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著者・編者 | 篠月しのぶ=著 |
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出版情報 | KADOKAWA |
出版年月 | 2019年2月発行 |
統一暦1927年9月10日、ともに大将に昇進した ハンス・フォン・ゼートゥーア
と クルト・フォン・ルーデルドルフ
は帝都でクーデターを起こすことを検討する。だが、ルーデルドルフの執務室を出た ゼートゥーア大将
は、 ターニャ・フォン・デグレチャフ
中佐にルーデルドルフ大将の殺害計画を打ち明けた。
一方、 エーリッヒ・フォン・レルゲン
大佐は、イルドア王国の ヴィルジオニ・カランドロ
大佐に講和の仲介をするよう工作していた。 レルゲン大佐
は、無賠償・無併合・民族自決の3本軸が帝国が最大限譲歩しうるラインだと考えていたが、 カランドロ大佐
は理解できなかった。交戦国が望んでいるのは帝国の滅亡だったからだ。
統一暦1927年9月26日、海上封鎖をしていた帝国軍潜水艦が、中立国である合衆国の貨客船を2隻も攻撃してしまう。
10月2日、東部方面軍司令部にて、 ルーデルドルフ大将
と ゼートゥーア大将
は今後の作戦計画を巡って激論をかわした。 ルーデルドルフ大将
が退出した後、 ゼートゥーア大将
はターニャに ルーデルドルフ大将
の殺害を命じた。
翌10月3日、 ルーデルドルフ大将
が乗った帝都へ帰る輸送機の護衛として、ターニャが率いる 第二〇三航空魔導大隊
の選抜中隊が護衛任務に就いた。帝都へ帰着する前に ルーデルドルフ大将
を殺害する計画だった。しかし、帝国の領空にも拘わらず連合王国の爆撃機が襲いかかり、航空支援を得られない 第二〇三航空魔導大隊
の奮戦虚しく、 ルーデルドルフ大将
が乗った輸送機は撃墜される。計画は失敗だったが、結果として ルーデルドルフ大将
は帰らぬ人となった。
10月4日、 ゼートゥーア大将
が東部方面軍から参謀本部に帰還し、大将、戦務参謀次長、査閲官を兼ね、軍を掌握した。 ゼートゥーア大将
は レルゲン大佐
に、合衆国と同盟を結ぶ兆しがあるイルドア王国への攻撃を命じた。そして、ターニャの サラマンダー戦闘団
にも参戦を命じた。命令とは、伝達されるものだ。上位者から、下位者へ。そこには、いかなる例外もあり得ない。
イルドア戦は時間との勝負だ。11月11日に帝国軍は、宣戦布告と同時に国境線を超えた。レルゲン大佐はイェルク中将が戦死した後の第八機甲師団を率い、とんでもない速度でイルドア国内へ侵攻し、イルドア国境司令部を急襲した。 カランドロ大佐
は司令部を放棄して脱出せざるを得なかった。
帝国軍の完勝だった。ターニャたちはイルドア王国の豊富な食材を使って勝利の宴を催した。だが、 ゼートゥーア大将
は容赦なく、ターニャに命じる。改良型V-1に乗り込み、改修中のイルドア海軍艦船を破壊しろと。
ゼートゥーア大将
は敗北を前提に足掻いているのかもしれない。賽は投げられた。だが、詐欺師の ゼートゥーア大将
のことだ。サイコロにイカサマの一つも仕込んだと想定するべきだろう。
ルーデルドルフ大将
だが、 ゼートゥーア大将
は権力を掌握し、イルドア王国に攻め込むという博打に打って出る。本来、参謀本部という後方で作戦指揮を執る レルゲン大佐
までもが最前線に出て高揚する姿は、デスマーチで徹夜ハイになっているプログラマのようである。
「戦争へは、真面目にのめり込みすぎては心を病んでしまう。思い詰めるのは精神衛生に甚だ望ましからず」(270ページ)と思うターニャ。仕事と同じである。
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