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生協の白石さん2ちゃんねる発のベストセラー本。白石さんのおかげで、農工大の志願倍率が増えたほどである。ただ、ネット(とくに2ちゃんねる)とマスメディア(書籍)は購読者の属性が異なる。書籍化される際、意図的に毒が抜かれているというか、当たり障りのないものとなっている。「電車男」でもその傾向があった。「白石さん」の場合、ネットでは匿名の第三者が白石さんと学生のやり取りを生暖かく見つめる構図であったが、書籍では白石さん本人のコメントが掲載されている。マスメディアの宿命なのかもしれないが、匿名性が薄れているのである。これを吉と見るか凶と見るかで、自分の属性を知ることができるわけだが‥‥。それはそれとして、「白石さん」の営業精神には学ぶべきものがある。「仙豆がほしい」という要望に対し、「大豆や小豆すら品揃えしていない生協に仙豆など望むべくもありません。空想上の豆とはきっぱりと決別し、日頃からの滋養強壮に励んで下さい」と回答するあたり、モトネタを知りつつも、わざと外したウィットで返してしまうという、なかなか真似できない芸当である。
2006.04.05
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CPUのきもち表紙に騙される事なかれ。内容は硬派である。4004からPentirumに至るCPUアーキテクチャの特長。とくにIA-32アーキテクチャとWindowsの関係について詳しく書かれている。ハードウェアについて勉強したい方にお勧め。■メーカーサイト⇒毎日コミュニケーションズ CPUのきもち
2006.03.28
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集中力同世代のプロ棋士、谷川浩司のエッセイである。私は将棋のルールを知らないので、どこがどう「光速の寄せ」なのか分からないのだが、本書を読む限り、1世代以上先輩の言葉を聞くようである。少なくとも私より「高速に」年齢を重ねているようである。いわく、「情報をどんなにたくさん集めても、ロジカルに分析するだけでは情報におぼれるだけ」(91ページ)――ネット社会に生きている我々は身につまされる言葉である。たしかに、われわれは情報に踊らされている。(そういう輩が経営層にいると更に厄介である)だから、プロ棋士は先を読んでも「10手から20手先ぐらいまで」だそうである。どんな手が来ようが臨機応変に対応できるのがプロ棋士だそうな。CPUパワーに任せて、すべての手を読もうとするプログラムの限界が、ここにあるのではないだろうか。われわれの仕事にしても、マーケティング分析は必要だろうが、どこかで新規性を打ち出す必要はあるだろう。二番手、三番手に甘んじていては、いつかは滅ぼされてしまうような気がする。最後に、「料理がおいしいと思えば『これはうまいな。よくできている』とほめる」(171ページ)が家族円満の秘訣のようだ。見習わねばなるまい。
2006.03.19
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不肖ハマコーがゆく2,3ヶ月前、ハマコーこと浜田幸一氏の講演を初めて聴いた。生ハマコーの人相はテレビで見る以上に悪かったし、滑舌も最低だと思った。にもかかわらず、この人に人気がある理由は何なのだろうか。その1つが、本書でも紹介されている――「国会議員を辞めて浪人してからのことだけれども、高い壇上で挨拶したことは一度もない」(108ページ)――講演時間が始まる30分前から、いきなりフロア上で話し始めたので、ビックリした。それから講演時間が過ぎてもなお話し続け、合計2時間あまり、フロアをうろうろしながら、聴衆の目を見て、ときには肩に手を置き、一人一人に語りかけるように話し続けたのである。彼はその風貌に似合わず、サービス精神が旺盛なのである。私も、人相は悪いし、滑舌も悪い方なので、ハマコー先生の手法を真似させてもらうことにする。■文藝春秋「不肖ハマコーがゆく」
2006.03.02
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Googleの謎GoogleのSEOに関する情報があるかと思って読んでみたのが、そういう本ではなかった。残念。『Googleは「々」を検索できない』や『Googleが用意する「謎の言語たち」』といったトリビア的なコラムは面白かった。
2006.02.22
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独創者列伝存命中の日本の技術者たちのドキュメンタリーである。冒頭に登場する世界初のマイクロプロセッサーを開発した「嶋正利」と、最後に登場する青色発光ダイオードを開発した「中村修二」の2名については、他書でも取り上げられることが多いが、それ以外は本書独特の顔ぶれである。光造形法の発明者「小玉秀男」、フラッシュメモリーの発明者「舛岡富士雄」、人工網膜LSIの発明者「久間和生」、光ソリトンの発見者「長谷川晃」、白色有機ELデバイスの開発者「城戸淳二」、デジタル画像圧縮技術の国際標準化を先導した「安田浩」、光磁気ディスクを開発した「今村修武」。いずれも日本が世界に誇れる技術者ばかりだ。その言葉には体験に裏付けられた重みがある。舛岡富士雄は、EPROMに比べて機能的に劣るフラッシュメモリーについて、「普通は、性能が良いほうがいいと誰でも思いますね。それが当たり前ですが、ユーザーが使わない性能がいくら良くてもしょうがないのですよ」(81ページ)と語る。久間和生は、大学とメーカーの研究者の違いは明確で、メーカーの研究者は「新しいことを掘り起こして、それを事業化する。事業化されてもされなくても、一つのプロジェクトが終われば、次の新たなテーマをやらなければなりません」(103ページ)と指摘する。中村修二は、青色発光ダイオードという困難なテーマを選んだ理由について、「誰もやっていないから、研究テーマに選ぶのですよ。それで成功したらすごいことでしょう」(244ページ)と語る。われわれ技術者は、彼らの言葉を胸に刻み、今日も新しい技術に挑戦していかなければならない。■メーカーサイト⇒NTT出版 独創者列伝
2006.02.18
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とことんやれば、必ずできるアップルコンピュータ社長から日本マクドナルド社長に転身した原田永幸の著作である。若い頃から技術者畑を歩んできて、趣味としてやっているドラムの腕前もプロ並みの著者の言葉は、体験に裏付けられており、説得力がある。いま、会社で来年度売上見込みを立てているところなのだが、「ここで忘れてはならないのは、数字は追いかけるものであって、追い詰められるものではない」(164ページ)という言葉には救われた。よく考えてみれば、原田社長の言うとおりである。また、61ページから3ページに渡って記されている原田社長の若い頃の失敗談にも感銘を受けた。部下として、上司として、仕事はこうあるべきだと感じた。技術者の方にも、営業畑の方にもお勧めできる1冊である。■メーカーサイト⇒かんき出版 とことんやれば、必ずできる
2006.02.15
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宇多田ヒカルの作り方私が初めて宇多田ヒカルを聴いたのは、深夜の音楽番組「CDTV」だった。「Automatic」のビデオクリップが少しだけ流れたのだが、かつて「ザ・ベストテン」にサザンオールスターズが初登場したときと同じくらいインパクトがあった。本書によると「ちりめんビブラート」というそうだが、あの歌い方があまりにも気色悪く、私の記憶に刻みつけられたのだ。著者は作曲家でプロデューサの肩書きを持つ。タイトルに「宇多田ヒカル」の名前が冠せられているが、J-POPへの痛烈な批判を伴う音楽評論書である。また、終盤では自らの子供時代や、絶対音感を持ったことの悲劇が語られており、子どもにどのような情操教育をほどこすべきか、持論が展開される。著者は、宇多田ヒカルの歌唱力を評価していない。私もそう思う。あの「ちりめんビブラート」さえなければ、倉木麻衣と五十歩百歩である。宇多田ヒカルが優れているのは、歌謡曲界でタブーとされている「ちりめんビブラート」でバラードを歌い、お偉いさんとタメ口をたたきながら、自由奔放に生きていることである。後年、卵巣腫瘍の摘出手術を受けるが、本人に悲壮感が全くない。子どもを宇多田ヒカルのようにするにはどうしたらよいか――おそらく、早期教育で音楽教室に入れたり、ニューヨークに留学させることではないだろう。子どもに惜しむことのない愛情を注ぐこと、子どもにコンプレックスを植え付けないこと――その点では、著者の考えには賛成である。宇多田ヒカルの父親は音楽プロデューサー、母親は歌手である。その環境で育ったから彼女は優れたミュージシャンになり得たのか。これは分からない。同じ理屈で行けば、我が子は優れたシステム・エンジニアになるはずである。おそらく「宇多田ヒカル」というのは、その職業や才能は問題としない特異なキャラクターなのである。これからの若者の生き方の1つの指標なのかもしれない。■メーカーサイト⇒宝島社 宇多田ヒカルの作り方
2006.02.14
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スペースシャトルの落日私は、アポロ宇宙船の活躍の記憶がほとんど無い世代である。私が記憶に残っているアポロといえば、ソユーズ宇宙船とドッキングした最後のアポロ宇宙船である。そのころから雑誌などでスペースシャトルの記事は目にしていた。スカイラブが地上に落下した頃は、プログラム電卓で落下コースを予測していたものである。そして、満を持して登場したスペースシャトルに歓喜した。ジャンボジェット機の背中に乗って滑空試験を行ったエンタープライズ号のプラモデルを組み立て、これで宇宙ステーションや火星への有人飛行時代がやってくると確信していた。それから四半世紀が経過したが、状況は一向に進んでいない。有人火星飛行はおろか、月にも二度と降り立つことはなかった。現在建設途上の宇宙ステーションが1機、地球周回軌道を回っているのみである。その間に2機のスペースシャトルと多くの人命が失われた。もう、誰もが気づいているはずだ――スペースシャトルは失敗作だった、と。本書は、スペースシャトルが壮大な失敗作だったという主張を、正確な根拠に基づき展開している。さらに、「シャトルの運行が続いた結果、宇宙開発は停滞した」(6ページ)とまで言い切る。そもそもの失敗は、「検討開始の時点で、スペースシャトルは、人を運ぶ乗用車、荷物を運ぶトラック、推進剤を運ぶタンクローリーなどを兼ねるものということになってしまっていた」(102ページ)ことにあると主張する。この主張は、「何でもかんでもできる万能機械は、ほぼ間違いなくどの目的にとっても不十分な代物になる」(102ページ)という単純な経験則に基づく。工業製品は、単機能である場合に最大の効力を発揮する。会社の製品開発会議の席上で、企画担当者が持ってくるマーケティング調査結果から、「万人に受け入れられる多機能な」製品に賛成したことはないだろうか。「我が社の技術力なら、これだけの機能をこんなに小さいボディに埋め込める」――そんな甘言に踊らされ、無理を承知で基本設計を書いたことはないだろうか。そういう製品は、十中八九失敗する。運良く売れたとしても、ロングセラーにはなり得ない。逆に、製品寿命中に故障を繰り返し、製造した企業自身に迷惑をかける代物になりかねない。筆者は、「良い機械の条件は「安い」「使いやすい」「壊れない」なのだ」(91ページ)と主張する。われわれ技術者は、本来、そういう製品を開発しなければならないはずだ。スペースシャトルは、われわれ技術者にとっての反面教師だ。筆者は、ロケットの基本的な性質として、「ロケットはひたすら宇宙を目指して上昇していくのではない。空気があると加速の邪魔になるので、仕方なく空気が薄くなる高度まで、損を承知で上っていく」(120ページ)と指摘する。これは力学的にも根拠のあることで、ロケットは「空気が十分に薄くなる高度60~70キロあたりから水平に加速するようになる」のである。つまり、ロケットエンジンによる本格的な加速が必要なのは60~70キロより先の話で、ここまでは別の手段で運んできても良いのである。もし今、私がロケット技術者だったら、迷わず「軌道エレベーター(宇宙エレベーター)」の研究に転向するだろう。60~70キロの高度までは、のんびりとエレベーターで上昇させてやればよい。動力は電動でいいだろうし、巨大な塔の材料は、ナノテクで造れる可能性が見えてきている。轟音をとどろかせて飛び立つ巨大ロケットのようなインパクトはないだろうが、目的は、安価に、楽に、安全に、宇宙へ飛び立つことである。技術者として、この基本コンセプトを忘れてはいけない。ロケットの開発競争が続く本音は、ミサイルへの転用につきる。日本はミサイルを作る必要がないのだから、そろそろ軌道エレベーターへ軌道修正したらどうだろうか。■メーカーサイト⇒エクスナレッジ スペースシャトルの落日
2006.02.12
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さおだけ屋はなぜ潰れないのかタイトルと内容はほとんど関係がない。サブタイトルの「身近な疑問からはじめる会計学」の方が内容を正確に表している。著者は公認会計士であるが、本書は、会計のノウハウが体系的に述べられているわけではない。ビジネスマンなら誰もが承知しているごく当たり前のことを、ごく当たり前に書き連ねてあるだけだ。にもかかわらず、本書がベストセラーとなったのは、このユニークなタイトルのおかげもあるのだろうが、われわれが当たり前のことを日々の忙しさにかまけて無視しているからではないだろうか。たとえば、「50人にひとり無料」と「2%割引」は、どちらがお得か?金額的にはまったく等しい。にもかかわらず、多くのお客さんが「50人にひとり無料」に魅力を感じ、会社は売上を伸ばしたそうである。(187ページ)ほんのちょっとした数字のマジックで、ビジネスはガラリと変わってくる。著者は、「ある特定の数字を定期的におさえること、これが分析の極意」(197ページ)と語る。これこそ、ITが得意とすることである。IT技術者として、新規さに目を奪われることなく、この大切な事項を忘れないようにしたい。■メーカーサイト⇒光文社 さおだけ屋はなぜ潰れないのか
2006.02.08
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暗証番号はなぜ4桁なのか表題に対する回答が明記されているわけではない。セキュリティ全般に関する入門書である。パスワードから量子暗号まで、さまざまなセキュリティ対策について紹介している。本書が面白いのは、セキュリティ技術を評価・礼賛するのではなく、現実的なセキュリティ対策について語られているところである。たとえば、「量子暗号がカバーしてくれるのは通信経路だけ」と断った上で、クラッカーは「『そこから情報を盗めなくなったならコンピュータから直接奪うか』とか『やっぱり人を狙うのが一番だな』」(114ページ)と、攻撃目標をシフトするだろうと指摘します。実際、いくらセキュリティを堅固にしても、きわめてアナログな経路で(紙や口伝で)情報が漏れてしまう事故が後を絶ちません。量子暗号を導入したとしても、その傾向は変わらないでしょう。こうした事実をどのくらい理解しているか、経営者だけでなく、われわれ一人一人が認識しなければならない課題だと思います。■メーカーサイト⇒光文社 暗証番号はなぜ4桁なのか
2006.02.06
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ホーキング、宇宙のすべてを語る「ホーキング、宇宙を語る」(ISDN:4152034017)の続編。地動説から量子重力理論やタイムマシンの話まで、最新の理論が読みやすく書かれている。■メーカーサイト⇒ランダムハウス講談社 ホーキング、宇宙のすべてを語る
2006.02.04
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「無償(ただ)」の仕事毒舌家の永六輔であるが、基本的にラジオの人なので、テレビやインターネットの時代となり、その声を耳にすることが少なくなった。現在はほとんどが旅暮らしとのこと。本書のタイトルから容易にボランティア関連の本であることが想像できるが、内容は辛口である。本人はボランティアでやっているつもりでも、相手には「余計なお世話」になることもあると注意する。要は見方の問題なのだと思う。ある視点からは「善い行い」であっても、別の側面から見ても「善い行い」であるのか、われわれは常に複数の視点で物事を見る必要がある。永六輔の視点は常に斜めであり(当人は天の邪鬼なのだろう)、考えさせられることが多い。■メーカーサイト⇒講談社 「無償(ただ)」の仕事
2006.01.30
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みどりの窓口を支える「マルス」の謎日立製作所によって開発が始められた国鉄の発券システム「MARS(マルス)」の成長のドキュメンタリーである。1960年の「マルス1」から2004年に完成した最新の「マルス505」まで、開発年表やスペック表が掲載されており、システム屋として参考になる資料だ。現在のマルスは、データ投入から発券までのレスポンスタイムは最大6秒を保証するという。レスポンスタイムというのは非常に重要な要素なのだが、Webアプリが興隆してきた現在、ついつい忘れがちな要件仕様である。また、予約のブッキング、システムダウン対策など、システム設計の基本が淡々と述べられている。マルスは大型電算機の時代にスタートしたシステムだが、分散処理系に移行した現在でも、基本となる要件仕様は厳しくチェックされているようだ。マルス以前の座席予約システムは、回転する円卓に紙の予約台帳が並べられており、その円卓の回転速度が速いため、オペレータには動体視力と反射神経が要求され、けが人が続出したそうだ。一方で、「マルス1」は東海道新幹線開業前にリリースされたのだが、当初、新幹線の予約には使われなかったという。当時の人たちは、電算機を信用していなかったのだ。しかし、「マルス1」は順調に実績を伸ばし、関係者の信頼を勝ち得ていった。そして新幹線をはじめとする、すべての座席予約を担うこととなった。その後、マルスの作業範囲はどんどん広がり、現在では発券はもちろんのこと、ホテルやレンタカーの予約も含み、自宅の電話やインターネットからの予約ができるようになった。このような巨大システムの開発に携われrとしたら、仕事は大変だろうが、技術者冥利に尽きるというものだ。■メーカーサイト⇒杉浦一機=著 「みどりの窓口を支える「マルス」の謎」
2005.12.28
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太陽系ビジュアルブック私たちが子どもの頃は、太陽系の惑星といえば、地上の望遠鏡で撮影した不鮮明な写真であったり、想像図しかなかった。当時と比べると、付属CD-ROMに収められた「マルチメディア太陽系図鑑」は隔世の感がある。惑星探査機による豊富な画像を収めると共に、内容も分かりやすい構成になっている。コンテンツはWebブラウザで見ることができるので、早速、自宅のサーバにアップロードして、子どもが簡単に見ることができるようにした。子どものために、こういった百科辞典的なコンテンツを集めていきたい。■メーカーサイト⇒アストロアーツ「太陽系ビジュアルブック」
2005.12.22
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監視カメラ社会タイトルにある「監視カメラ」だけでなく、電話やインターネットの盗聴システムなど、ネットワーク社会にあってはプライバシーがないということについて、具体例を挙げながら主張している。国際電話を盗聴するエシュロン、オウムを追跡したNシステム、違法行為やテロを防ぐためにP2Pを監視するシステム‥‥社会秩序を守るためにはこうしたシステムは必要であろう。また、監視を行う者を管理する体制が必要なのではないかという考えがある。では、監視を行う者を管理する者を監視しなくてよいのか‥‥こうなってくると強迫観念に近いものがある。ITによって、我々は本当に幸せになれたのだろうか――IT技術者として、常に頭に置いておかなければならない問題だ。筆者は後書きでこう述べている。「テクノロジーの進歩が速ければ速いほど、我々は何を失ったのかを気づかずに時間を過ごしてしまう。スローライフが注目されるようになったのも、それに対する不安が大きいからではなかろうか」。
2005.12.13
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〈図解〉ICカード・ICタグしくみとビジネスが3分でわかる本タイトル通りの解説書。A4判で、見開きの右が解説、左には図解があり、とても読みやすい。実は本書を読むまで、ICカードの特許を持っているのが日本人だとは知らなかった。特許を取った有村氏は存命で、巻頭インタビュー記事に載っている。IT業界では、今後ますます、ICカード・ICタグを利用する分野が増えていくだろう。ハード/アプリの基礎知識を仕入れておきたい。■メーカーサイト⇒ICカード・ICタグしくみとビジネスが3分でわかる本
2005.12.09
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キューブサット物語私は技術屋として大小様々なプロジェクトに関わってきたが、寝食を忘れて没頭したプロジェクトは、成功しようが失敗しようが、忘れられない記憶として残っている。本書は、関係した数多くの学生たちにとって生涯忘れられない記憶となって残る、世界初の学生による自作人工衛星が地球周回軌道に乗るまでを描いたドキュメンタリーである。2003年6月30日、東大と東工大の学生たちが作った人工衛星2機が地球周回軌道に乗った。一辺10センチ、重量わずか1キロ。かのNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)がキャッチできるギリギリの大きさというミニミニ衛星である。本書は、この世界初の快挙の物語を綴ったドキュメンタリーである。筆者自身がこのプロジェクトを支えるNPO法人に所属し、大学で打ち上げの様子を見守っていたというだけあって、打ち上げの章は圧巻である。打ち上げに成功したとき、学生の1人は「細胞という細胞から涙が出た」と表現しているが、これは名言だ。私は彼らと直接会ったわけではないのに、この一言で彼らと意識を共有できた。宇宙開発というと、政治的なしがらみや、経済的な問題など、巷では様々な議論が沸き上がる。しかし、自分が作った物を宇宙へ打ち上げたい――この純粋な技術屋の想いは、何人たりとも妨げられるものではない。そして、それを実現してしまう技術屋魂は、何物にも代え難い宝である。社会人になると、生きていくために日銭を稼がなくてはならないし、家族を養っていく責任も発生する。私自身、年齢による体力の衰えも見えてきた。年齢を重ねる毎に、プロジェクトに投入できるリソースが減っていく。しかし、これは学生も同じことだ。みんなバイトを抱えているし、院生は論文を書かなければならない。プロジェクト半ばで卒業、就職を迎える者もいる。物理的な制約も厳しい。人工衛星に搭載できるプログラムは、たった8キロ・バイトにおさめなければならない。プロジェクトは、常にリソースの制約を受けるものだ。ここが、無限のパワーを持った正義のヒーローと決定的に異なるところである。しかし、われわれ技術屋は、制約を受けながらも前へ前へと進み、引き返すことを知らない。新天地を開拓していく者すべてがヒーローなのである。若者のやる気の無さが叫ばれるようになって久しいが、こういうドキュメンタリーを読んでいると、そんなことは大人の妄想に過ぎないと感じる。われわれ大人が、彼らに難しい課題を、厳しい試練を与えれば、彼らはきっとそれに応えてくれるはずだ。■メーカーサイト⇒川島レイ「キューブサット物語」
2005.12.07
