2006年度韓国作品。
監督はイ・ジュンイク。
出演はカム・ウソン、チョン・ジニョン、イ・ジュンギ。
この作品は韓国で一昨年の年末に公開されて、同時期に公開されたブロックバスターが動員数を伸ばせずにいるのを尻目に、グングン動員数を伸ばして行き、ついには国民の4人に1人は観たと言われる程のメガヒットとなり、昨年7月に公開された「化け物」に、動員記録を抜かれるまで歴代1位に輝いていた作品だ。
それまで韓国の歴代動員記録を作った作品の多くが、南北問題を扱ったブロックバスターだったのに、この「王の男」は大スターが主演しているのでもなく、ブロックバスターでもない作品だったから、何が一般大衆を惹き付けるのか、興行は蓋を空けてみるまではわからない。
「王の男」は16世紀初頭挑戦王朝第10代の王ヨンサングン(1494年~1506年)在位期間末期を舞台に、史実とフィクションを融合したエンターテイメント映画だ。
観て行くと、時の覇権者に翻弄される芸人がメインと言う事で、チェン・カイコー監督の「覇王別姫(邦題・さらば我が愛)」を思い出すが、この「王の男」の方が描かれた期間が短いと言う事と、描く世界を広げずにメインのチャンセンとコンギルと周囲の芸人達、そして2人の運命を変えてしまうヨンサングン、寵愛を受けているキーセン、重臣に、絞ってシンプルだ
韓国でメガヒットしたのはわかるような気がする
演出や編集も無駄がないし、出演陣も主役脇役皆、十二分に自分の力を出しているが、だけど個々が主張し過ぎてないから散漫になっていない
作品自体にパワーがある
全てが私好みだった
私は本来、邦画でも洋画でも時代劇はあまり得意分野ではない
しかしこの作品は惹き込まれて観た
メインのチャンセン役のカム・ウソンとコンギル役のイ・ジュンギ、まさに適役だと思う
コンギル役はイ・ジュンギ以外には考えられない
彼は「花より美しい男」とキャッチフレーズが付いているが、以外と髭が濃くて、シーンによっては鼻の下が薄っすら青くなっているし、あの容貌に似合わず声も低い。
でも本当に「花よりも美しい男」と言うのはぴったりだと思う
髪を長くして素のコンギルも女性っぽいが、芝居で女装した時の自然な美しさ、特にキーセンの扮装をした時の美しさは脱帽
男性が女装していると言う匂いも感じない
黙っていれば女性だと思ってしまう
コンギルの幼馴染で芸人としてコンビを組むチャンセン役のカム・ウソンは、私はこの作品が初見だけど、陰影のある演技が素晴らしくて、他の出演作品も是非観たいと思う。
チャンセンのコンギルへの愛と嫉妬心、そしてジレンマ、とても強く伝わって来た
チャンセン役で、韓国のアカデミー賞と言われている大鐘賞の最優秀主演男優賞を獲得している
そして忘れてはならないヨンサングン役のチョン・ジニョン!
2人にとって運命を翻弄する敵役であり、史実としても最悪な覇権者であるヨンサングンを、ただの敵役ではなく、こうなってしまっても仕方がなかったと同情の余地を感じさせる演技には感心した。
コンギルが現れるまでヨンサングンの寵愛を独り占めにしていた元キーセンのノクス役のカン・ソンヨンも、憎まれ役を果敢に演じていたと思う。
カン・ソンヨンはイ・ビョンホンファンにとっては馴染みのある女優さんである。
イ・ビョンホンが主演したドラマ「HappyTogether」で妹役の人だ。
他には2人が漢陽の都に行って知り合い、仲間になる芸人3人の1人、チャン・ソギョンはイ・ビョンホンが主演した「夏物語」で、イ・ビョンホン扮するソギョンがジョンインと知り合うスネリ村の村長役で出演していた人だ。
他の作品で、イ・ビョンホンの過去の共演者が出ているのを発見するのも楽しいものだ。
「王の男」の公式を観ていて興味深かったのは、ヨンサングンがクーデターで王位を失い宮廷を追われた後、後継として11代の王になるのが、「チャングムの誓い」でチャングム達が仕えていた中宗(チュンジュン)だ。
中宗はヨンサングンの異母弟にあたる。
普通王位に付くと、「祖」や「宗」が付けられるのだが、ヨンサングンはあまりにも凶暴な独裁政治を行なった為、王の「祖」や「宗」を与えられず、「君」と言う王の兄弟と言う名前で呼ばれている
それだけでも、どれだけ酷い王だったかわかると言うものだが、もう少し公式の受け売りをすると、
ヨンサングンの母親は側室だったが、正室が亡くなって側室から正室になった。
母親は異常に嫉妬心が強くて、他の側室を殺害しただけではなく、王に対しても顔に爪あとを残す程の暴力を働いたそうだ
その為に王妃の位を剥奪され、王命により服毒自殺をさせられた
「王の男」の中で、母親が服毒自殺させられた事をテーマにした芝居を観てショック死する祖母は、ヨンサングンの母親を服毒自殺させた事を企んだ人で、ヨンサングンに対しても幼少期から辛い仕打ちをしたのだそうだ
ヨンサングンは幼少の頃から偏狭で粗暴な性格になったのは、こんな様々な事が原因だったらしい。
その上学問を嫌い勉学に励もうとしなかったので、王位の継承者に相応しくないと意見もあったが、1494年に父が亡くなって満18歳で王位に着いた。
この極悪非道のヨンサングンの事を頭に入れて観ると、更に「王の男」が面白くなった。
ただちょっとよくわからなかった事がある。
それはコンギル、最後の方であれ????と、疑問に感じた。
今でもあの部分よくわからない。
あれはどう言う事なんだろう???
******************************************************
「チャングムの誓い」
「チャングムの誓い」では、チャングムのお父さんは、ヨンサングンのお母さんが服毒自殺をさせられた時に立ち会った武官と言う設定になっている。
作品の中のバックグランド。
ヨンサングンの父、すなわち9代王が逝去して、ヨンサングンが10代王に即位、そしてヨンサングンの異母弟(中宗)を擁立した敵対勢力がクーデターを起こし、ヨンサングンは王位を剥奪され宮廷を追われ、その後、異母弟の中宗が11代王となる。
「チャングムの誓い」は9代王から始まって、10代王のヨンサングンを経て、11代王中宗が王位に着き逝去するまでを、宮廷に仕える女官チャングムをメインに描かれる。
「王の男」の最後のクーデターは、「チャングムの誓い」では序盤にある。
「チャングムの誓い」の前半のスラッカンの女官の部分は全部フィクションで、後半の医女の部分は史実を膨らませて描いているが、時代背景は史実だ。
バットマン・ダークナイト 2008年08月11日 コメント(9)
インディー・ジョーンズクリスタルスカル… 2008年06月23日 コメント(12)
カレンダー