仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2007.01.30
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カテゴリ: 宮城
1 千葉三郎(昭和22年4月)

知事が公選制になったのは昭和22年の地方自治法施行によるが、同年4月5日に知事選挙が行われ、実業界出身の最後の官選知事千葉三郎が、大差で当選した。

しかし翌昭和23年に県政は「県庁旋風」と称される数々の疑惑を招く。畜産大学設立に絡む背任容疑、県農業会の不正献金、食糧公団の不正献金、繊維組合連合会の背任横領、などなど県幹部を巻き込む疑惑が生じ、県政の信頼は失墜し、千葉知事は衆院選に転じるため昭和24年1月に辞任する。
(ちなみにこの総選挙は吉田内閣の「なれ合い解散」総選挙。宮城一区は千葉三郎、庄司一郎、本間俊一、安倍俊吾、佐々木更三。宮城二区は大石武一、内海安吉、角田幸吉、高橋清治郎が当選)

2 「百姓知事」佐々木家寿治(昭和24年2月)

昭和24年2月に第2回公選。県議から立候補の元代議士佐々木家寿治が高橋清との接戦を制した。民主自由党で立候補し当初は少数与党だったが、佐々木は風水害対策や農村振興で力を発揮し、「百姓知事」を自称して県民に浸透した。

佐々木知事は土木や農政に明るく、思うことを高い声でズバズバ言う人だったそうだ。26年の県議選では陣頭指揮により自由党(民自党を改称)を多数当選させて安定与党に成功。しかしこれがワンマン知事の評を呼び、総合運動場建設をめぐる業者との癒着を追求されるなど窮地に追い込まれ、吉田茂の「抜打ち解散」(8月)と総選挙(10月)のドサクサに合わせ、昭和27年9月に任期を5ヶ月残して辞任した。

3 「学者知事」宮城音五郎(昭和27年10月)

反自由の野党は出遅れたが、東北大工学部長や仙台一高校長を務めた県教委委員長の宮城音五郎(無所属)を推薦した。知事選の4日前の総選挙では吉田自由党が議席を減らし、宮城でも社会党が1議席から4議席に躍進。知事選も当初は圧勝と見られた佐々木家寿治に対して、反自由党の革新候補の宮城が当選。


宮城知事は、兄は元法務大臣、姉は衆院議員だが、自身は博学なるも政治経験がなく議会工作が円滑にできない。野党多数の議会で革新色も出せず、譲歩した総花予算は財政赤字を累積した。宮城県は昭和31年5月に地方財政再建法の適用を受け、国の指導下に置かれる(39年度まで)。独自色を出せない宮城知事は31年10月任期満了で退任。

4 「農民知事」大沼康(昭和31年10月)

知事選挙に際して保守合同で成立した自由民主党が、副知事早坂冬男(無所属)と遠藤実(自民党)の両陣営に分裂した。このため、予想を覆して県農協経済連会長の大沼康(社会党)が大差で当選。東北初の社会党知事であり、社会党は宮城前知事に続いて少数ながら県政与党となった。

大沼は、社会党の政策を押しつけずに、県民の福祉を目標に産業振興と民政安定のため、総合開発を進めた。財政再建も軌道に乗って、やがて革新色の強い政策として、敬老年金等支給条例と農家負債整理促進条例を制定した。
しかし34年1月に急逝、3月の知事選を迎える。

5 保守が奪回 三浦義男(昭和34年3月)

自民党は今回は一本化して鉄道省技師から参院議員となった三浦義男を擁立し、与党が大沼県政の承継として擁立した副知事西宮弘(無所属)を僅差で破る。以後宮城県政は長い保守県政の時代に入る。

なお仙台市長は、昭和33年2月に弁護士島野武が当選。これは、岡崎栄松市長の四選目の昭和30年4月に岡崎が島野を僅差で破った選挙が最高裁で無効が確定して行われた「やりなおし選挙」であった。自民党は松川金七を公認したが、革新統一候補の島野が勝利した。ここに全国にも稀な、知事と県都市長の革新首長の時代を迎えたが、大沼の急逝で一年しか続かなかった。以後26年間にわたる島野市政は保守県政との齟齬の時代でもある。

三浦は昭和38年に再度西宮を破り再選。40年2月に没するが、仙台新港などの施策は後の高橋・山本県政に引き継がれた。宮城県の財政再建は昭和39年に負債を解消するが、後進の貧乏県から胸を張って県政発展に転じる基礎は、三浦知事の時代に築かれた。

■参考
 我孫子麟『宮城県の百年 県民百年史4』山川出版社、1999年





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最終更新日  2007.01.30 01:32:33
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