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新聞がなくなる日ネット時代に入り、紙の新聞の経営が窮地に立たされている。毎日新聞社の元社員が語る新聞の未来像。いささかショッキングなタイトルではあるが、数字を元にした天界は説得力がある。18歳から35歳の世代を対象とした調査によると、1996年の新聞の月極購読率は80.9%。2004年には70.1%に落ちたという。とくに、単身者の購読率が急激に落ちており、2004年時点でたった36.5%。このまま低下を続けると、戸別配達が成り立たなくなるというのが主張の第一点だ。戸別配達が無くなると、果たして新聞を読むだろうか?我が家では朝夕刊セットで月極購読しているが、私自身はほとんど新聞を読まない。ネットのニュースサイトと電車の中吊り広告で十分だと感じているからだ。ほんの数年前まで、毎日欠かさず新聞のスクラップをしていたものだ。しかし、仕事で必要な情報量は増える一方で、もはや、新聞を2、3紙購読しただけでは不十分となった。そのうえ、スクラップブックでは検索性、保存性、携行性が悪い。今でも、紙の一覧性はディスクプレイより優れている。しかし、いまの新聞は文字サイズが大きくなり、広告スペースも増えた。必要な記事だけ複数ウィンドウで表示できるディスプレイと比べると、かならずしも新聞の一覧性の方が優れているとは言えなくなってきた。そこで、3年くらい前から、すべての情報をノートPCにセーブするようになった。ホームページはそのまま保存。紙媒体はスキャナで取り込んで、OCR処理を施してからPDFで保存。これらのスクラップフォルダをデスクトップ検索の対象にした。私は、紙の新聞がすぐになくなるとは思わない。しかし、読者のニーズに応えた紙面作りを怠っているようでは、その将来は暗いと言えよう。■メーカーサイト⇒歌川令三=著「新聞がなくなる日」
2005.12.02
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ホームページのアクセス数を確実にアップさせる112のコツ画像にalt属性を付記する、スタイルシートを使って行間を空ける、キーワードを冒頭に集める‥‥ホームページ制作に当たって基本的な112のコツを、原則、1ページ1項目で解説している。アクセス数増加の目的でなく、基本マナーとして押さえておきたい項目ばかりだ。各章にある CHECK LIST も役に立つ。著者は、「パソコン通信」全盛の時代から多くのサイトの興亡を見てきたとのこと。「一時期匿名でゲームサイトを運営、その際の多くの失敗体験と、ささやかな成功体験が、本書の内容に反映されている」という。
2005.11.29
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実践 e-文書法e-文書法に則ったシステムの導入から運用まで、細かく解説されている。導入コストの見積方法など、システム・ベンダとしてたいへん参考になる。ビジネスで使う文書についてあらためて考え直す機会となった。当然のことだが、文書には、作成から廃棄までのライフサイクル(ILM)がある。これに関し、本書では図説されていて分かりやすい。また、保存媒体として、われわれが日常使っている磁気ディスクや電子媒体の寿命はせいぜい20年。これに対し、紙は200年以上、マイクロフィルムは500年以上の保存か保証されている。こうしたことを考えると、電子保存と従来メディアによる保存を考える必要がありそうだ。■メーカーサイト⇒実践 e-文書法
2005.11.19
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元祖しゃちょう日記2ちゃんねる管理人・ひろゆき氏のブログ本である。ひろゆき氏は、私の生き方の対極に存在している。座右の銘は「明日できることは今日するな」だそうで、私の銘である「今日できることは今日やる」とは正反対である。まったく困った御仁である。このブログはlivedoor blogに実在しており、同社の堀江貴文社長の「社長日記」のパロディであることは言うまでもない。ところが、このブログ本、中身はマトモである。少なくとも、先日読んだ堀江貴文社長のブログ本「堀江本。」より読み応えがある。たとえば129ページでblog管理者の責任が2ちゃんねると同じだと語っているが、ひろゆき氏の経験から導かれた主張であり、考えさせられるものがある。“元祖”が“本家”より優れているような気がしないでもない。
2005.11.14
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3001年終局への旅「2001年」「2010年」「2061年」に続く、オデッセイシリーズの完結編。かつて、宇宙船ディスカバリー号から宇宙に投げ出され、千年の眠りから覚めた船長代理フランク・プールが主人公。モノリスはもちろんのこと、デイブ・ボーマンやHALも登場する。本書の舞台は、かつてクラークが考案した「宇宙エレベーター」が実用化された3001年の世界。ITをやっている人間としてはお馴染みのAda言語のエイダ・ラブレイスや、COBOLのグレイス・ホッパーと並んで、スーザン・キャルビン博士が登場する部分も見逃せない。もちろん彼女は、アイザック・アシモフのSFに登場する架空の人物だが、本書の「訳注」に淡々と述べられているので、3001年から見た歴史上の人物のように読めるのだ。■メーカーサイト⇒「2001年宇宙の旅」ホームページ
2005.11.12
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Excel 2002 VBA マグナム辞典Excel VBAのリファレンス。原則として1機能=1ページとなっており、本文は2色刷なので(フルカラーのものより)読みやすい。もちろん、Excel 2003でも使える。なお、関数機能は一部だけなので、VBAやマクロ機能をフルに引き出すためには関数リファレンスも別途必要だろう。
2005.11.08
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クェーサーの謎クェーサーとは、1963年に発見された強力な電波を放つ謎の天体である。そのほとんどが、数十億光年の彼方にあることから、太古の宇宙の姿を知る手がかりとして注目を集めてきた。本書は、そのクェーサーの最新知見が分かりやすく整理してある。クェーサーと並んで、宇宙にはセイファート銀河、ライナー、ブラックホールといった電波源があるのだが、どうやら、これらは関係があるらしい。本書執筆時点では確証はないが、それだけに今後も新しい発見・理論が相次いで出てきそうな分野だ。宇宙というのは、科学の中でも実験による検証が困難な分野である。ひたすら観測に頼るのみだった。だが近年、スーパーコンピュータによるシミュレーション技術が発達し、銀河のできる様をコンピュータ・シミュレーションで再現できるようになっている。しかし所詮はシミュレーションである。もし、不変と考えられている物理定数が過去の宇宙では違っていたり、遠方の銀河では通用しなかったりすると、シミュレーション・プログラムは根底から瓦解する。宇宙は、コンピュータでは再現しきれないロマンがあるから楽しい。
