仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2016.06.16
XML
カテゴリ: 雑感
大震災の一年ちょっと前だった。石巻市の中心部、私もかつて住んでいた場所にほど近い、JR仙石線沿いの住宅で2人が殺害され1人が重傷を負う悲劇があった。当時18歳の少年の犯行で、第一審の仙台地裁では死刑判決。少年事件で裁判員裁判で死刑が宣告された唯一の事件。そして、今日、最高裁は元少年側の上告を棄却して、死刑が確定。

許される余地のない悪行だが、元少年の育った家庭環境なども報道され、更正の可能性の判断もそうだが、事前の警察の指導状況などを含めて、家庭や個人に社会や行政がどう関わるべきかなど、考えさせられる事件ではあった。裁判の結果はそれとして受け入れるべきものと思う。

ところで、死刑が確定したことを受けて、メディアは元少年を実名で報道している。NHKの場合は、凶悪な犯罪で社会の関心が高く、また、死刑確定で社会復帰の可能性が事実上なくなったため、と断りを入れていた。

メディアも慎重に検討したと思われるので、いまその判断については議論しない。ただ、気になるのは、社会復帰や更正の可能性が無くなったから実名で報道する、というのは、論理的はわかるが、それこそ文字通り一人の人間の存在や配慮を「切り捨てる」ような感覚に襲われて、そら恐ろしい気もする。更正可能性があるから原則の実名報道を曲げて来ただけで、原則に戻るだけのこと、としても。

朝日新聞も実名だが、その理由は、国家によって生命を奪われる刑の対象者は明らかにすべきだから、という。事件当時が少年であっても同じで、その方針は2004年に決めたのだそうだ。

NHKとは明らかに根拠が異なるが、その意図はわかりにくい。極刑に処せられる者の犯罪の重大性が根拠なのか、それとも、死刑という制度の是非を議論するために実名を出すということなのか。

時事通信は、(1)死刑確定で社会復帰可能性なくなること、(2)国家が命を奪う死刑の対象者の情報は広く社会に共有されるべきこと、(3)事件結果が重大で社会的関心が極めて高いこと、の3点を総合判断する、として本件を実名報道としている。

今日の時点で幾つか報道をみてみると、放送も新聞も実名が多いようだが、新聞でも読売は毎日は(ネットで見る限り)匿名のようだ。

河北新報は実名だが、その理由が、(a)死刑が確定することで更正・社会復帰に配慮する必要が無くなったことに加えて、(b)事件の凶悪さや社会的影響、(c)一人の命が匿名のまま奪われることへの懸念、なども考慮した、という。



それはともかく、不思議なのは、根拠(c)だ。何を言っているのか不明。匿名のまま命が奪われた場合に困ることとは何だろう。朝日の根拠(これも必ずしも明確でないこと上述)と同じことなのかも知れないが、朝日は死刑制度を前提にしているのに対して、河北の場合は文理上はそうではない。死刑に限っていないから、「およそ人間は命を奪われるという事態に遭遇する場合(殺害される場合も死刑執行の場合も)、その事態(殺人事件、死刑執行)の重大性に鑑みて、広く社会の関心や論議の対象とされるべく、当該の事態について具体的に明らかにされるべきであるから当然に氏名も明らかにされるべきものだ」ということだろうか。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016.06.16 21:47:45
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

コメント新着

おだずまジャーナル @ Re:仙台「6時ジャスコ前」の今むかし(11/14) 仙台フォーラスは来月3月から長期休業。再…
クルック@ Re:黒石寺蘇民祭を考える(02/18) ん~とても担い手不足には見えませんけどネ…
おだずまジャーナル @ Re:小僧街道踏切(大崎市岩出山)(12/11) 1月15日のOH!バンデスで、不動水神社の小…

プロフィール

おだずまジャーナル

おだずまジャーナル

サイド自由欄

071001ずっぱり特派員証

画像をクリックして下さい (ずっぱり岩手にリンク!)。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: