るように読みました。著者も近所の人でよく知っています。ああ、みんな生きているんだな、と。


地域と歴史と先人とに畏れを抱いて、謙虚に学んでいきたいです。変な言い方ですが、政治理論を学ぶより、あるいは現代の浮ついた政治風潮なんかよりも、もっとどっしりとして生きた行政や政治の手本がそこにあるように思います。そして、わが地域を知る、大げさに言うと東北とは何かを知ることについて、少し前に進めるように思います。





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最終更新日  2005.10.09 20:59:13
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