2005.11.05
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Winnyの技術公判中のWinny作者“47氏”本人が書いた「Winnyの技術」のすべてを晒す解説書である。実際に、本人の裁判でも何度となく引用されているという。これを読めば、WinnyのP2P技術の全貌をつかむことができる。逆に、プロバイダが Winnyプロトコルを拒絶することが可能になり、早晩、Winnyネットワークは崩壊すると考えられる。にもかかわらず本書を公開したのは、“47氏”の「実験」の一環であるという。さらに、本書の全文をPDF化してWinnyネットワークに流すことも予定しているという。次から次へと非常識なことを具現化する“47氏”であった。■メーカーサイト⇒Winnyの技術
2005.10.31
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宮崎駿の〈世界〉私と同世代のエッセイスト切通理作によるアニメ監督・宮崎駿の研究本である。通常の新書の1.5倍のページ数に加え、本文の一部が二段組みになっているという、膨大な文字数の作品である。しかし、これを読み通すのは苦痛の連続だった。なにせ、宮崎駿のアニメ作品の「あらすじ」と「感想文」が綯い交ぜになった長文が延々と続くのだから。私の同世代人は、多かれ少なかれ、宮崎駿の影響を受けている。子ども時代、「アルプスの少女ハイジ」にはじまるカルピス名作劇場を家族で見ていた人は多いだろう。一方、ルパン三世シリーズや映画版「カリオストロの城」を通じて、後の「おたく」が生まれてゆく。そして、NHK初の連続アニメ「未来少年コナン」と、初のオリジナル長編アニメ「風の谷のナウシカ」により、宮崎駿の名前は全国区となった。本書は、そういった事実を延々と並べ(刊行時点で最新映画だった「千と千尋の神隠し」への言及は少ない)、筆者の感想が付け加えられているだけなのである。ナウシカをリアルタイムで見た頃の私だったら、それでも納得できたかもしれないが、歴代の宮崎作品を見続け、社会人となり、自分の子どもに「トトロ」を見せている現在では大いに不満がある。一番大きな不満は、関係者の生の声がないことである。文章の大半は、雑誌や対談からの引用である。関係者が死亡した後の時代ならともかく、宮崎駿をはじめ、ほとんどの人々はいまだ一線で活躍しているのである。かりにも読者から金を取るなら、彼らに直接インタビューするくらいの努力はしていただきたいものだ。これで「研究本」を名乗れるのだとしたら、「おたく」なら誰でも発刊できるであろう。もう1つの不満は、宮崎駿の社会への影響である。本書でも触れられているが、「カリオストロの城」に続いて起きたロリコン・ブームと宮崎勤事件、教団の資料でナウシカを神聖視していたオウム真理教――宮崎作品には光の部分と影の部分がある。それが人気の秘密だと思うのだが、光と影のメッセージ性が強すぎるのである。宮崎アニメに潜む病理について、もっと研究してほしかった。私は、アニメに限らず、映画はエンターテイメントに徹すればいいと考えている。その意味では、著者が宮崎アニメの「第一期」に分類する「カリオストロの城」や「未来少年コナン」は、エンターテイメント性の強い作品だった。おかしくなってきたのは、「風の谷のナウシカ」からである。その後、「天空の城ラピュタ」「紅の豚」などは、それなりに楽しめる作品だったが、最近はそれもなくなってしまった。宮崎駿という人物は、どうも、アニメを作りながら自分の考えを作品に埋め込んでいる節があり、観客のことを考えていないのではないかという気がする。それが天才の天才たるゆえんだろうが、金を払って映画を見る観客としてはいい迷惑である。もっと観客を楽しませる作品を作ってほしいものだ。でないと、本書のように、量だけで中身のない批評家が増えるばかりである。
2005.10.30
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〈見えない宇宙〉の歩き方可視光から、紫外線、紫外線、電波、X線、重力波、ニュートリノなど、さまざまな波長・素粒子で捕らえた宇宙の姿を解説する。また、人間の目が光を感じる仕組みや、三原色の原理についても簡単な解説がある。平易な文章なので、天文に馴染みの無い方でも気軽に読めるだろう。最新の観測と理論によれば、宇宙の構成物のうち、星や銀河といった通常の物質はたった1パーセント、ガスが3パーセントだという。残りは、謎のダークマターが26パーセント、最近登場したダークエネルギーは70パーセントにも及ぶという。ますます謎が深まる宇宙である。■メーカーサイト⇒福江純「〈見えない宇宙〉の歩き方」
2005.10.25
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夜空はなぜ暗い?宇宙はなぜ暗い――いわゆる「オルバースのパラドックス」について、古代ギリシアから宇宙論を解説しながら、その謎解きを試みている。宇宙論を知らない方にも読みやすく(監訳者の長沢工さんの天文書はいつも読みやすい!)、巻末の参考資料が充実しているので、これから宇宙論を調べようという人にもお薦めする。「オルバースのパラドックス」は、宇宙には無数の恒星(太陽)があるのに、なぜ昼間のように明るくならないのか、という子供でも分かる謎かけである。ところが、この解答を見つけるために膨大な時間がかかった。最新のビッグバン理論を持ち出せば片付くかというと、それでも解けないのだ。本書を読み進んでいけば、難しい天文や物理の話は一切無しで、純粋な論理パズルとして楽しめるだろう。ちなみに、本書を読み進めていくと、「オルバースのパラドックス」を初めて示したのはオルバース本人ではない、といったエピソードも書かれていて、読み物としても面白い。
