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2023.02.11
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カテゴリ: 書籍
幼女戦記 第12巻 -Mundus vult decipi,ergo decipiatur-

幼女戦記 第12巻 -Mundus vult decipi,ergo decipiatur-

 ターニャ「敗北の経験が抜けないうちに守りに入った軍というのは、心理的に敗北している」(223ページ)
著者・編者 篠月しのぶ=著
出版情報 KADOKAWA
出版年月 2020年2月発行

統一暦1927年11月12日、 ハンス・フォン・ゼートゥーア 大将は、帝国軍が電撃侵攻したイルドア王国へ向かい、 ヴィルジオニ・カランドロ 大佐と会見し、1週間の停戦を結ぶ。この間に、帝国軍は補給を済ませた。

一方、 ロリヤ 内務人民委員部長官は ゼートゥーア に対し激怒していた。帝国のイルドア侵攻は、政治的に大きな意味があったからだ。
そんななか、連合国の老練な諜報員ミスター・ジョンソンは、連邦で多国籍軍を指揮している ウィリアム・ダグラス・ドレイク 中佐に、イルドア王国への転属を命じる。ジョンソンはドレイクに「貴官は軍事的に正しく、政治的には落第だ」と告げる。
同じ頃、帝国軍参謀本部の エーリッヒ・フォン・レルゲン 大佐は、「戦争だけできるのであれば、どれほど、気が楽なことか」と嘆く。

停戦期間が終わり、帝国軍の再侵攻が始まった。だが、 ゼートゥーア ターニャ・フォン・デグレチャフ 中佐に王都を攻撃するなと命じる。これが ゼートゥーア の手品だった。ターニャが率いる 第203航空魔道大隊 は、イルドア救援のため参戦した合衆国の魔導師連隊を軽く屠る。
イルドア軍と合衆国軍は、王都を守り帝国軍を敗退させたと思い込まされた。これこそが ゼートゥーア の詐欺だった。彼らは、北条氏の小田原城や豊臣氏の大阪城のように、最初から守りに入ってしまった。あとは、帝国軍が全力でこれを叩けばお終いだ。
12月6日、王都は帝国に奪われた。 ゼートゥーア は、ターニャから ヴォーレン・グランツ 大尉が率いる中隊を護衛に付け、車から降りて王都を散歩してみせた。
このとき、 ゼートゥーア はイルドア北部の工業地帯と穀倉地帯を占領していた。大量の住民が王都へ向かって避難を開始した。合衆国軍は、その正義がゆえに、避難民を守り、食糧を確保しなければならなくなった。

ゼートゥーア 大佐に鉄道で帝都へ搬送することを命じ、王都を放棄する。殿を務める 第203航空魔道大隊 は、イルドアの補給路を断つべく、合衆国が荷揚げを行っている港湾施設を急襲した。しかし、この作戦は敵に読まれており、 ターニャ らは、またしても、大佐に昇進した変態の ドレイク と猪の メアリー・スー 中尉らのいる多国籍軍と交戦する羽目に陥る。
多国籍軍が散弾を使用したことに対し、ターニャは一般回線を通じて戦時国際法違反だと告発する。「本気なのか? 連中、この期に及んで、何を言うんだ? 気にするのはそこなのか?」と、 ドレイク は頭を抱えた。

世界を敵に回した帝国――だがしかし、合衆国も連合王国もイルドア王国も、正義を錦の御旗に掲げるがゆえに、ゼートゥーアの手のひらの上で踊らされる羽目になる。そして、唯一、帝国を倒しうる連邦までもが、その煽りで立ち往生する羽目となった。
「世界が騙されたがるならば、私に騙されてもらう」と、 ゼートゥーア はほくそ笑んだ。

合衆国の物量を前にして、ターニャの エレニウム九五式 演算宝珠の力もチートではなくなってきている。だが、 第203航空魔道大隊 の必死の働きと、 ゼートゥーア 大将の命を賭した謀略により、合衆国も連邦もきりきり舞いさせられる。
そして、12巻にいたってなお、帝国軍、協商連合、共和国、連合王国、イルドア王国、連邦、合衆国のいずれの国家も、相手のことを理解できないできる。だから平和は訪れない。
この世界で 存在X バベルの塔 をやらかしたのかは分からないが、もし 存在X が全知全能であるなら、これほど欠陥だらけの人類を創造するわけがなかろう。






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最終更新日  2023.02.11 13:58:21
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