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2022.07.20
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カテゴリ: 書籍
エンディミオンの覚醒(下)

エンディミオンの覚醒(下)

 サイリーナス「さんざっぱら待たせたあげく、いまごろになってのこのこもどってきおって、なんちゅうグズッタレじゃい、おのれは」(654ページ)
著者・編者 ダン・シモンズ=著
出版情報 早川書房
出版年月 2002年11月発行

エンディミオンとアイネイアーは少年法王ダライ・ラマによってポタラ宮に招かれ、検邪聖省長官フアン・ドメニコ・ムスタファ枢機卿らと会合した。真紅のドレスをまとった怪物ラダマンス・ネメスが同行していた。突然、シュライクが現れ、会場は騒然となったが、2人は辛くも脱出し、〈懸空寺〉(シュアンコンスー)に生還した。
アイネイアーは仲間たちと問答を続け、自分の血を飲むことで〈虚空界〉へアクセスする能力を獲得できること、ただし、それにより二度と〈聖十字架〉を取り付けることができなくなると告げた。
エンディミオンは、アイネイアーと行動を共にしているレイチェルが、ソル・ワイントラウブの娘であること、シオ・バーナードが領事の部下で〈ハイペリオン〉総督となったシオ・レインの子孫であることを知らされる。そして、アイネイアーが結婚して子どもをもうけたことを知り、絶望する。

一方、アイネイアーの噂が広まり、〈パクス〉領内の多くの惑星で反乱が起きていた。ルールドゥサミー枢機卿は、デ・ソヤ神父大佐が率いる反乱艦〈ラファエル〉の討伐のため、58隻の惑星型大天使を、〈天山〉星系へ派遣した。
エンディミオン、アイネイアー、A・ベティックは凧に乗り、霊山〈泰山〉(タイシャン)へ向かった。頂上にある〈玉皇殿〉(ぎょくこうでん)で、〈ラファエル〉から脱出し重傷を負ったデ・ソヤ神父大佐、グレゴリウス軍曹ら4人を発見する。エンディミオンは宇宙船を呼び寄せ、彼らを治療する。
宇宙船に乗って〈懸空寺〉へ戻ると、ネメスがダライ・ラマを人質にアイネイアーの引き渡しを要求してきた。エンディミオンの捨て身の活躍でネメスは谷底へ落ちていった。

重傷を負ったエンディミオンが目覚めると、そこは、森霊修道会、〈アウスター〉、エルグらが共存する宇宙空間の巨大な樹木の球殻〈生物圏〉(バイオスフィア)にいた。そこには、死んだはずのフィドマーン・カッサード大佐やヘット・マスティーン、巨大ガス惑星で彼を飲み込んだ気球生物アケラタエリがいた。一方、〈パクス〉は300隻の惑星型大天使を〈生物圏〉討伐に向かわせた。聖樹船〈イグドラシル〉でディナーパーティが開かれ、アイネイアーは〈聖十字架〉の正体を語る。彼女は〈虚空界〉の声を聞き、〈アウスター〉や地球外生物だけでなく〈コア〉も生物であると見なし、生命で満ちあふれた銀河を目指して多様性が大切であることを説く。アイネイアーは未来を関知することができるが、それは確定した未来ではないという。だから全員に、「選べ、もういちど」と言って話を結んだ。

〈パクス〉艦隊は〈生物圏〉を蹂躙し、もう少しで〈イグドラシル〉に攻撃が及ぼうとしているところで、アイネイアーは聖樹船を転移させた。彼女は〈イグドラシル〉を転移させながら、火星にカッサード大佐を、マーレ・インフィニトウスにグレゴリウス軍曹を‥‥100余りの惑星に仲間の1人1人を転移させた。そして、A・ベティックを宇宙船に乗せて〈ハイペリオン〉へ向かわせた。
最後に残った、アイネイアー、エンディミオン、デ・ソヤは惑星〈パケム〉のヴァチカンに転移した。ちょうど教皇ウルバヌス16世はミサを行っており、アイネイアーは教皇めがけて突進していった。
だが、彼女は捕らわれ、拷問され死んでしまう。デ・ソヤは行方をくらました。エンディミオンは再び〈シュレーディンガーの猫ボックス〉に収監され、この物語を書いている。

エンディミオンは〈虚空界〉の声を聞き、アイネイアーを想い、そして〈パケム〉へ転移していた。ヴァチカンは一面焼け野原となっていたが、キー伍長やデ・ソヤ神父大佐と再会した。エンディミオンは惑星〈ハイペリオン〉へ転移すると、A・ベティックが迎えに現れた。老詩人マーティン・サイリーナスは「さんざっぱら待たせたあげく、いまごろになってのこのこもどってきおって、なんちゅうグズッタレじゃい、おのれは」と叱責し、地球に還りたいとエンディミオンに願った。聖樹船〈イグドラシル〉は、サイリーナスの館ごと廃都エンディミオンを丸ごと収容し、ソル陽系へ向かった。火星でカッサード大佐を収容し、その先に見えた惑星は‥‥こうしてハイペリオンの物語は大団円を迎える。

ポタラ宮はもちろん、天山、泰山、玉皇殿は実在の地名・観光名所。〈生物圏〉(バイオスフィア)はダイソン球(ダイソンスフィア)、気球生物アケラタエリは木星の浮遊生物として一昔前に流行った。
終盤でアイネイアーが仲間たちを転移させていくシーンは、どこかで見たような、読んだような記憶があるのだが‥‥日本武尊の白鳥伝説?『魔法少女まどか☆マギカ』?(こちらはエンディミオンより後世の作品だ)。ちなみに、エンディミオンは最後の最後まで〈覚醒〉しない。『魔法少女まどか☆マギカ』は、これをなぞらえたのかもしれない。にしても、すさまじいボリュームと筆力だ。『エンディミオンの覚醒』上下巻だけでも1400ページあまり。その情景描写は、昨今のラノベ(ライトノベル)の対極にあると言っていいだろう。想像力を膨らませることで、ハリウッドですら及ばない映像世界に脳を浸すことができる。
シリーズの中で一番好きな登場人物は、と問われたら、詩人のマーティン・サイリーナスを挙げたい。すべての登場人物の中で最も長い時間を生き、生にしがみつき、最後に、エンディミオンに向かって「さんざっぱら待たせたあげく、いまごろになってのこのこもどってきおって、なんちゅうグズッタレじやい、おのれは」「すみませんですんだら警察はいらんわい」と悪態をつき、戻ってきた地球へ連れて行けと無茶な注文を出す。自分に正直な生き方をすることは、最高の幸せに違いない。






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最終更新日  2022.07.20 19:05:09
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