2005.10.23
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定常型社会私と同世代の広井良典の著書である。私は経済に疎いせいか、いつも難解な内容だと感じつつ、なぜか読んでしまう。内容は難しいが、何となく自分と同じ考えの持ち主だという臭いがするのである。本書でも紹介されているが、われわれの世代は少年期に高度経済成長時代の恩恵を存分に受けた世代であるのだが、その最後で「ローマ・レポート」、いわゆる「成長の限界」という現実を突きつけられた世代でもある。私は、コンピュータ・シミュレーションの演習として、成長の限界をプログラミングした。その結果導かれる最良解が「定常化社会」である。最悪の解は2つあって、人口爆発による環境破壊、もう1つは人口減少による人類滅亡である。このプログラムを組んだときには信じられなかったのだが、現在、我が国は後者の道を辿りつつある。定常化社会とは何か――これが本書のテーマである。私はITの最先端で仕事をしながら、著者と同じことを感じる。「そもそも人間の需要ないし欲望というものは、無限に拡大を続けるものなのだろうか」(139ページ)。人間の欲望の最新型がITである。果たしてITはどこまで行くのか。そしてもう1つ面白いのが、私も読んだ「ゾウとネズミの時間」で有名な本川達雄の引用である。「人間という生き物の場合、本来の必要量を大幅に上回るかたちでのエネルギー消費を行い、それによって「時間」の速度を速めてきた」(149ページ)――ガソリンをふんだんに使う車社会がそうであるが、ITはそれをはるかに上回る。地球上の距離を縮め、莫大な量の情報を瞬時にやり取りできるようになったのだ。デイトレーダが典型例だが、自宅にいながら24時間仕事をすることも不可能ではなくなったのだ。果たして、ヒトという種にとって、これは幸せなことなのか、それとも‥‥。ネット世界の中での生活は、あまりにも刹那的になったような気がする。たまには未来を考えて思索にふけることも必要だろう。■メーカーサイト⇒岩波新書「定常型社会」
2005.10.16
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日本(にっぽん)のSEはこれからどうなるのか外国人SEから見た日本のSE、他職種から見た日本のSE、日本人SE自身から見た日本のSEの3章構成。最近、自分の身の回りでもインドや中国へのオフショアが増えているので、インド人や中国人SEの本音記事は興味深く読むことができた。本書の2章に農家の方のインタビューがある。さすがに農業には関わったことはないのだが、機械化する農家に対して「効率化を、何のためにするかをあまり考えずにいたんでしょうね」(113ページ)という厳しい意見がある。これは、われわれSEにとっても永遠の命題だと思う。お客さんは何のためにITを導入するのか、IT化それ自身が目的になっていないだろうか――日頃、契約金額ばかりに目を奪われ、忘れがちなポイントである。
2005.10.10
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定常型社会私と同世代の広井良典の著書である。私は経済に疎いせいか、いつも難解な内容だと感じつつ、なぜか読んでしまう。内容は難しいが、何となく自分と同じ考えの持ち主だという臭いがするのである。本書でも紹介されているが、われわれの世代は少年期に高度経済成長時代の恩恵を存分に受けた世代であるのだが、その最後で「ローマ・レポート」、いわゆる「成長の限界」という現実を突きつけられた世代でもある。私は、コンピュータ・シミュレーションの演習として、成長の限界をプログラミングした。その結果導かれる最良解が「定常化社会」である。最悪の解は2つあって、人口爆発による環境破壊、もう1つは人口減少による人類滅亡である。このプログラムを組んだときには信じられなかったのだが、現在、我が国は後者の道を辿りつつある。定常化社会とは何か――これが本書のテーマである。私はITの最先端で仕事をしながら、著者と同じことを感じる。「そもそも人間の需要ないし欲望というものは、無限に拡大を続けるものなのだろうか」(139ページ)。人間の欲望の最新型がITである。果たしてITはどこまで行くのか。そしてもう1つ面白いのが、私も読んだ「ゾウとネズミの時間」で有名な本川達雄の引用である。「人間という生き物の場合、本来の必要量を大幅に上回るかたちでのエネルギー消費を行い、それによって「時間」の速度を速めてきた」(149ページ)――ガソリンをふんだんに使う車社会がそうであるが、ITはそれをはるかに上回る。地球上の距離を縮め、莫大な量の情報を瞬時にやり取りできるようになったのだ。デイトレーダが典型例だが、自宅にいながら24時間仕事をすることも不可能ではなくなったのだ。果たして、ヒトという種にとって、これは幸せなことなのか、それとも‥‥。ネット世界の中での生活は、あまりにも刹那的になったような気がする。たまには未来を考えて思索にふけることも必要だろう。■メーカーサイト⇒岩波新書「定常型社会」
2005.10.09
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堀江本。ライブドア社長の堀江貴文さんのブログ本である。ブログを書籍として出版することに疑問を感じている自分だが、案の定、本書の内容はウチの子ども(7歳)の日記と同じレベルである。読んでいてイタすぎる。通勤電車の片道(30分)で読み飛ばせてしまった。本書の冒頭に、「若い人は、やっぱり早くに起業すべきだと思う。これは持論、というより確信」(39ページ)と書いてありますが、労働人口すべてが起業しちゃったら困るでしょ(笑)。私のように、上司を支えるのが好きでサラリーマンをやっている人間だっているわけですから。いろいろな仕事をしてみて、自分のキャラクタを熟知した上で、起業したい人は起業すればいいと思う。それにしても、「私が講演で話すことなど私の本に全部書いてあるに決まっている」(74ページ)と仰るなら、私は一生、堀江さんの講演には足を運ばないでしょう。サラリーマンにとって、ブログと同じ程度の内容の講演を聴くのは時間の無駄だから(笑)。本書の収穫といえば、ニッポン放送株取得騒動のスタートの時点で、「朝一の取締役会でCB発行を決議する。これまでの人生で一番大きな意思決定をした瞬間かもしれない」(206ページ)という思いがあったことが分かったこと。堀江さんでも覚悟するときは覚悟するのですね。■メーカーサイト⇒ゴマブックス 堀江本。
