縮むパイ（『人口減に勝つ会社』日経ビジネス）/日記のようなもの（281）

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2005.04.21

縮むパイ（『人口減に勝つ会社』日経ビジネス）/日記のようなもの（281）

テーマ：ニュース(100446)

カテゴリ：日記のようなもの

今夜は数年ぶりにかもっと久しぶりに、走るために走ってきた名無之直人です。
心臓が破裂するかと思いましたよホント。健康の為に寿命縮めたかも知れません。笑

で、今日(木曜)のお客様としては、 shugiin.go.jp などがありました。
（昨日の日記の「憲法改正」という言葉にに引かれて来た感じですかね。）

さて、本日のお題に移りましょう。

『人口減に勝つ会社』日経ビジネス

人口縮小に関する記事などが目に止まったらなるべく全部目を通すようにしてます。
で、景気の良い事を書くのが経済誌の宿命だとして、だからこの記事の主眼も『経済規模は人口規模の縮小に伴ってやはり縮小していくが、各企業として前向きに状況を捉えて売上や利益を伸ばす事は可能だ』というものでした。

シェア(やフロー)重視からストック重視などという記事もありましたが、全体としては、縮んでいく市場や労働力の中から、いかに必要な取り分を(効率的に)切り取っていくかが今後の企業にとって重要だ、という話が多く、いかに縮んでいくパイを大きくするか、というお話ではありませんでした。

そもそも現在でさえ輸出が経済全体に占める割合は5％程度なのですから、そこに全部の活路を見出すのも無理があります。

記事全体や様々な企業の少子高齢化社会の調査結果として、人口縮小＝経済規模の縮小、つまりGDPがマイナス成長の社会がすぐそこまで来ているというのは共通認識として考えて良いようです。

(意見が分かれるのはそれがいつ頃からになるかという時期とその縮小速度の違いだけで、日銀がインタゲ採用すれば全ては良くなる、とか、プライマリーバランスさえ取れればいくら財政赤字が膨らんでも大丈夫とかの話は、人口縮小という社会背景の持つ意味の認識を根本から欠いてるか意図的に無視している様に思われます。人口減少の経済状況下では、プラスの利率付きの国債の発行さえ今後無くなるでしょう。その話はまた後で触れます）

で、最近読んでる本のご紹介。

「人口減少経済」の新しい公式　（松谷明彦）

まだ読み終わってはいないのですが、この本は『・・・だから日本は20XX年に破綻(終焉)を迎える！』とかいうノリのものでは全く有りません。

経済学や様々な統計指標などを用いながら、人口縮小が経済に与える影響と、成長を前提とした経済モデルに変革が迫られている実態を検証しています。

(以下一部要約)
『少子化が急激な人口減少の原因ではなく、高齢化した人口が死んでいくことが急激な人口縮小の原因である。だから現時点から急激に出生率が向上したとしても、それは労働力の担い手でもある人口の負担をさらに高め、短中期的には更に経済(成長)を圧迫する要因にしかならない。』

『規模が縮小していく経済環境下においては、先行した設備投資(費)を拡大した需要(からのリターン)で埋めるというモデルは崩壊する。』

日本の特殊な人口構造(第一次と第二次ベビーブーム世代とその谷間の世代)が日本の経済を急激に押し上げる一つの要因になっていた事などや、人口が減っても女性や高齢者の労働力の活用、もしくは外国の労働者を受け入れる事で埋める事が出来るといった意見にも、詳細なデータや各先進国の例などを挙げながら反証しています。

日本の人口が減少していく事の意味などに関心がある方には大変お勧めな本です。

傾向として、おそらく日本の人口は二度と増加の方向に向かいません。
将来に関する事項ですが、これは経済学の範疇を越えた所で既に数十年単位の規模で起こっている現象ですので、この現実の傾向を無視しては全ての指針が狂います。

(2030年までに1億790万人、2050年までに8280万人まで減ると予測されている。しかも恐ろしいのは、現在の日本の個人金融資産1400兆円の6割を持っているのが65歳以上の世代なのだから、彼らの死の影響は単なる人口減少という意味に留まらない。彼らが所持していた富は二度と再生産される事は無いのです。(単純に消失はしませんが))

だから経済成長(＝税収の伸び)を計算に入れて発行する国債の収入を元に政府(国)を運営していく方式も、当然ながら成立しなくなります。増税も経済規模の縮小速度を速めるだけです。(労働力人口だけでも2030年までに約1300万人、2000年の時点の6770万人から約20％も減ると予測されており、労働力と労働時間の積から求められる総需要(賃金)＝需要もそれだけ縮小する事になります。つまりいくら増税しようが税収は増えない状態(社会状態)が形成されつつある）

今後特に経済先進国を覆うデフレ圧力というのは、つまるところ「供給(能力)が需要を上回り続ける」という現象ですから、日銀(や各国中央銀行)の金融政策だけで何とかできる問題では全く有りません。(他の先進諸国もやはり人口減少の傾向は定着して、速度が日本とは違う緩やかなものというだけです)

借款債を含む国債は、年に130、150兆という形で発行額を膨らませ続けていますが、利付きの長期債の割合はその全体の2-3割を占めます。私が50や60になる頃に、経済はマイナス成長で、従って税収もマイナスなのに、毎年の国債の償還額だけはプラス(増加)していく事になります。

マイナス成長の経済に照準を合わせた体制を今から作っていかないといけないのですが、政府よりも各企業の方がその重要度を感じているようで、その空気は上で触れた日経ビジネスの記事からも伝わってきました。

（例えば、昨日のこんなニュース：政府の少子化対策の失敗例。
『男性の育休助成、利用ゼロ　２年間、０４年度で廃止』）

先日述べた無税金政府の様に、税収や財政支出の仕組みも根本から変えていかないといけないのですが、当然それらはある程度憲法の中で規定されておく必要があるので、まだまだ先は流そうです。

とはいっても、5年間かかって衆参両院から提出された憲法改正調査報告書の中身があの程度で、しかも今から10年や15年かかってようやく成立したとしても時代遅れで使い物にならないかも知れないのがまた何とも・・・。

人口縮小状況下における政府活動や国政・財政の運営の仕方を、無税金政府と道州制などを念頭に今度書いてみます。(無税金政府は、経済が成熟しきって社会インフラの整備もかなり進んだ先進国でのみおそらく有効な仕組みで、他の条件としてはデフレ圧力と人口縮小という状況下にあり、財政出動しても乗数効果がほとんど望めないか効果が表面にはっきりと現れてこないような環境、つまりお金の価値が極端に希薄化してる様な社会でのみ成立可能な様に、漠然と感じています。)

今日の(日本の)お金の価値を例えるなら、お金って公園の砂場の砂程度の価値しか無いのです。つまり各国の政府や中央銀行から供給されるお金という砂の取り合いを世界中の企業や金融機関で行っているような状態。だからお金そのものにはたいした価値が無いと気付いた社会が、今後縮小していく人口＝経済規模と、そして天然資源の中で生き抜いていく事ができるのでは、と感じています。
(その意味でEUが今後浮上してくる事は、おそらくほとんど無いと思われます。何故かというと、体に重りを付けてる連中が水面で抱き合っても一緒に沈んでいくだけだからです。一部例外がいたとしても、その足に全員がすがる事は不可能です。この話も本題とずれるのでまた後日。笑)

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