2005.09.26
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震災時帰宅支援マップ 首都圏版今日は「防災の日」である。それにしても最近、大地震が多い。そんな中発刊された本書は、30万部を超えるベストセラーとなった。私は仕事柄、一定の場所で長期間作業するということがない。災害発生時には、首都圏のどこで仕事をしていても、家族を守るために家に帰る責任がある。そこで、店頭で本書を斜め読みしてみた。第一印象だが――帰宅支援マップとしては大したものではない。だが、普通の地図として非常に役に立つ。それで購入した。というのは、山手線の内側が4ブロックに分かれて掲載されているのと、山手線の外側が幹線道路に沿って掲載されており、これが意外と便利なのだ。たとえば深夜にタクシーで帰るとき、土地勘がない場所では、北が上になっている一般的に行政区分地図では帰宅経路がイメージしずらい。その点、この地図は、幹線道路の順番に地図をめくっていけば、自宅までたどりつける。だから、この地図は細長い(縦210ミリ×横95ミリ)。地図の下から上へ向かって幹線道路がのびているので、かならずしも北が上とは限らない。カーナビ感覚で利用ができるので、自動車や徒歩で移動するときには役に立ちそうだ。掲載範囲は、山手線を中心に、西は横浜、八王子、北は川越、上尾、東は柏、千葉に及ぶ。新宿スタートだと、八王子は箱根ヶ崎より遠いという事実にも驚かされた。災害時に限らず、深夜タクシーで最短コースで帰りたいという人にもお勧めできる。■メーカーサイト⇒昭文社 震災時帰宅支援マップ 首都圏版
2005.09.01
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まともな人ベストセラー『バカの壁』で有名な解剖学者、養老孟司の連載エッセイを単行本化したもの。いままであまり感じなかったのだが、本書を読んで、養老先生は割と毒のある書き方をする人だと思った。たとえば「寝ている間に脳は起きているときと同じ量のエネルギーを消費する。つまり意識があるというのは、そのていどのことだともいえる」(181ページ)と言う。人間は儚いものである。また、働かない若者に対して、こういう見方をする――「一生懸命に働き、経済を発展させ、物質的に豊かな世界を作ってきたのは、なんのためか。安全快適で、暇な世界を作るためである。それなら若者が努力せず、遊んでいるとして、怒る理由はない」(40ページ)――仰るとおりである。これは『バカの壁』にもつながる、養老先生特有のモノの見方なのだと思うのだが、要は、物事を一面的に見てはいけない、目の前の事実を事実として見つめる、ということなのであろう。科学者として正しい態度だと思う。
2005.08.25
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ホンモノの日本語を話していますか?国語の辞書で有名な金田一春彦氏の著作。日本語への愛情が感じられるとともに、日本語に対する博識には舌を巻く。たとえば、「東日本一帯では、日の数見方が東京と少し違っている」という。「あさっての次は、東京ではシアサッテ、次がヤノアサッテだが、東日本一帯ではあさっての次はヤノアサッテ、その翌日がシアサッテとなる」そうである。私も、実家にいたとき、この違いに悩まされたことがある。実家は東京の西部にあるのだが、都心部から転居してきた家族と、地元に住んでいた家族とでは、シアサッテとヤノアサッテの意味が逆転しているのである。そのときは、家によって言い方が違うのかと考えていたのだが、こういう事情があったとは。
2005.08.17
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プロジェクトはなぜ失敗するのか筆者は「プロジェクトは本来、何もコントロールしないと失敗するものである」と語る。そのことを認識しない限り、スタートしないとプロジェクトは成功しないというのである。本書を読んで、これはプロジェクトの定義そのものなのだが、「プロジェクトは終わりなき業務でなく、期間が決まっていて、始まりと終わりが明確に定義できる活動」であることを、あらためて認識させられた。私たちは普段、プロジェクトのエンドをしっかり認識し、クロージングを行っているだろうか。また、「プロジェクトの成功は何?」という言葉にも、ハッとさせられた。プロジェクトをはじめるに際し、メンバ、顧客と成功の定義を共有しているだろうか。日常業務を省みて、いろいろ考えさせられる点が多い作品である。■メーカーサイト⇒http://bpstore.nikkeibp.co.jp/item/main/148222817790.html
2005.07.29
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学力があぶないベストセラー「日本語練習帳」と数学教授の共著である。対談形式の部分は、お互いの主張が不明瞭で読みにくかったのだが、「差別じゃなく区別」(11ページ)、「平等というのは政治的な権利が平等だということ。つまり社会的に平等に存在しているのだということであって、人間の一人ひとりの個性とか能力が同一だとか、均一だなどということはないのです」(141ページ)には賛成である。私は、能力別クラスは必要だと思うし、男女雇用機会均等法はおかしな法律だと考えている。それにしても、本書を読むと、大学の講義は惨憺たる有様のようだ。日本の未来が悲観的になってくる。■メーカーサイト⇒http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/43/0/4307120.html
2005.07.07
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